
ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」のニューモデル2タイプが10月より発売される。これに先立ち、テストコースでその性能をテストしてきたので、お伝えしたい。
ターゲットユーザーは関東より以南の太平洋側地域に住む人たちで、雪は降らない、あるいは降っても年に1、2回といった地域としている。そうしたエリアでは1年を通してタイヤを履き替えることなく済むメリットがあるとしている。また雪が降ったとしてもスノーフレークマークを取得しているため、高速道路の冬用タイヤ規制はクリアしているので、そのまま通行できるのだ。
さて、このクロスクライメートは2015年に欧州で発売され、 日本国内には2019年から展開。そして2025年、発売から10年経ち、新製品として「クロスクライメート3(以降CC3)」と「クロスクライメート3スポーツ(以降CC3スポーツ)」の2タイプのオールシーズンタイヤを発表した。


この10年の間にマーケットニーズの変化もあり、求める性能の変化もあったという。オールシーズンタイヤに求める性能では、ウエット/ドライ路面でのグリップ性能、ついで積雪路での走行性能、そして快適性という順番だったのが、2024年のミシュラン調べでは1位に快適性となり、ついで、ウエット/ドライ路面でのグリップ、積雪路面となって、新たに低燃費性能というニーズが顔をだしたということだ。
こうしたニーズの変化にともない、ミシュランでは、激しい雨や急な雪など季節を問わず、安心の快適ドライブができ、より長持ちし環境に配慮した製品が求められている判断。CC3では冬の雪道走行性能は前提条件としながら、春、夏、秋は夏タイヤに近い総合バランスを求めるニーズに応えるタイヤ開発を行なってきた。
そして提供されるCC3は、初めて転がり抵抗ラベリングで5段階の2番目である「AA」を獲得。ウエット性能も4段階の2番目の「b」を獲得している。CC3スポーツも、転がり抵抗は5段階の3番目となる「A」を獲得、ウエット性能では4段階のトップ「a」を獲得している。
試乗レポート

テスト内容は、ウエット路面でのハンドリングテスト、高速周回路でのスラローム、レーンチェンジ、ハーシュネステスト、そしてウエットでの短制動テストといった項目を行なった。
最初はウエット路面でのハンドリングテスト。テストカーはフォルクスワーゲン・ゴルフ8で装着タイヤはCC3スポーツと前モデルCC2の比較テスト。
ともに、自分の想像よりも高いグリップ力を発揮し、夏タイヤ、それもスポーツ系タイヤに劣らないイメージを持った。そこで旋回速度を上げてテストするとCC2ではESCの介入する場面がところどころで現れた。CC3スポーツではまだ余裕があるようで、特に変化なく高い旋回スピードでコーナリングができたのだ。
CC3スポーツがこれほどのレベルとは期待以上の性能だったが、その背景としてCC3スポーツには、ミシュラン独自のダイナミックレスポンス・テクノロジー技術が使われており、これはキャッププライがアラミドとナイロンの複合材なのだが、パイロットスポーツ5と全く同じ素材、構造を持っていることがポイントだという。これに、専用トレッドデザイン、そして新規開発したコンパウンドといった要素も加えることで、接地面形状の変化が起こりにくく、操舵応答性やグリップ力、剛性感などを、スポーツと名乗れるレベルに高めた。
開発エンジニアに話を聞くとミシュランでは「スポーツの名前はハードルが高く、容易には名乗れない」そうだ。パイロットスポーツ以外には初めてこのCCシリーズで使われたのだという。それだけスポーツ性能に自信を持ったタイヤということだ。

次に高速周回路ではカローラツーリングにCC3を装着して走行。印象は全体にまろやかでコンフォートタイヤと言えるほどしなやかな乗り心地だと感じる。走行音も静かで、タイヤからの音を特定できないほど静かだ。80km/hでのレーンチェンジでは、タイヤのしっかり感があり、安心して操舵できたことも体感。ソフトな乗り心地を提供するタイヤのグニャッとするあの感覚は全くない。
50km/hでのハーシュネステストでは、振動の収まりの速さが秀逸だった。入力自体も丸くいなされているが、振動がすぐさま治る収束スピードは素晴らしいと感じた。
そして最後がウエット路面での短制動テスト。これはCC3の新品と残り溝2mmまで人口的に削ったタイヤで比較。路面には水が浮いている状態で80km/hからのフルブレーキングテスト。ABSを働かせてのブレーキングで何mで停止するかを3回計測した。
新品のCC3は33.34m、34.38m、35.17mで、残り溝2mmにしたCC3は、40.83m、39.66m、40.44mという結果になった。当然残り溝2mmは摩耗状態を想定したもので、制動距離は長くなっているが、フィーリングにおいて、摩耗タイヤでは想像できなかった印象をうけた。
新品のCC3はブレーキを踏んだ瞬間から強い制動Gが出て、停止するまで一定の減速Gがで続けたのに対し、残溝2mmのCC3はブレーキを踏んだ瞬間、スゥーっと滑り出す感覚があり、そのあと減速Gが立ち上がり、停止まで続くという感覚。
制動直後の滑る感覚は全ての摩耗タイヤで同じ現象になるが、そこから減速Gが立ち上がり制動感が強まるタイヤはほぼない。だが、CC3ではその現象を体感できている。その謎を聞けば、センターグルーブをはじめ、排水用の溝の形が一般的にはV字系にデザインされているが、CC3はU字型でデザインしていることにポイントがあるという。
つまり、V字型だと摩耗すれば、溝の幅が狭くなり排水性能が落ちるわけでU字型であれば、溝の深さの分だけ排水性能の劣化を止めることができるというわけだ。
ミシュランは使命としてサスティナブルモビリティの実現を掲げている。タイヤを最後まで使い切れることを目標に開発をしており、、こうした製品開発をすることで、サーキュラーエコノミーを含んだサスティナブルな社会への貢献を目指しているということだ。


パイロットスポーツ4の元ユーザーとして、テストを通じて全体で感じたことは、CC3スポーツはウエット路面でのグリップ力は遜色ないタイヤだと感じられ、サイドウォールなど、剛性感の確かさはPS4とおなじ世界観の中にあると感じた。
対応サイズは18 インチから21インチなので、86/BRZのようなスポーツカー、BMWの3シリーズ、4シリーズ、GLCのようなSUVも対象モデルとしておすすめだ。
またCC3はコンフォートタイヤと表現してもよいレベルで、とてもラグジュアリーに感じるタイヤだった。トレッドデザインを見ると、ノイズが出そうな気もするがまったくの老婆心であるのだ。こちらは16インチから20インチなので、ノートオーラのようなコンパクトサイズからミニバン、SUVなどすべてのモデルにおすすめできる汎用性の高いタイヤなのだ。

クロスクライメート3スポーツ サイズ表

クロスクライメート3 サイズ表
