【ミシュラン】濡れた路面でも環境配慮でも高評価 プライマシー5徹底試乗記

ミシュランのプレミアム・コンフォートタイヤ「プライマシー5」が2025年2月に発表されたが、先ごろテストする機会があったのでお伝えしよう。

発売した当初、プライマシー5のアピールポイントとして「濡れた路面での安心感が長く続く、環境にも配慮したプレミアムコンフォートタイヤ」をとしていた。テストはもちろんウエット性能を含んだ内容ではあるが、もうひとつのポイント「環境への配慮」という点で興味深いものがあった。

もともとミシュランはタイヤを長く、最後まで使えることを目指して開発してきているが、近年ではタイヤだけに限らず、企業全体でのライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からサスティナブルな姿勢で取り組んでいる。

例えば、具体的な目標として2030年に40%、2050年にはバイオベースまたはリサイクルされた材料で作られたタイヤとすることや輸送時のCO2削減、そして2050年までにCO2実質排出ゼロの生産工場にすることなどが目標にされている。

そのため環境に配慮したタイヤであることをアピールしているわけだが、面白い調査があり、ミシュランの調べで「タイヤ購入時に何を重視したか?」という質問で、当然、ウエットグリップや静粛性といった要素が上位にあるのだが、環境に配慮された製品であることという質問に対し、年齢が高い人ほど重視していない傾向がわかったという。実際の購買層の中心である60〜64歳、50〜59歳の人たちの間ではとりわけ関心が薄いデータとなっていた。逆に20-29歳の年齢では静粛性より高い購入動機に選んでおり、環境意識の違いが明確にあることもわかった。

こうした調査結果から購買層には「環境」を謳っても響かない可能性が高いものの、企業理念として環境性能の優先順位を上げる努力をしていくことを表明している。

そうした理念に基づいて開発されたのが、プライマシー5であり、濡れた路面での安心感が長くつづき、環境に配慮したプレミアムコンフォートタイヤに位置付けているわけだ。対象はコンパクトカーはもちろん、セダン、ミニバン、SUVに対応する。

とくにSUVでは、これまでSUV専用タイヤ「プライマシーSUV」があったが、このプライマシー5からはSUVシリーズがラインアップからなくなり、プライマシー5に統一される。その理由としては求められる性能がセダンやコンパクトカーユーザーと同等の内容であり、新型プライマシー5ではそれらの要件をカバーできる性能を持たせることができたからというわけだ。

さて、プライマシー5の具体的な性能では、ウエットラベリング制度で最高グレードの「a」を獲得し、転がり抵抗も「AA」を獲得している。この転がり抵抗が高性能であることは省燃費に貢献するわけでサスティナブルな性能の一面でもある。

さて、プライマシー5のポジショニングは、ブリヂストンのレグノシリーズや、ヨコハマタイヤのアドバンdBシリーズ、ダンロップのビューロシリーズあたりと比較できるタイヤだ。

プライマシー5のウエット性能や長く使えるタイヤといったことは、どんな技術が投入されているのか。例えば、ウエット性能では縦溝の幅を広げ排水性を高めている。この縦溝の断面はU字型をしており、そうすることで摩耗時でも排水性能に影響が少ないとされている。つまり高い性能が最後まで続くわけだ。一般的に縦溝の断面はV字型多いとされ、摩耗すると縦溝の幅が狭くなり排水性が落ちるとされているのだ。

それと静粛性ではサイレントリブの横溝の両端が、縦溝に接する角度の最適化により、エッジ部の剛性が上がり、ブロック振動が抑制され、ノイズ低減する技術を開発。またトレッドのコンパウンドに、新合成ゴムのエラストマー3.0を開発し、ウエットグリップ、転がり抵抗、耐摩耗性の向上という二律背反になりがちな課題に対応している。

そして 内部構造により、トレッド面のより均一な接地圧配分を可能とすることができたのも大きな進化と言える。

試乗テスト

まずはミニバンの日産セレナに装着し、高速周回路を走行。途中、ハーシュネスゾーンを50km/h、レーンチェンジを80km/h、スラロームを60km/hで走行し、バンク走行も行なった。

フィーリングはカチッとしててしっかり感が得られる。80km/hのレーンチェンジはスパッとステアすると、そこで感じられたのがしっかり感だ。要はぐにゃっとならずガチっと受け止めている感覚だ。ミニバンをハイスピードでステアすること自体、日常にはない動きになるが、そこでも安心感が伴うことが感じられた。

ウエットハンドリングではメルセデスベンツのGLAに装着し、ウエットハンドリング路を走行。ここではプライマシーSUVとの比較を行なうことができた。

その違いについて、じつは非常に似通った印象で、大きな相違を感じにくいのだ。ただ最初の操舵応答ではプライマシー5のほうが手応えとノーズの動き、反応は良い。それ以外のグリップ性能での違いは感じにくく、強いて言えばタイヤのスキール音がSUVの方が出るといった程度だった。

そして最後のテストはウエットでの急ブレーキ。80km/hからのフルブレーキで、ABSが作動する速度での短制動テスト。新品のプライマシー5と溝を2mmまで減らしたプライマシー5の比較テスト。テスト車はフォルクスワーゲンのゴルフ8だった。

制動距離の違いは27、8mで停止できる新品と30m前後で停止する摩耗タイヤの違いはあるが、ある意味当然の結果だ。ただ、フィーリングとしてブレーキの踏み始めからグリップ感があり、路面を滑る感覚がない安心感が摩耗タイヤでも感じられたことだ。これは高い性能を最後まで続くことを目標にしている、ミシュランの開発姿勢が製品化できている証だ。

ユーザーが求める高いトータルパフォーマンスをコンフォート系タイヤで実装しているのがこの新しいプライマシー5と言えそうだ。

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