ミシュラン クロスクライメート2オールシーズンタイヤを夏冬テスト

ここ数年「オールシーズンタイヤ」というのをよく耳にするようになったと思うが、ミシュランからクライメート2というオールシーズンタイヤが発売された。このタイヤは2019年に国内販売を開始したクライメートプラスの後継モデルになる。

新製品のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート2」を冬と夏にテスト
こんな路面もオールシーズンのクロスクライメート2は走れました

開発は本国フランスで行なわれ、位置づけは「雪も走れる夏タイヤ」。あくまでも夏タイヤとしての性能を持ちながら雪の上でも走れるというコンセプトでデビューしている。今回のクロスクライメート2も同様に、夏タイヤの性能をスポイルすることなく雪上性能をさらに磨き上げたというのが、今回の製品になる。

試乗テストは、夏と冬の両方でテストをしないとその本当の実力は見えてこない。そこで、まずは2021年2月に北海道士別にあるテストコースで雪上テストをし、5月に栃木県のGKNプルービンググランドで夏タイヤのテストを行なうというスケジュールで行なった。

その結果は「本当に凄い!冬は少し前のスタッドレスレベルで、夏はレベルの高さに驚いた」というものだった。

雪上テスト

では早速、どんなテストをしてきのか冬の雪上テストからお伝えしよう。

豪快に雪煙を上げるオールシーズンタイヤのクロスクライメート2

雪上のテストではパイロンによるスラロームでノーズの入り方、ヨーの出方をチェックし、次に6%、8%勾配の途中で停止し再発進。そしてやや速度を上げてレーンチェンジによるリヤのスタビリティといったテストコースを試走した。

上り勾配の途中で停止して、再発進する登坂力テスト

新製品のクロスクライメート2を装着しスラロームへ侵入。速度は40km/hから50km/hほどで、ターンインではスッと回頭しヨーが出る。そして切り返しでもしっかりグリップしながら即座に切り返してターンインする。滑りそうな気配はなく、スタッドレスと遜色がなさそうな印象だ。

スラロームを抜け、上り勾配での停止からの発進テスト。一般道路で8%勾配というのは、きつい上り坂であり10%を超えるような場所はレアケースと考えていい。テストフィールドの6%勾配は日常出会う坂道で、8%勾配はきつい上り坂。その勾配ではともに同じような印象で、スリップしながら登るという状況。スタッドレスのように問題なく登るまでではなかった。が、決して登れなくなるという不安が起きるほどは滑らない。グリップがやや弱いという表現がいいか。

続くWレーンチェンジでは、しっかりとした旋回をする印象で、侵入速度は60km/h。スラロームより速くしかも、大きくステアする違いがあるテスト。切り始めはスッと回頭し車線移動でき、直進状態に戻ったときの安定性もあった。

2つ目のテスト項目は短制動テスト。50km/hからのABSを効かせるブレーキング。これはブレーキをかけた瞬間のノーズの沈み込みと、最後の停止直前でのグリップを感じるかというテスト。CC2はグリップがしっかりと感じられ、一昔前のスタッドレスと比較したくなるレベルだと感じた。

さらに3つ目のテスト項目の定常円旋回テストでは、新品と2mm摩耗したクロスクライメート2との比較テストができた。40km/hでの30R定常円旋回はともに走り出しは問題なく旋回するが、次第にアンダーステアが出始める。新品はアンダーが出たあとアクセルを離すとすぐにグリップを回復する。一方、摩耗タイヤは一旦グリップを失うとほぼグリップの回復を見せないまま、アンダーステアが持続する結果となった。

夏タイヤテスト

さて、雪上の実力は体験できたので、つぎは夏タイヤとしてのテストをお伝えしよう。

テストはGKNが所有するテストコースで、バンクを持つ高速周回路、ハンドリング路、ウエット路面などのテストができるコース。新製品のクロスクライメート2と従来品であるクロスクライメートプラスとの比較テストを中心に行なった。

高速周回路でのパターンノイズなどをチェック

最初は高速周回路とレーンチェンジのテスト。テスト車両はアウディA4。ここでは加速する際のパターンノイズやレーンチェンジでの剛性感、操舵フィールの違いを見る。大まかに新製品と従来品ではV字のデザインで角度に微妙な違いがある。CC2のほうがやや寝ている角度になっている違いがある。

この違いによりパターンノイズに違いがあるか?というテストなのだが、正直なところ明確な差を掴むまでの違いはなかった。言われてみればCC2のほうがややマイルドな音がでているかもしれない、というレベルだ。また、トレッドデザインを見る限り相当な走行ノイズを出しそうなイメージを持つかもしれないが、驚くほど静粛性は高いのだ。通常のサマータイヤと同等レベルと考えて間違いない。

レーンチェンジでも評価が難しくCC+のほうが手応えがしっかりある。CC2はマイルドに感じるのだ。しかしWレーンチェンジのような緊急回避になると、その違いはなく似たようなフィーリングだった。

ハンドリング路での比較テスト
エナジーセーバーレベルに感じるクロスクライメート2

次にハンドリング路でのテスト。ここでは従来品のCC+の評価も高い。というのはステア応答が良く反応がよいので、ヨーゲインの立ち上がりも速くしっかり感がある。その分切り戻しも少し敏感に戻ってくるので、しっかり戻してやることが必要。一方新製品のCC2は、切り初めはl従来品に比べるとマイルドに感じる。言い方を変えると滑らかにステアしてくイメージ。

ヨーの出方もナチュラルなイメージで、つまり急激な変化がないためスタビリティが高いとも言えるわけで、そのキャラクターは切り戻しで明確な違いを示す。ゆっくりとドライバーの意図どおりに戻ってくるイメージだ。あるいみハンドリングオタクにしか通じない違いかもしれないが、CC2は大人なフィーリングを持っているということだろう。また、このフィーリングは雪上とは印象の違うものであり、そのあたりもユニーク(専用の)な性能をもたせていることが感じられる。

そしてクラウンに装着したCC2とCC+ではウエット路面での短制動テスト。ABSを効かせて停止するまでの距離を計測するテストだ。

80km/hからのブレーキングはパイロンなどは使わずGPS信号によって計測しているため、誤差は小さい。テストは各2本のトライだ。最初にCC2でテストし32.6mと32.8m。平均は32.7m。続いてCC+の1回目は34.3mで、2回目は34.0m、平均34.2mという結果になった。

ウエットでの短制動テスト。ABSを効かせて制動距離の違いを比較テスト

ミシュランは約6%の停止距離の短縮になったとしているが、タカハシのテストでは約4.5%の短縮に成功していた。

最後はハイドロプレーンのテスト。これは100km/hオーバーで旋回しながら大きな水たまりへ突入し、どれほど外側へ吹き飛ばされるか、というテスト。本来はタイヤにかかる接地荷重の抜けを定量的に計測するが、今回はテストドライバーの助手席にのって、その違いを体験するというものだった。

そのため、CC2のほうが外側へはじき出される量は少なく安心感はあるという説明になり、どの程度の違いがあるのかデータをお伝えすることはできない。ただ、明確に違いがあることは間違いない。

搭載技術

ここで搭載している技術ハイライトを見てみよう。雪でも走れる夏タイヤとなれば、コンパウンドが気になる。「サーマル・アダプティブ・コンパウンド」という新開発のトレッドコンパウンドを開発して搭載している。ドライ、ウエット、雪上などどんな路面状況にも対応できることを目指しているコンパウンドだ。


そして見た目でも特徴のあるV字デザインで、こちらも「新Vシェイプトレッドパターン」を開発した。センターからショルダー部にかけて溝面積が広がるデザインを開発。これは排雪、排水などの性能向上を目指しているデザインだ。

「Vランプエッジ」はショルダー部のエッジを面取りをすることで、ブロックの倒れ込みを防ぎ、接地面が最大化されドライ路面での制動力に貢献するという。「LEVサイプ」はブロック同士の倒れ込みを支え合うもので、グリップ、耐摩耗性、転がり抵抗に寄与する技術だ。主にスタッドレスタイヤの開発からのフィードバック技術のひとつだ。

ショルダーにある3つの○が摩耗度によってサインが出てくる

もうひとつ新しく表示されるユニークなものを紹介したい。これは摩耗度がわかるサインがあること。トレッド面に刻まれた○が50%、60%、75%の3段階で表示され摩耗具合がわかるというものだ。公的なスリップサインも当然装備されている。

それと高速道路での雪用タイヤ規制でも走行可能を示す「3MPSF」マークが刻印されている。スリーピークマウンテン・スノーフレークマークというもので、サイドウォールに表記されている。ただし、このクロスクライメート2はあくまでもオールシーズンタイヤであり、氷上性能は苦手としていることを忘れてはならない。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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