BMWに装着されるタイヤはランフラットタイヤが標準装備されているが、タイヤの履き替えを考えたとき「ノーマルタイヤではダメなの?」という疑問が湧く。ちょうど愛車のタイヤが摩耗限界に近づいたこともあり、ノーマルタイヤに履き替えてみることにした。車両はBMW320dツーリンのMスポーツで、F30型2015年モデルにミシュラン・パイロットスポーツ4(PS4)をチョイスした。
ランフラットとの違いは何か
タイヤショップで交換作業をしてもらい、空気圧センサーのリセットをして作業終了。交換したサイズは純正サイズと同じで、フロントが225/45-18、リヤが255/40-18だ。ガレージから車道へ出す時に、段差を乗り越えるが、その段階で早速まろやかさを感じ、「お!」となった。そして走り出すと、そりゃぁ、もう、びっくりするほど滑らかに走り出す。当たり前だが、すり減ったタイヤからの履き替えなので、快適になって当然だが、そこを差し引いても滑らかさは絶品だ。
タイヤのインプレッションを取る前に、ある程度の慣らし走行をし、タイヤに強い負荷のかかるような走行は避ける。そうしていつものように新型車の試乗インプレッションを取る、ある場所を走ってみる。個人的には評価路という位置付けにしている一般道で、いろんなフィールチェックができる場所なのだ。
BMWのクルマはランフラットタイヤで開発され、純正指定しているタイヤでなければ100%パフォーマンスを確約するものではない、というのがメーカーやディーラーのスタンスだ。もちろんタイヤショップでも勧めてくるのは純正指定されているランフラットだ。そこをあえて自己責任でノーマルタイヤを選択したのだが、パフォーマンスの違いは存在するのだろうか。
パイロットスポーツ4に交換し、感じたその違いだが、乗り心地が良くなる、静粛性が上がるなどプラス要素ばかりがある。一方、操舵においても、ステアリングをジワリと操舵した時のクルマの動きに違いは特に感じない。だが、スパッと素早くステアした時は、横剛性の違いが少しあった。ランフラットに比較し、ややマイルドに感じるのだ。だからといって、不安定だとか、頼りないなんてことではなく、優しく感じるだけであり、言い換えれば乗り心地がいいわけだ。妙に突っ張った感じはなくなり、まろやかになるのだから、こっちのほうがいいと感じるわけで、この違いを「本来のパフォーマンスどおりではない」とするかどうかだ。個人的には、この違いはプラス方向の違いと捉えている。
ひとクラス上の乗り心地に
つまり、乗り心地は格段によくなると断言できるのだ。まるでひとクラス上の車格になったかのように静かに、そして滑らかに走行できるようになる。結果として、ランフラットを止め、ノーマルにしたことによるネガな部分はないということだ。現在、タイヤ交換からおよそ700kmほど走行し、ウェット路面や高速道路、ワインディングなども頻繁に走行しているが、満足度は上がる一方だ。
PS4に変えたことで、とにかく車内が静かになりオーディオが気持ちよく聞こえる。特にBMW3シリーズは、高速道路などで「エコモード」を選択するとクラッチが切れアイドリング状態で滑空するので、まさに滑るような滑らかな高速走行ができ、より上級な乗り心地になった満足感があるのだ。
そしてハンドルを握りながら「タイヤが丸いなぁ」という感覚がある。タイヤが丸い、とは当たり前に聞こえるが、トレッドデザインによってはその凸凹を感じ、余計なものがタイヤの周りにくっついているフィーリングを味わうものだ。
速度域が高速になるほど、その「丸さ」を強く感じるようになり、それは安心感へと繋がっていく。これは体験しないとわかりにくいかもしれないが、誰でもが感じられる「丸さ」なのだ。またウェットでの安心感も高い。グリップしている感触がずっとステアリングに伝わってくるからで、高速走行からのブレーキングも安心してペダル操作ができる。
車検もOK
ひとつ、気をつけるポイントとして、ノーマルタイヤに交換した場合、BMWはスペアタイヤを搭載していないので、パンク修理キットや補修剤を積載する必要があることだ。これもネット通販やカー用品の量販店にあるパンク修理剤でも構わない、何かしらの対策をとっておく必要がある。そうした修理キットなどを装備していれば車検も問題なく、通常の車検が受けられる。
もうひとつ、密かに期待している部分として、タイヤが軽量化されたことによる燃費の向上だ。タイヤ交換したときに、摩耗したランフラットと、今回のPS4を手に持ってみたが、計量するまでもなく明らかに軽い。タイヤその重さの違いが4本分あるので、全てに良い影響があることを期待できる。
バネ下重量の軽量化は乗り心地の改善や、燃費向上というのは常識とされているわけで、それだけでもノーマルタイヤを履くネガは見当たらない。
もう一つ都市伝説でいわれる「ランフラット専用ホイール」という話。専用ホイールであるためにノーマルタイヤを装着できないという説になるのだが・・・。
F30系に使われるホイールは、タイヤのエアが抜けた状態でも走行できるようにするため、耳落ちしないようにリムの内側に盛り上がりがある。そのためタイヤはリムから外れにくくなり、ランフラット性能を発揮しているわけだが、そのリム形状を「ランフラット専用ホイール」と呼んでいるのなら、全く問題なくノーマルタイヤへ履き替えが可能だ。
それ以外に専用形状の意味することがあるのか不明で、このあたり、情報があれば共有していきたいと思う。
ランフラットがなくなる?
また、近年欧州ではランフラットを止めていく動きがあるのをご存知だろうか?散々、ランフラットの必要性を訴えてきた欧州だが、その証拠に今回新型デビューしたBMW Z4の18インチ、19インチはノーマルタイヤなのだ。ランフラットではない。余談だがZ4のエントリーモデル(日本未導入)には17インチが装着されているが、こちらはランフラットの在庫処分だと勝手に想像している。ちなみに兄弟車のトヨタ・スープラも同様で、17インチはランフラット、18、19インチはノーマルタイヤを装着している。
ランフラットを止めていく、その理由のひとつに、新型車にはタイヤの空気圧センサーが標準装備されているので、パンクの症状、つまりエアが下がれば空気圧センサーが反応し、ドライバーはパンクであることがわかるからだという。だから今後は空気圧センサーを装備し、パンク修理キットを積載したノーマルタイヤへ戻っていくことが予測される。
パイロットスポーツ4を選んだ理由
タイヤ性能のカテゴライズはタイヤメーカーによって異なるが、概ね、エコタイヤ、コンフォートタイヤ、スポーツタイヤといった分け方が多い。その中で現在装着しているブリヂストンのランフラットタイヤから履き替えを考えたときに、パフォーマンスを考えれば、スポーツタイヤの選択になると思う。車格的にエコタイヤはありえないし、コンフォート系では物足りない場合もありそうなので、スポーツ系に決定した。
そして、ミシュランを選択した理由は数多くあるが、中でもフォーミュラEとの共通性だ。オートプルーブではフォーミュラEをシーズン1からお伝えしてきているが、タイヤはミシュランのワンメイクで、特に第1世代のマシンに採用していたのは市販されているパイロットスポーツ4(PS4)のトレッドパターンにそっくりだったのだ。
ミシュランの開発スタッフにフォーミュラEのタイヤについて話を聞いたことがあるが、市販タイヤ開発へのフィードバックや、またその逆もあるといい、PS4の高性能さに関し開発背景やストーリーは完璧なのだ。また、タイヤの軽さや高速走行時の真円率の高さといったことも後押した。
こうしてミシュランのフラッグシップタイヤにも位置付けされているパイロットスポーツ4を選択したのだが、唯一意外だったのは、乗り心地の良さなのだ。
ここまでランフラットとの違いを中心に説明したが、PS4の性能について言及すると、カタログスペックやフォーミュラEからのフィードバックなどを考えると、スポーツ性に振った性格でグリップ重視をイメージしていた。しかし、実際は乗り心地がよく、コンフォート系か?と思えるほど静かで乗り心地がいいというのは、気持ちよく期待を裏切られ、かつスポーツ性が高いという二律相反を見事に達成しているタイヤだと認識を改めたところだ。
こうした理由からPS4の選択は、不満はゼロ。不安もゼロ。快適性、静粛性、スポーツ性に優れ誰にでもおすすめできるパフォーマンスを持つタイヤとお伝えしたい。最後にもっとびっくりする情報がある。ミシュランは「満足保証プログラム」というのを展開していて、購入から60日以内であれば満足できないものであれば全額返金保証をしているのだ。逆に言えばそれだけ製品に自信があるということだ。ランフラットからの履き替えの参考になれば幸いだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>