2014年6月6日、自動車メーカー向けの開発システムを世界規模で展開しているドイツの開発システムメーカー「dSPACE」(ディースペース)社が「ユーザー カンファレンス」を開催し、多数の自動車メーカーのエンジニアが参加した。
一般的には「dSPACE」という開発システムメーカーの名は知られていないが、同社は1989年に創立され、自動車はもちろん、航空機・宇宙、建設機械、医療産業など様々な分野での電子制御ユニット(ECU)の開発のためのシステムツールを開発・販売し、高いシェアを誇っている。
もちろん電子制御ユニット(マイクロプロセッサーとセンサーのへの入出力、通信モジュール)の開発はそれ以前から行なわれているが、同社は開発システム全体に「数理モデル」というコンセプトを採り入れているのが特徴だ。つまり従来からあるマイクロプロセッサーに使用する各種のプログラム言語ではなく、数字を言語化し、これによってプログラムを形成する、というもの。
具体的にはアメリカのマスワークス社が開発したMATLAB(マトラブ)と呼ばれる数値解析ソフトを使用し、開発から製品化までをこの統一したソフトを使用することで、開発の効率化、開発段階での検証や修正のし易さなどを図っているのだ。
製品としては、机上設計システム、迅速な試作WCUシステム、量産用のプログラムの作成、シミュレーションシステム、計測システムなどをがラインアップされている。
これらにシステムを使用することで、現在自動車産業で拡大しているユニットのモジュール化や、自動車メーカーとサプライヤーとの共同開発時の双方向からの改良、従来は膨大な時間を要したテスト時間の短縮、クルマの電子制御に関する不具合の発生率を低減できるというメリットがある。
実際、同社の開発システムは、すべてのドイツ車、ヨーロッパ車において、開発用に多くが駆使されており、近年は日本の自動車メーカーを始め各分野で採用が進んでいる。現在では、従来のエンジン制御のレベルをはるかに超える複雑なハイブリッドシステムや、先進ドライバー支援システムの開発には不可欠の存在となっている。
当サイトに掲載した三菱自動車のパイクスピーク・ヒルクライム用の「MiEV Evolution Ⅲ」の車両コントロール用ECUにも使用されている。このマシンは、合計4個のモーターとバッテリーの制御、4個のモーターを個別制御するS-AWC(車両運動統合制御)、ブレーキの制御などを集中制御するユニットをdSPACEのシステムを使用し短期間で開発したという。
ユーザー カンファレンスでは、膨大な情報の演算処理が求められる先進ドライバー支援システムの開発、タイヤの試作・単体テストと実車テストとの評価のズレの縮小など、実際のエンジニアリングでどのように「dSPACE」が活用されているかが紹介された。