セレンスのAIアシスタント技術は、視覚的なアバターで生成AIとエージェントAIの課題を解決する【公式動画

自動車業界向けにAI自然会話アシスタント技術を提供するセレンスは、2025年3月6日車載AIアシスタントに視覚的に具現化されたアバター(仮想空間における人物像)を採用していく最新トレンドを紹介した。

対話型AIアシスタントの課題

最新の車載アシスタント・システムでは、大量のデータを元に学習したデータからコンテンツやアイディアを作る生成AIと環境と対話し、自律的に実行するソフトウェア・プログラムであるエージェトAIの進化が焦点となっている。

中でも注目を集めているのが、そうしたAIが、人と技術の間のやり取りを変革できるかどうかという点と、もう一つの重要なトレンドとして、車内においてバーチャルアシスタントへの話しかけ方が進化しつつあるということだ。

これまで、会話による音声アシスタントには視覚的な表示はなく、やりとりの一つに過ぎなかった。最近では、人間らしい会話アシスタントが生み出されており、誰かと電話で話しているように感じられるほどのレベルに達している。

ところが、このコミュニケーション方法には、対面型のインタラクションと比べると欠点がある。例えば、電話での会話で、交互に話すことや、ニュアンスの理解に苦労する、あるいは頷くなど無言のジェスチャーをうっかり使ってしまうといった問題に直面する。

車載AIアシスタントの音声による会話でも、同様の問題が生じる。ユーザーは、どこに向かっていつ話しかければよいのか、発したコマンドが処理されているのかどうか、など直感的に把握できないのだ。やはり現実に対面してやりとりする場合とは明確に異なっているのだ。

しかし、最新の技術動向では、視覚的に具現化されたアバターによって、そうした問題が解決されつつある。車内で利用できるディスプレイのスペースが増えたことで、アバターが表示でき、より円滑なインタラクションにつながる視覚的なフィードバックと手掛かりが提供できることになるのだ。

視覚的な表示のメリット

会話によるインターフェースにアバターを取り入れることは、多くのメリットがもたらされる。アイ・コンタクトや表情などの機能は、状況に関する理解を高めることができ、誤解を減らせるだけでなく、没入感のある会話を生み出すことができるのだ。

アバターは、企業にとって誰もが認識できる顔となり、ブランド・イメージを高め、ユーザーとのつながりをより強固にすることもできる。また、アバターとAIを組み合わせることで、技術をより身近に感じられるものにし、ハードルを下げることもできるわけだ。

自動運転システムが使用しているデータを視覚化すれば、信頼性が大幅に向上する。視覚的なアバターは、使用されているデータポイントをユーザーに示すことによって、システムの透明性が高められ、例えば、車両が歩行者を検知して安全を確保するために減速した場合、視覚的な要素によってこの判断が説明できるので、ユーザーは自動車の挙動が理解でき、より信頼感を高めることが期待できるというわけだ。

視覚的なアバターは、AIベースのエージェントが実行しているタスクも説明する機能を持っている。ナビゲーションエージェントとの会話では、アバターが地図を表示し、システムが経路を検索していることを示すこともできる。システムが天気を確認している場合には、アバターは拡大鏡を使用して「確認中」であることを示す、ということも可能だ。

このような遊び心を効かせたアプローチによって、ユーザーの次世代システムに対する直感的な理解度とAIに対する信頼度を高めることができる。

視覚的なアバターは、ユーザーの嗜好に応じてカスタマイズしたり、季節に合った衣服を着せたりすることもできる。このようなパーソナル化や楽しみ方によって、ユーザーと所有車とのつながりを深め、アバターをユーザーにとって大切なデジタル上のコンパニオンへと変えることができる。

セレンスは、視覚的なアバターを統合することによって、車載音声インターフェースの機能を向上させ、より魅力的で、信頼性があり、パーソナライズされた体験を実現することを目指している。こうしたビジョンにしたがい、AIシステムの機能性を向上させるだけでなく、技術に人間味をもたらして、より直感的で楽しいユーザーエクスペリエンスを目指しているのだ。

最新の動向

現在では、車載AIアシスタントにアバターを追加することへの関心が急速に高まっており、各自動車メーカーがさまざまなアプローチを検討している。例えばルノーは、インテリジェント・コ・パイロットアバター「Reno(ルノ)」を導入し、2024年9月に発表したEV「ルノー5 E-Tech electric」に搭載している。

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cap<EV「ルノー5 E-Tech electric」から採用されるアバター・アシスタント「Reno」>

ルノーとセレンスとの複数年にわたるパートナーシップの拡大を受けて、「Cerence Chat Pro」を活用した、新たな機能がRenoに加わり、自然なコミュニケーションが強化されている。

メルセデスベンツは、CES 2024で「MBUX」バーチャルアシスタントを発表し、より自然で共感性の高いインタラクションの実現を狙いとした、感情を示せる視覚的な表示などを紹介している。

中国市場では、コンパクトカー「スマート」がすでにアバターのカスタマイズ機能をユーザーに提供しているほか、NIO(ニオ)の「Nomi」がダッシュボードに物理的に取り付けられている初のアバターとして、世界的に注目を浴びている。最近では、ハーマン(サムスン傘下の車載音響・アシスタントシステム企業)がCES 2025で、セレンス・アシスタントを搭載したAI音声システムに視覚的要素を追加したキャラクター「Luna」を発表し、話題を集めている。

音声会話によるユーザーインターフェースに対応したAIアバターの開発は、開発者に視覚という側面以上のものをもたらす。アシスタントのタスクや応答に合わせて、視線、動きのパターン、表情を綿密に設計することによって、音声ユーザーエクスペリエンスが極めて自然で没入感のあるものになるのだ。

AI技術の進歩によって、ユーザーとシステムの会話の質が向上するだけでなく、視覚的なアバターの外観、姿勢、挙動を全体的にダイナミックかつ臨機応変に生成できるようになる。

その結果、ユーザーインタラクション全体を向上させ、応答性に優れた、実物のようなデジタルアシスタントが誕生することになるのだ。

セレンスは、グローバルな自動車メーカーと協業し生成AIを活用した車載コンパニオンの実現に取り組むとともに、ユーザーとそのインタラクションの嗜好を理解し続ける上で役立つ研究にも注力している。

セレンスは、2020年9月に立ち上げられた研究プロジェクトであるEMMIプロジェクトに参加し、セレンスとパートナーは3年間にわたり、視覚的なアバターによって自動運転の信頼性を高める研究に取り組みつつ、共感性の高いヒューマン・マシン・インタラクションの新たな可能性を模索してきた。

今後は、ユーザーの嗜好を把握し、視覚的なアバターをスマートソリューションと融合させる新たな方法を研究していくとしている。コンテキスト(文脈)に対応したアシスタントがユーザーのニーズと要望を予想できるようになれば、27年前にマイクロソフトが好感の持てる役立つコパイロット「Clippy(マイクロソフト オフィスの初期に使用されたアバター的な操作アシスタント)」で思い描いていたことがようやく現実のものとなるかもしれない。

主に子どもたちに喜ばれていた、遊び心のある追加機能と見なされていたものが、今では未来の体験を創出する上で必要な要素となりつつあり、視覚的なアバターがあらゆる新車の標準装備になると予想されている。

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