自動車業界向けにAI技術・音声アシスタント技術を提供するセレンスは2023年4月27日、ジェネレーティブAI(生成AI)を活用して車載アシスタントのインテリジェンスを改善し、ドライバーにリアルタイムの車両情報、車両に関する知識を提供するセレンス Car Knowledge(カーナレッジ)の機能を大幅に強化したと発表した。
ユーザーの使い勝手を飛躍的に向上させる車載アシスタント・システムの構築に長年の技術的な蓄積を持つセレンスは、最先端のAI、大規模言語モデル(LLMs:Large Language Models)、ディープラーニングを駆使して、よりインテリジェントで自然な対話を通じて、車両に関する複雑な知識、情報をドライバーに提供することを可能にしている。
セレンス Car Knowledgeは、独自に開発したディープラーニングの技術と最先端のジェネレーティブAIを組み合わせて活用することで、ドライバーは質問をしたり、状況を説明したり、また発話するだけで、自分のクルマについて必要な情報が得られるようになっている。
セレンス Car Knowledgeの機能は、ドライバーからの質問、自動車メーカーが提供するユーザーマニュアルや取扱説明書などの文書、センサー情報などの様々な情報源をもとにドライバーに対して、マルチチャネルアクセス(音声アシスタント、コンパニオンアプリ、ソーシャルメディアアカウントなど)を通じて、簡潔で正確、かつ信頼できる回答を提供することができる。
ドライバーは、自分のクルマの機能や車両の状態、カーマニュアルなどについて質問可能で、車内や自宅、外出先など場所を問わず必要な情報を得ることができる。つまり、この機能は、取扱説明書のメージをめくるような時間を節約し、フラストレーションを防ぎ、信頼できる車両の専門家としての役割を果たすのである。
セレンス Car Knowledgeは、現在脚光を浴びているChatGPTと同様のジェネレーティブAIを活用しており、ドライバーの質問に対して状況に応じてパーソナライズされた回答を行なうことができる。
例えば、ドライバーは「クルマをリモートでスタートできますか?」、「クルマをリモートでスタートするにはどうすればいいですか?」、「キーを忘れてしまったので、クルマをリモートでスタートしたい」と質問した場合、従来ではユーザーマニュアルの情報をもとに同一の回答が返ってきた。
しかし、ジェネレーティブAIを使った場合、各回答はドライバーの具体的な質問に合わせてカスタマイズされるのだ。ドライバーの言い換えや中途半端な表現、またコマンドやスペルミスを完全にサポートすることができ、自然で直感的な方法により情報を得ることができる。回答は自動車メーカーが提供するデータからのみ生成され、各機能、特定の車両の機能や設定に応じて最適化されている。これにより、ドライバーはオンラインで問題を検索する場合と異なり、正確かつ信頼できる情報が得られるわけである。
セレンス Car Knowledgeのメリットはドライバーだけでなく、自動車メーカーに同社のデータを大規模言語モデル(LLMs)に直接取り込む自動セルフサービスポータルを提供し、簡便なメンテナンスとリアルタイムのコンテンツ更新が可能になっている。これにより自動車メーカーは、制御、カスタマイズ、パーソナライズされたジェネレーティブAIベースの体験をドライバーに提供することができる。
なお、セレンス Car Knowledgeは、既にアメリカとドイツの大手自動車メーカー2社に採用され、他の7社の自動車メーカーとは車載化のための開発の段階に入っている。
新しいジェネレーティブAIを活用し、強化された機能は量産可能で、新規はもちろん、既存のセレンス Car Knowledgeプログラム上に展開することができる。自動車やモビリティのためのAI技術を提供するグローバル業界リーダーとして、セレンスは、ジェネレーティブAIベースのLLMsやChatGPTのような新技術をさまざまなソリューションに統合することを目指しておりし、自動車メーカーとドライバーにかつてない付加価値を提供することができるのだ。
セレンスのニールス・シャンツ最高製品責任者のコメント
「セレンスは、常に最先端技術を車載アシスタントに採用しています。新しい技術による機能強化において、私たちはドライバーと乗員のカスタマーエクスペリエンスの向上と、自動車メーカーが容易に統合し差別化できるという2点を重視しています。セレンス Car Knowledgeのような製品アーキテクチャの要所にジェネレーティブAIとLLMsを活用することで、自動車メーカーは、ブランド価値とユーザーのデータを維持したまま、最新のAIがもたらす最先端のそのブランドならではの価値ある情報や知識をユーザーに提供することができるのです」