ボッシュ 世界初のレーダー情報を使った自動運転用マップをTomTom社と共同で開発

2017年6月7日、ボッシュはオランダのマップ・交通情報プロバイダーのTomTom社と共同で、自動運転用の高解像度マップの開発を進めることを発表した。ボッシュが世界に先駆け、レーダー情報を使用した自動運転用マップに欠かせないローカリゼーションレイヤー(複数のレイヤーで構成された、高度な自動運転のためのマップ素材)の開発に成功したのだ。

レーダー ロード シグネチャー マップのイメージ
レーダー ロード シグネチャー マップのイメージ

これまで、地形情報を得るためにカメラの画像データが用いられてきた。ボッシュの「Radar Road Signature(レーダー ロード シグネチャー:レーダー波道路情報))」は、レーダー波によって得られる数10億に達するリフレクション(反射)ポイントで構成される。このシステムでは、レーダー信号がガードレールや道路標識などあらゆるところに当たると、道筋に沿ってそれらの対象物を再現し、地形情報を生成できるわけだ。

この技術を利用したマップを使用すると、自動運転車は車線内での位置を数cm単位の精度で正確に把握できるようになる。ボッシュ取締役会メンバーのディルク・ホーアイゼルは、「このレーダー ロード シグネチャーは、自動運転に向けた重要なマイルストーンとなるでしょう。このシステムがあれば、自動運転車両はいつでも自車の位置を確実に特定できるようになるからです」と述べている。

ボッシュのレーダー ロード シグネチャーの大きな特長は、その高い安定性にある。カメラデータのみをベースにして自車の位置を特定するマップとは異なり、このレーダー ロード シグネチャーは、夜間や見通しが悪い場所でも確実に機能する。さらに、このシステムは1km毎にわずか5kB(キロバイト)のデータをクラウドに送るが、このデータ量はカメラデータのみをベースにしたマップの場合の1/2程度に抑えられ、システムへの負担も軽減される。

ボッシュは2020年までにレーダー ロード シグネチャーに対応する第一弾の車両が欧州と米国で提供できるようになるとしている。

ボッシュ製の長距離ミリ波レーダー
ボッシュ製の長距離ミリ波レーダー

■レーダー ロード シグネチャーの仕組み

ボッシュは現在、最大250mの範囲を検知できる77GHzのレーダーセンサーのグローバル マーケットリーダーとなっている。このレーダーは一般的なカメラセンサーの最大検知範囲150m程度を上回るのだ。そしてボッシュは、今後のレーダー ロード シグネチャーの進化に合わせてレーダーセンサーの性能向上を目指している。

レーダー ロード シグネチャーを実現するには、動かない物体も検知できなくてはならないため、既存のレーダーセンサーの性能向上が求められる。性能を向上させた新世代のレーダーセンサーは今後、レーダー ロード シグネチャーに必要なデータを提供できるようになる。

高精度マップは、搭載したセンサーの感知範囲を超えて情報を提供するため、自動運転には欠かせない存在だが、現在のナビシステムに用いられているマップと異なり、この高精度マップは複数のレイヤーで構成されているのが特長だ。

・ローカリゼーションレイヤー

自動運転車両は、ボッシュのレーダー ロード シグネチャーと補助的なカメラローカリゼーションマップから成るローカリゼーションレイヤーを用いて、車線内での自車位置を特定する。自動運転車両は、サラウンドセンサー経由で入手した物体に関する情報とローカリゼーションレイヤーから得た関連情報を比較し、その物体と自車の相対的な位置を把握する。

・プランニングレイヤー

プランニングレイヤーは、自動運転中の個々の操舵を計算するために用いられるレイヤー(軌道プランニング)。このレイヤーには、道筋、道路標識、制限速度といった情報だけではなく、カーブや坂などに関する情報も含まれている。自動運転車両はこのプランニングレイヤーを使用して、例えば車線をいつ変更すべきかを決定できる。

・ダイナミックレイヤー

交通渋滞、工事現場、事故多発地域や利用可能な駐車スペースなど、頻繁に変動する交通状況に関する情報はダイナミックレイヤーに保存される。

自動運転用高精度マップを構成するレイヤーはいずれも定期的な更新が必要で、ダイナミックレイヤーについてはリアルタイムで更新を行なう必要がある。「私たちの高精度マップを最新の状態に保つためには、欧州、北米、アジア太平洋地域の高速道路でそれぞれ、約100万台の車両が必要になると考えています」とホーアイゼル氏は語る。その理由は、各レイヤーに用いられる最新のデータが車載センサーによって運転中に生成されるからだ。

レーダーセンサーのデータは、ボッシュのCCU(コネクティビティ コントロール ユニット)などのコミュニケーションボックス経由でメーカーのクラウドに送信され、さらにボッシュIoTクラウドにも送られる。

ボッシュはこのデータをもとに、従来型のあらゆる地図フォーマットに対応したレーダー ロード シグニチャーを作り上げる計画だ。そして、このレーダー ロード シグニチャーはTomTom社により全体マップに組み込まれ、幅広いユーザーが使用できるようになる。

ボッシュ アーカイブ
ボッシュ 公式サイト

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