ボッシュの最新技術 SDV用VMM、ADAS、SiC、MEMS、PGA【公式動画】

ボッシュは2025年6月19日、横浜市都筑区の新本社でメディア向けの年次会見を開催し、ボッシュ・グループの2024年における業績、日本で開発をリードする最新技術、社内で活用を加速させているAIやVRなどの最新技術について紹介した。

2024年のボッシュ・グループにおけるグローバルの業績は世界経済の低迷などが大きく影響し、引き続き厳しい年となり、グローバルでの売上高は対前年比1.4%減の903億ユーロとなった。一方、日本では連結売上高は対前年比1.0%増となる約4280億円となっている。2024年は日本における自動車生産台数が2023年から8.5%減少しているにもかかわらず、ボッシュの売上高はほぼ前年並みをキープし、安定的な成長を遂げている。

この結果、パンデミックの影響で一時的に落ち込んだボッシュの売上高は、日本においては2022年から3年連続で過去最高を記録していることになる。

また日本のボッシュは2024年5月に東京・渋谷から横浜市都筑区に本社を移転し、敷地内に竣工した「ボッシュ ホール」(都筑区民文化センター)を9月にオープン。これはボッシュの日本市場へのコミットメントを示す記念すべき事例だ。

そして、本社1階にオープンしたドイツ・カフェ「cafe 1886 at Bosch」は、オープン初日には朝から100人以上の行列ができるなど、2025年5月末までの約9か月間で記録され利用件数は5万件を超え、幅広い外部からの来場者に利用されている。

横浜市との公民連携以外では、2025年からは横浜国立大学と産学連携の取り組みもスタートしている。ボッシュ・グループ内の産業機器テクノロジー事業セクターであるボッシュ・レックスロスが横浜国立大学と油圧工学の教育・研究における連携活動を始め、2025年秋にはボッシュ・レックスロスが横浜国立大学の機械工学系研究室に油圧テスト機器を無償提供する「フルードパワートレーニングラボ」を開設する予定となっている。

そして、ボッシュ・レックスロス CEOのステファン・ハーク博士が、2025年度後期に横浜国立大学 大学院 理工学部・機械工学教育分野の授業で、最新の油圧技術に関するレクチャーを行なうことになっており、横浜国立大学の学生は最新の技術動向が学べるようになっている。

最新の技術紹介

ボッシュは、開発中の最新技術を紹介した。サスペンション、パワートレイン、ステアリング、ブレーキなどのバイワイヤ技術を統合制御する「ビークルモーションマネジメント」がまず紹介された。

各エレメントを統合制御することで、様々な走行条件、ドライバーの好みに合わせて自由自在に車両の特性を変化させることができる技術だ。ボッシュはあるときは快適なファミリーカーに、あるときはスポーツカーに変身できると称している。

制御的にはEVとの適合性に優れており、ソフトウエア・ディファインド・ビークルに搭載する必須の技術と言える。

日本ボッシュは主導して開発している技術としては、本社の地下駐車場で進められている日本主導の開発プロジェクト「パレット ガレージ アシスト システム」(PGA)がある。

日本特有ともいえる狭い立体式駐車システムではパレットの幅は車両の全幅ギリギリのため、ドライバーにとっては負担が大きい。

新たな駐車支援システム「PGA」は、AIの画像認識でCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を利用し、車両の前後とドアミラーに設置した近距離カメラによって周辺にある機械式駐車場を見つけ、従来からあるヨーロッパ式の駐車支援システムとは異なる制御で、機械式駐車場のパレットに自動駐車を行なうことができる。

スマートフォンのアプリ、または車載端末で操作を行なうことで、乗車したまま、または車両から降りた無人状態で機械式立体駐車場への自動駐車、自動出庫を実行する。これにより、慣れない機械式駐車場でもパレットとタイヤの外縁がミリ単位で制御され、滑らかに駐車、あるいは出庫を完了できるのだ。

また日本での実証実験を行ないながら、レベル2.5の高度運転支援システムも開発されている。日本は左側通行であり、日本で多い坂道における車速の調整、都市部で見られるような複雑な道路構造と交通事情といった、日本特有の交通事情を織り込んだレベル2.5システムに位置づけられている。

システムはGPS情報、道路地図情報、全周のカメラ、全周のミリ波レーダーで構成されている。すでに半年以上に渡って行なわれた公道試験によって、日本の交通標識や大小さまざまなトラックの認識が検知可能となり、路上駐車の車両を避けた走行、複雑な交差点での判断などにも対応しており、混雑している大都市における典型的な走行シーンでの自動運転を実現している。

さまざまなセンサーで計測されたデータをまとめ、車両の周辺状況を正確に理解するプロセス全体を、AIが一貫して担う「エンドtoエンドAI」をベースにした、ADASシステムの量産化に向けて開発が進められている。

ボッシュはスマートフォンなどに使用される微小半導体や半導体センサー(MEMS)で高いシェアを持っているが、2023年からは第1世代となるインバーター用のパワー半導体のシリコンカーバイト(SiC)の量産化を開始している。

当初は6インチ・ウエファーであったため量産規模も大きくなかったが、2024年から第2世代の8インチ・ウエファーのSiC生産が開始され、さらに量産化を推進するため、従来のドイツのロイトリンゲン工場だけでなくアメリカの新工場での量産化も開始される計画だ。これによりコストを低減し、世界の自動車メーカーに向けて供給が可能になるとしている。

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