ボッシュ 関東の高速道路で自動運転用位置情報「ロードシグネチャー」のデータ取得開始

ボッシュは2019年10月16日、自動運転用の高精度3Dマップ向け自車位置推定技術「ロードシグネチャー」によるデータ取得の取り組みを開始していることを発表した。2020年度内に高精度3Dマップに統合可能なマップ用データを完成させる予定としている。データの取得は、東名高速道路、中央自動車道、関越自動車道など関東近郊の高速道路で、ボッシュのテスト車両を使用して行なわれている。

ボッシュ 関東の高速道路で自動運転用位置情報「ロードシグネチャー」のデータ取得開始

ロードシグネチャーとは

ロードシグネチャーは、2種類のデータを比較して自車位置を推定するサービスだ。1つ目のデータは、自動運転車両に搭載されたレーダー、ビデオカメラから取得されるガードレールなど走行時の地物に関する情報。2つ目のデータは、あらかじめ作成されたローカリゼーションレイヤー(他の車両が取得した地物の位置データをもとにしたマップ要素)と高精度3Dマップの統合データにある地物に関連する情報だ。この2つのデータをリアルタイムで比較することで、常に高精度3Dマップとの相対的な自車位置を推定することができるようになっている。

ボッシュは、2017年からロードシグネチャーの商用化に向けた開発を行なっている。2018年には、ダイナミックマップ基盤株式会社の提供する「高精度3次元地図データ(ダイナミックマップ協調領域)」とボッシュのローカリゼーションレイヤーを統合させた高精度3Dマップの生成に成功した。公道での実証実験では、この高精度3Dマップを使用して自動運転を検証した結果、ロードシグネチャーが自車位置推定サービスとして有効であることを確認した。

自動運転に不可欠な自社位置の情報

自動運転を実現するためには、自動運転車両がいかなる状況でも自車位置を10数cm単位で正確に把握する必要がある。このため、ボッシュはサービス、ハードウェア、ソフトウェアを一体化させ、冗長性を備えた自車位置推定技術を開発している。

相対的な自車位置を推定するサービス、ロードシグネチャーは、車両に搭載されているレーダーやビデオカメラが取得したデータを車載通信モジュールによりクラウドに送信。このデータをもとに、ボッシュのクラウド上でローカリゼーションレイヤーが作成される。ビデオカメラだけでなくレーダーを使用しているため、悪天候などあらゆる環境下においてロバスト性が高いのが特長だ。

ロードシグネチャーのもう1つの特長は、データのダイナミック性だ。ロードシグネチャーは、量産車や事業者のフリートを使ってデータ取得する。そのため、例えば工事や交通事故による車線規制など、道路状況の変化を認識することができ、その変化を反映したローカリゼーションレイヤーを提供することができるのだ。

ビークル・モーション&ポジションセンサー

さらにボッシュは、自動運転車両の絶対位置を正確に把握する「ビークル・モーション&ポジションセンサー(Vehicle Motion and Position Sensor:VMPS」を開発した。VMPSには、各国の衛星測位システム(GNSS)の信号を受信する通信機が組み込まれている。GNSS信号は、自動運転車両の絶対位置を推定するために欠かせないが、電離圏や対流圏の雲の層を通過することによって発生するデータの偏差を補正する必要がある。

VMPSは、自動運転の要件を満たす補正されたGNSS信号を受信し、車両の絶対位置を特定することが可能だ。またVMPSが受信する情報は、GNSS信号だけではない。車両の動きを把握するため、VMPSには慣性センサー、車輪速センサー、操舵角センサーからの情報を取得するインターフェース、そしてこれらの情報を処理するインテリジェントなソフトウェアが搭載されている。GNSS信号が不安定な場合は、これらの車載センサーが自車位置推定に貢献する。例えば車両がトンネルに入りGNSS信号の信号が途切れた場合、車載センサーから得られる車両の進行方向や速度の情報を使って、最後にGNSS信号を受信した地点から計算した車両の位置を数秒間把握し続けることができるようになっている。

日本には、長いトンネル、高層ビル街や複数の階層で構成された高速道路など一定時間以上GNSS信号が受信できない環境が存在している。このように正確な自車位置推定が難しい場合でも、VMPSとロードシグネチャーによる冗長性で、確実な自動運転を行なうことができるのである。

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