ボッシュは、48Vシステムによるマイルドハイブリッドシステムを開発しており、これからに小型車の燃費向上技術のメインストリームと位置付けている。つまり、このシステムはコンパクトカーでも採算の合うハイブリッドシステムだからだ。
48Vシステムは、48V規格の大容量の駆動モーター兼オルタネーター、小容量リチウムイオンバッテリー、DC-DCコンバーターで構成され、減速エネルギーによりオルタネーターで発電し、リチウムイオンバッテリーに蓄える。加速時にはバッテリーからの電力で、駆動モーターがエンジンをアシストするというマイルドハイブリッド・システムだ。
本格的なパラレル、シリーズ式ハイブリッドよりシンプルな構成で、コストパフォーマンスに優れているので、コンパクトカーに最適なシステムとされている。
このシステムは2016年後半に登場する次世代のコンパクトカーで量産化される予定で、その価格は現在のハイブリッドシステムのわずか数分の1程度に抑えらる。「48Vによるブースト回生システムは、まさに皆のためのハイブリッドなのです」と、ボッシュ取締役会メンバーとしてモビリティ・ソリューションズセクターを統括するロルフ・ブーランダーは述べている。
この48Vシステムによる燃費向上はハイブリッドならではで、最新モデルは15%の燃費向上が期待でき、しかも燃費測定モードだけでなく、日常の運転状況においても同等の燃費向上効果が得られるという。さらにこのシステムは、ガソリン・エンジンでもディーゼル・エンジンでも適用でき、モーターのブースト機能により、燃費の向上だけではなくよりダイナミックに加速することができる。加速中は電動モーターがスポーティなコンパクトカーのエンジン出力に相当する150Nmの追加トルクでアシストするためだ。
従来の本格ハイブリッドシステムで、電圧が400V以上あるハイブリッド車とは異なり、このシステムは低電圧の48Vをベースとしているため、より安価なコンポーネントを活用することができる。
また、大型の電気モーターの代わりに、通常のジェネレーターの出力を4倍に強化したモーター/ジェネレーターを採用している。このモータージェネレーターはベルトを使用し、内燃機関を最大10kWサポートする。
このシステムで採用されるコンパクトで低電圧のリチウムイオンバッテリーとモーター/ジェネレーターをつないでいるのはパワーエレクトロニクスでDC-DCコンバーターにより、48Vの車載電装システムから12V車載ネットワークに電圧が供給される。
「48Vのエントリーレベルのハイブリッドシステムは、ヨーロッパ、北米、アジアのドライバーにとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう」とブーランダー氏も述べているように、2020年には世界で約400万台の新車にこのタイプのハイブリッドパワートレーンが搭載されるようになるとボッシュは見込んでいる。
2915年9月に開催されたフランクフルト・モーターショー2015において、ボッシュは早くも現在開発中の第2世代のハイブリッドシステムを展示した。このプロトタイプでは、よりパワフルなモーター/ジェネレーターが、エンジンではなく駆動系に直結されている。
このため、このマイルドハイブリッド・システムは、短時間の速やかな電動アシストを提供するだけでなく、渋滞などの低速走行時でも完全な電動走行が可能になるのだ。
また、プレミアムカークラスに搭載される機能が、コンパクトカーに組み込めるようになっている。つまり、ドライバーが車外から駐車動作を指示できる遠隔操作式のパークアシストだ。この完全自動パークアシストがあると、非常に狭い駐車スペースやガレージでもストレスや煩わしさを感じることなく、安全・快適に車両を駐車、出庫ができるわけだ。
このパークアシスト機能は、超音波センサーを使用する完全自動パーキングシステムだ。このシステムは組み込まれたモーターで加速し、自動で前進と後退を切り替えることができるほか、イグニッションキーのボタンを押せば駐車プロセスが始まるため、ドライバーが車内にいなくてもまったく問題にならない。
ボッシュはこのシステムに合わせ、ドライバーが車外からパークアシスト機能を操作できるスマートフォンアプリも開発している。