ボルグワーナーは2025年1月22日、東京ビッグサイトで開催されている「オートモーティブワールド2025」で、かねてから開発中の大型商用EV用のLFP(リン酸鉄)ブレードバッテリーとそのパッケージ・モジュールを日本で初公開した。
ボルグワーナーは2024年2月に、BYD傘下のバッテリー製造会社のFDB社と商用EV用のLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)バッテリー「ブレードバッテリー」に関する戦略的提携を締結し、ヨーロッパ、アメリカ、アジア・太平洋の一部地域で現地生産する権利を取得している。
ボルグワーナーはBYD傘下のバッテリー製造会社「FDB社」と提携を結んだ初のサプライヤーとなる。BYDが採用しているFDB社製のリン酸鉄(LFP)リチウムイオン・バッテリーは「ブレードバッテリー」の名称を持つが、世界最先端のリチウムイオン・バッテリーで、低コストかつ高性能で、安全性が高いのが特長だ。
そしてボルグワーナーは、このブレードバッテリーを大型EVトラックやEVバス用として生産、供給することを目指している。
今回、展示されたのはそのブレードバッテリーと、そのバッテリーセルを格納する大型商用車用のバッテリーパッケージ用のモジュールだ。このモジュールはバスの場合は、床下またはルーフ上に搭載する。大型トラックの場合はラダーフレームのフロア面に搭載することになる。現在、量産化に向け開発は最終段階に入っている。
他に、新開発され量産化が始まったEV用の電動トルクベクタリング+ディスコネクト(eTVD)システムも展示された。
この「eTVD」は、吉利グループ傘下でEVメーカーのポールスター社とヨーロッパの大手自動車メーカー向けに供給が開始される。左右の駆動トルクを制御する湿式多板クラッチは油圧作動されるが、その駆動トルクを電子制御するソフトウエアもボルグワーナーが提供している。クラッチの開放で完全に左右輪フリーとして低走行抵抗化できるのが特長だ。
その他に、高電圧ヒーターも展示された。このヒーターはEV、PHEVの熱管理、温度コントロールのための重要部品だ。EVなど大容量のバッテリーは、寒冷時には加熱保温し、高温時には冷却する必要があり、同時にキャビン内のエアコンの温度制御も必要だ。
さらにインバータやモーターの発熱を回収するなど多機能な熱コントロールがEVの効率を高めるために必須となっている。
そのため、高効率なヒートポンプ・システムの採用が主流になってきており、発熱部を冷却し、または加熱し、同時に室内の温度コントロールも行なう複雑な温度コントロールシステムを形成している。ただし、ヒートポンプは外気が低音になるほど効率が低下し、極低温ではほぼ機能しなくなってしまう欠点がある。
2022年12月にニューヨーク周辺で-20度になる大寒波が襲来し、多数のテスラが動けなくなったことがニュースになった。反EV派の人はそれ見たことかと話題になったが、その原因の一つは充電器のソケットの凍結で、もう一つはバッテリーがヒートポンプで加熱、保温ができなくなったことだった。
実はテスラは当初はヒートポンプと高電圧ヒーターの2重の加熱・保温システムを備えていたが、その後は高電圧ヒーターはオプション設定となり、ヒートポンプだけに依存していた。結果、大寒波でバッテリーの保温ができなくなり、立ち往生したのだ。そのため、テスラは再び高電圧ヒーターの装備を復活させている。
したがって高電圧ヒーターは地味な存在だが、EV、PHEVには欠かすことができない存在なのである。
またブースでは、世界耐久選手権(WEC)に参戦しているポルシェ963(ハイブリッド)用の超高性能インバータも展示された。高電圧で極限まで高性能を追求したハイエンドのシリコンカーバイド・インバータであり、現時点では最高峰の性能を誇るが、価格も飛びきりだという。