ボルグワーナーは2022年5月25日、「人とくるまのテクノロジー展2022」ヘの出展に合わせ、同社が推進する最新の電動化技術のプレゼンテーションが行なわれた。
グローバル規模のサプライヤーであるボルグワーナーは、クリーンでエネルギー効率に優れた世界の実現を目指し、革新的で持続可能なモビリティソリューションの提供をミッションとしている。そして今後、2021年段階で電動車用の部品の売り上げは全売り上げの3%であったのに対し、2025年には25%、2030年には45%の売り上げを目標とし、積極的な投資を行なってきている。
そしてM&A(合併・買収)により、特に電動技術の幅を拡大してきており、ここ最近では2020年にアメリカのメガサプライヤーのデルファイ・テクノロジーズを買収し、電動車のパワーエレクトロニクス、パワー制御ソフトウエア技術を獲得。2021年にはドイツの電気自動車用の高性能バッテリー・メーカーのAKASOL社を買収し、2022年にはモーターを製造する天津松正電動科技(SANTROLL)も傘下に収めている。
800V製品群の開発
そして現在、開発を進めているのが第2世代の電動化技術である800V製品群だ。その柱となるのが800V電圧のe-アクスル(ボルグワーナーの呼称はiDM)だ。800V化により、車内配線の軽量化、航続距離の約5%の伸延、そして充電時間の大幅な短縮、充電回数の低減を実現することができるのだ。
iDMは、800V用で拡張性に優れた柔軟なモジュラー・アーキテクチャーとすることで多様な車両に適応できる。駆動モーターは最高1万8000rpmまで対応する油冷式HVH220型IPMモーター搭載。ピーク出力は180kW(245ps)〜300kW(408ps)、最高トルクは3000〜4000Nmを発生する。
そして、この800VのiDMとコンビを組むのが800Vインバーターだ。このインバーターはデルファイの技術が採用され、軽量、コンパクトでさらに両面冷却が実現されている。またパワー半導体は従来型のSi(シリコン)、最新のSiC(シリコンカーバイド)のいずれにも対応しており、低コストタイプから高性能タイプまでをカバーできるフレキシブルな設計となっている。
性能的には、従来のインバーターと比べ重量は40%低減、サイズは30%低減、そして出力密度は25%改善されているという。SiCパワー半導体を使用するタイプでは大幅な効率向上が見込まれ、スイッチングロスは70%も低減できるため、高性能なBEVには不可欠といえる。
この他では、BEVの商用車向けの高出力なリチウムイオン・バッテリーパックもラインアップしている。また、その一方で水素燃焼エンジン用の技術も開発している。
すでに今年2月にヨーロッパの建設機械メーカーから建設機械用の水素噴射システムを受注している。ボルグワーナーは、乗用車から小型、大型商用車まで、あらゆる車両セグメントの、水素エンジン用コンポーネント単体の納入や、コントローラー、ソフトウェア、キャリブレーションを含む燃料噴射システム全体を開発している。これも今後を見据えての先行技術開発ということができる。