ボルグワーナーは2021年5月19、高電圧ハイブリッド乗用車向けに革新的な「eTurbo(電動ターボチャージャー)」を大手ヨーロッパ自動車メーカーとグローバル契約を締結したと発表しました。
ボルグワーナーが供給する高度な電動ターボ技術は、エンジン効率や性能の向上に大きく寄与すると同時に、ますます厳しくなる排出ガス規制への対応を可能にすることができます。なおこの電動ターボを高電圧ハイブリッド車に採用するのは今回が初めてとなります。
ボルグワーナーのエミッション/サーマル/ターボシステムズの社長兼事業本部長のジョー・ファドゥールは、「当社のeTurboは、パワーエレクトロニクスと一体化されており、単体でソリューションを提供することができます。エネルギー回生と強力で安定した過給を電動化することで可能にしており、あらゆる車種の要件に適合させることができるフレキシビリティを持っています。今回契約に至ったメーカーとの関係は歴史が長く、極めて良好なものです。400Vのハイブリッドシステムによりクライアントが開発したエンジンの効率と性能の向上に貢献できたことを大変うれしく思っております」と語っています。
eTurboの構造は、機械式の遠心ターボチャージャーをベースにしており、シャフトに超高回転電気モータが直結されています。ユーザー側は一体型または半一体型のパワーエレクトロニクスのいずれかを選択可能になっています。
このターボ・システムの利点は、通常のターボチャージャーにプラスして電動アシストにより過給応答性が向上する点です。過渡領域での過給応答性が200%以上速くなり、トルクの立ち上り応答時間が50%短縮されるため、通常のターボのラグがほぼなくなり、エンジンのダウンサイジングをさらに推し進めることが可能となります。この電動ターボチャージャーは、特にミラーサイクルエンジンに適しており、性能を損なうことなく燃費の向上と排出ガスの低減を同時に実現できるのです。
このeTurboの特長は、ターボ・アシスト時以外では発電機としても機能し、余剰排気エネルギーを回生することにより電気エネルギーに変換することが可能。得られた電気エネルギーは補機類の電源やバッテリーの充電に使用できるため、より小型のバッテリーを採用することも可能です。
この過給技術のさらなる利点として、排気の後処理制御と空燃比の正確な制御を通じ排気ガスを低減することが可能な点です。eTurboは非アシスト時には背圧を上げる役割を持ち、排出ガスを低減する機能を備えているため、オンデマンドの排気再循環(EGR)の採用にも適しています。
ボルグワーナーの電動ターボチャージャーを搭載した高電圧ハイブリッド車の生産は、2023年9月に開始される予定となっています。