世界的規模のメガサプライヤー、ボルグワーナー社のマーケティング・広報・政府渉外担当のスコット.D.ジレット副社長が、グローバルなビジネス戦略を説明した。そこで何を語ったのか、その中身を追ってみよう。
ジレット副社長によれば、現在のボルグワーナー社のビジョンは「クリーンでエネルギー効率の良い世界の実現」で、企業としてのミッションは「内燃機関、ハイブリッド車、電気自動車用の駆動システムのリーディングカンパニーになる」ということを目指しているという。そして、従来からの内燃エンジン用の製品に加え、より価格、収益の高い電気駆動ユニットの売上を伸ばすことで、2023年には1兆5000億円以上の売上を目標にしていると発表した。
この発表は、2019年1月16日〜18日まで、東京ビッグサイトで開催されていた「オートモーティブ ワールド2019」のテーブルインタビューで発表したもので、イベント会場の「EV・HEV駆動システム技術展」にはハイブリッド、電器駆動システムなどの多くの製品ラインアップを展示していた。
グローバル・サプライヤーのボルグワーナーとは
1兆5000億円という自動車メーカーにも迫る規模の目標を掲げるボルグワーナーについて、アウトラインを説明しておくと、ボルグワーナー社はアメリ・ミシガン州に本社を置くグローバル・サプライヤーで、元々は駆動ギヤ、トランスミッション、クラッチなどの製造メーカーとしてスタートしている。
日本の自動車メーカーがライセンス契約を結んだ往年のボルグワーナーATや、近年ではフォルクスワーゲンのDSG用湿式デュアルクラッチなどでその社名は知られている。またチェーン製品も有名で、トランスファー用のチェーンからタイミングチェーンなども日本車を含め、グローバルで採用されており、特にタイミングチェーンの分野では世界シェアで2位となっている。
ボルグワーナーは現在では、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど18カ国・66(アメリカ:23、ヨーロッパ:19、アジア:24)拠点を持ち、2017年度の連結売上高は1兆580億円に達している。主な製品は、従来からの駆動系、エンジン関連部品、クラッチなどに加え、ハイブリッドなど電気駆動用のパワーユニット、パワートレーンなどのコンポーネンツもラインアップする総合サプライヤーだ。日本では全自動車メーカー、オートバイメーカーとのビジネスを展開しているのも強みだ。
ボルグワーナーの製品ラインアップ
もう少し具体的にボルグワーナーの製品を見てみると、大きな比重を占めているのはやはり内燃エンジン関連の部品だ。タイミングチェーン、クラッチや摩擦板、カムシャフト可変システム、オルタネーター、4WDシステム、さらに最近ではEGRクラーやターボチャージャーなどがラインアップされている。
中でもダウンサイジングの潮流に合致するターボチャージャー、DCT用のクラッチや制御システム、カムシャフト可変システムなどは成長が顕著になっている。これらの部品は電動化が進んでも依然として内燃エンジンを支える重要な部品であることに変化はないからだ。
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高収益が見込めるキーポイント製品
またボルグワーナーは、48Vマイルドハイブリッド製品、フルハイブリッド製品もラインアップし、内燃エンジンと組み合わせることで大きな成長を見込んでいる。自動車メーカーはそれぞれ多様なハイブリッド戦略を持っているが、ボルグワーナーはそれらに柔軟に対応できる製品をラインアップしている。
ハイブリッド用ではP0〜P4配置までのモーター/ジェネレーターをラインアップ。さらにエンジン用として排熱回収システム、eブースター(電動ターボ)、モーター/エンジン切り替えクラッチなど、ハイブリッドとの組み合わせで求められる製品も今後の伸びが期待されている。
純粋な電気自動車用の製品もいち早くラインアップしている。電気モーター/駆動システム一体モジュール、パワーエレクトロニクス、駆動用モーター、EV用トランスミッション、EV用電熱ヒーター、バッテリー温度制御システム、充電器などをラインアップし、自動車メーカーの要求に即座に応える製品群をラインアップしているのだ。
なおボルグワーナーは乗用車用だけではなく、大型トラック用の製品も多数ラインアップしており、大型トラックの分野でも電気駆動化のためのモーター、パワーエレクトロニクスの開発も行なっている。