アイシン精機は、この台場開発センターを含め国内に3ヶ所の開発拠点を持つが、台場開発センターは、先端技術開発、次世代成長戦略の柱と位置づけられている「ゼロエミッション」、「自動運転」、「コネクテッド」への取り組みに加え、人工知能(AI)によるアルゴリズム開発とそれを実現するハードウェア開発に重点を置くとしている。
開所式ではアイシン精機の伊原保守社長から、急激な構造変化への対応と持続的な成長を目指し、これからの技術開発領域を「ゼロエミッション」、「自動運転」、「コネクテッド」という3つを重点領域とすることを発表した。そして、この3つの領域に対して6つのテーマの開発ワーキンググループを立ち上げ、次世代成長領域の開発にリソースを集中させていると説明した。
こうした動きを裏付けるように、アイシンの2017年の企業スローガンから、「好きなことをやって、いい明日をつくろう」で、今後に向けてのチャレンジングな姿勢を読み取ることができる。
ワーキンググループは、アイシン、アイシンAW、アドヴィックス、アイシンAIの各社が培ってきたコア技術をベースととしながら枠を超えて技術開発を進めるという意味で、さらに知能化、AI化の拠点として「台場開発センター」を位置づけている。
高層オフィスビルの14、15階にある台場開発センターは、およそ製造会社の開発拠点とは思えない雰囲気だ。入り口の先にあるのはオープンカフェのある自由討議スペース、そして半円形劇場風のデザインを採用したプレゼンテーション・スペース、デザイン室のような開発部門の部屋などが並んでいる。15階は、今後は大学の研究室やや企業とのコラボレーションなど、プロジェクトごとの独立スペースを作ることも想定されている。
■スマート・コクピット
この日、メディアに紹介されたのは、近未来のコクピットのコンセプトモデル「スマート・コクピット」だ。このスマート・コクピットは、レベル3の自動運転を前提とし、おもてなしサービス・コンセプトと、自然な振る舞いと直感的に伝わる、クルマと人とのインターフェースを具現化したものだ。
このコンセプトモデルは乗員の声や動作にクルマが反応し、乗員の状態(赤ちゃん連れなど)に合わせて乗車前にシート位置を調整する先読み機能や、駐車時などにクルマとクルマの幅に応じてドアの開き具合を調整する、といった機能を備えている。
ドライバーと助手席の乗員の状態を検知する室内カメラ、手の動きを検知する距離センサーを搭載し、乗員の表情やジェスチャーからやりたいことを読み、運転サポートを行なう。
室内カメラは、ドライバーが居眠りしていないかなどをモニターしており、自動運転中に居眠りをする、あるいは前方を見ていないと、自動運転で路肩に停止するといった、レベル3のシステムには不可欠なセンサーだ。
またこのスマート・コクピットは、シートに振動装置が内蔵され、走行状態に応じてドライバーに警告するために振動する機能も装備されている。
シートやジェスチャー動作によるナビやインフォテイメントのコントロールなど、アイシン・グループの得意とする分野がきちんと盛り込まれたコンセプト・コクピットだが、今後はこれにAIを搭載して、より多くのドライバー・サポートを行なうことが開発目標となっている。
■ILY-Ai(アイリー・エーアイ)
「ILY-Ai」はイノベーティブライフfor You-アクティブ・インテリジェンス)を意味する電動の超小型モビリティだ。初号機は千葉工業大学・フューチャーロボット技術センターとの共同開発で2015年に発表されている。
その後、「ILY-Ai」は2016年10月にメルボルンで開催されたITS世界会議、2017年1月のデトロイト・モーターショーに出展されている。この「ILY-Ai」は2020年の東京オリンピックに合わせ、市販も想定されているのだ。
ユーザー層は60歳以上の老齢層のための「ラスト1マイル」のモビリティで、リチウムイオン電池によるモーター駆動で、最高速10km/h、航続距離は20kmとされている。
3輪タイプで、自走するビークルモード時は立ち乗りだ。それ以外のモードとしてキャリーモード(折りたたんで2輪で移動)、キックスクーターモード(片足乗り)、カートモード(買い物など荷物を積載してオーナーに自走追従する)、自走で充電場所に停止するといった機能も持つ。
前方には3次元レーザースキャナー、後側方に2次元レーザースキャナー、オーナーの顔を認識し個人認証を行なうカメラ、音声コマンドができるように音声認識用のマイクを装備し、スマートフォンでモード指定などを行なうようになっている。
高価なレーザースキャナーを装備しているのは障害物検知と、オーナーの安全を守ることを重視しているためだ。危険を察知すると自動停止。その一方で声で呼んだり、オーナーに自動追従するなどの高機能を持っている。今後はより軽量化とコストダウンすることが検討されているという。