自動車部品大手のアイシンがミラノデザインウイークへの出展概要を説明した。アイシンは自動車分野で得た高い技術力を使い、住生活、エネルギーなどの分野へも展開し、人の暮らしを豊かにする新たなソリューションを提供するとしている。
ミラノデザインウイークへは2014年から出展を続け、今回で4回目の出展となる。初出展の2014年は「ne.mu.ri」をキーワードに、自動車部品の体を検知するセンサー技術を住空間へ応用し、人と家具の双方がつながる提案をしている。体重検知センサーを用い、ソファに座ると電気が付くといった双方向の家具の提案だ。
2015年は、「a.yu.mi」をテーマに自動車部品の障害物センサーを応用し、安全なパーソナルモビリティとしての提案をしている。それは形を変え、荷物を運んだり、人が乗れたりするパーソナルなもので、人とのつながりをパーソナルモビリティを通じて提案している。
2016年はアイシンのルーツでもあるミシンによって、人の創造性をカタチにする「ものづくり」の楽しさを提案している。テーマは「tsu.ku.ri」だ。
いずれも、アイシンの持つ技術力、自動車部品を通じて得た先端の技術力がベースにあり、その技術をクルマだけに限らず、もっと人に寄り添ったものへ提供していくことで、人の暮らしが豊かになっていく、といことを提唱している。
4回目となる2017年は、モビリティの新しい時代を拓き、人とクルマの新たな関係をリードする、ということをテーマに出展する。テーマは「The next frontier in mobility」モビリティにおける次の開拓ということで、新しい時代を支えるものは3つの領域で研究されている。それは、電動化によるゼロエミッション、自動運転、常時接続によるホスピタリティという領域だ。
それぞれの領域を代表するクリエイターは、ゼロエミッションでは阿部伸吾氏、常時接続では吉本英樹氏、そして自動運転では吉泉聡氏の作品が展示される。彼らクリエイターがそれぞれのテーマに対し、どのような表現、デザインをするか?というのが興味がポイントになるだろう。
説明会場には吉泉聡氏が登壇し、「アイシンにとって最も大切なものは何か?を考えたところ、やはりクルマの動きが美しい」という結論に達したという。そこで「クルマの美しい動きだけを表現する方法で展示するという。具体的には磁性体を使いタイヤのトレッドが浮かび上がらせる装置で、4輪の動きをトレッドの接地面だけで表現する。あたかもクルマが動いているかのように、感じさせる手法を披露した。
こうしたミラノデザインウイークへの出展はアイシンにとって、クリエイターたちの力を借りてアイシンの企業イメージアップ、技術力を角度を変えた視点から発信しているわけだ。
その背景には、クルマの将来はより人間の感性に寄り添った乗り物へと変化し、AI技術を含めより人とのインタラクティブ(双方向)性は強まり、人が感じたとおりに動く、見せる、聞こえるなどのモビリティになっていくことが挙げられる。それには制御技術が必要であり、その技術をアイシンはアピールしているというわけだ。
人の五感を数値化し、変化率も数値化し、それをクルマに置き換える技術が必要とされる。そこには新たなアルゴリズムを創りだす必要もあり、相当な深度のある研究をもとに生み出されていく世界が存在し、ミラノデザインウイーク(ミラノサローネ)ではそれらを垣間見ることができるわけだ。
開催期間:2017年4月4日~4月9日
会場:トリエンナーレ美術館クーボ ビー イタリア・ミラノ 線ピオーネ公園内