グローバル規模で高度運転支援システム用カメラ・イメージセンサーなどを供給するオンセミは2025年11月11日、インバーターに使用するパワー半導体の最新タイプ「縦型GaN(窒化ガリウム):Vertical GaN(vGaN)」と、高度運転支援システムのカメラ向け最新イメージセンサーをメディア向けに公開した。

先進的なインバーター用パワー半導体「縦型GaN」
直流、交流に変換するインバーターはその変換効率により電気自動車、PHEV、ハイブリッド車の性能が大きく左右される。電気自動車でもインバータの変換効率が高ければ航続距離は向上する。
そのインバータには従来から普及しているシリコン(Si)製のIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスター)が使用されてきたが、より高効率で高電圧に対応できるSiC(シリコン・カーバイド)製のインバーター(MOSFET:金属酸化膜半導体電界効果トランジスター)が開発され、高性能な電気自動車やPHEVに普及しつつある。このGaNは従来のSi製よりコストは高いものの高速変換ができ、高電圧化に対応できるのが大きな特長だ。

オンセミが新開発した「縦型GaN(vGaN)」は、そのSiC製インバーターよりさらに3~5倍もの超高速変換が可能で、エネルギー損失を約50%低減できる。従来の窒化ガリウム製は超高速変換ができるものの高電圧化に課題があるとされてきたが、オンセミは1200V以上という高電圧に対応できるようになっており、最新世代のインバータ用パワー半導体として注目されている。また、低損失でエネルギーロスが少ないことから、大電力を消費するAIデータセンターのサーバーの電源用としても注目されている。
さらにオンセミの「縦型GaN(vGaN)」は、これまでのパワー半導体よりコンパクト、軽量化を実現しており、パッケージの容量も縮小できるため、車載性も向上するのだ。

この「縦型GaN(vGaN)」は2027年をめどに量産化予定で、AIデータセンター、電気自動車、再生可能エネルギー、航空・宇宙の4分野への展開を目指している。そのためニューヨーク州にある最新の専用工場で量産化の準備を整えている。
最新の高度運転支援システム・カメラ用イメージセンサー
オンセミは、20年以上前から車載カメラ用イメージセンサーを開発しており、世界規模で多くのシエアを獲得している。オンセミの車載カメラ用イメージセンサーの20%は日本の自動車メーカーや大手サプライヤーに供給され、日本市場でのシェアは約40%となっているのだ。
こうした車載カメラ用イメージセンサーは運転支援システムのカメラ用から後方視認用のデジタルミラーのカメラ用まで使用され、需要は時代ごとに高まってきている。

車載カメラ用のイメージセンサーは、通常のカメラ用とは異なり、逆光、西日、トンネルの通過などの悪条件化での高コントラスト性、暗い環境での認識性、信号機などに用いられるLED表示の色を正確に捉えるLEDフリッカー対応性、幅広い温度環境で動作する堅牢性などが求められている。

暗い環境での認識性では、0.3ルーメン(満月の状態)はもちろん、0.1ルーメン(三日月の状態)でも歩行者や自転車が検知でき、また、低照度のトンネルから前方の明るい風景を見た場合でも環境検知ができる性能を備えている。

現在では、この高度運転支援システム用のカメラ用イメージセンサーは、8メガピクセルのレベルが標準化しつつある。オンセミのイメージセンサーをいち早く採用したスバルのアイサイトもこのイメージセンサーを採用している。

そして現在は26ビット映像を20ビットに圧縮可能なアルゴリズムを内蔵するイメージセンサーを開発している。最大150dbの明暗差を捉えられるダイナミックレンジを持つイメージセンサー「ベイヤーグローバルトーンマッピング(BGTM)」であるが、センサーが収集する生データ(RAWデータ)はデータ容量が大きすぎるため、既存の20ビットや24ビットの画像処理SoCでは処理できない場合がある。
そこで、生データをイメージセンサー側でデータ圧縮することで、既存の画像処理SoCを変更することなく、より高い性能を持ったイメージセンサーを適用した製品の開発が可能になる。

この最新イメージセンサーは、、LED信号機のちらつきや白飛び、ブレーキランプ点灯時の白飛びを軽減する効果も向上している。このデータ圧縮可能なイメージセンサーは現在、製品化に向けた実証段階である。












