スバル 衝突実験の映像に見るリヤ・シートベルトの重要性

スバルは2020年度の「自動車事故対策機構(NASVA)」による安全性評価(JNCAP)で、試験を受けた6車の中で最高得点を獲得し、「ファイブスター大賞」を受賞した。

64km/hで車両前面の40%部位にバリアと衝突させるオフセット衝突試験

そのタイミングに合わせ、改めてレヴォーグの安全性能、特に今回は衝突安全性能をメディア向けにオンラインで紹介した。

衝突試験は、運転席と助手席にダミーを乗せた試験車が車速55km/hでコンクリー卜製の障壁(バリア)に正面衝突させるフルラップ試験、運転席と後部座席にダミーを乗せ64km/hでアルミハニ力ムのブロックに運転席側の一部(オーバーラップ率40%)を前面衝突させるオフセット衝突試験、運転席にダミーを乗せた静止状態の運転席側に、1300kgの台車を55km/hで衝突させる側面衝突試験などがJNCAPとして行なわれている。

こうした3種類の衝突試験で、ダミー人形の頭部、頚部、胸部、腹部(シートベルトによる骨盤の拘束状態の良否)、下肢部に受けた衝撃を計測し、障害値を算出し、点数をつけることで衝突安全性能が評価されている。

もちろん現在では、各自動車メーカーはこうした衝突試験を想定し、ボディの衝撃吸収構造の進化とキャビンの高強度化を実施しており、全体的なレベルは年々高まってきている。

ニーエアバッグにより下肢の傷害、胸部の傷害を大幅に低減

レヴォーグは、ニーエアバッグを装備しているため、フルラップやオフセット衝突試験でドライバーの胸部と下肢障害を最小限化していることがわかる。また、側面衝突は乗員とBピラー、ドアとの距離が近いため、サイドカーテン・エアバッグを装備し、Bピラーの高強度化を図っている。

特にBピラーには最先端の超高強度なホットスタンプ材+可変硬度材を採用し、試験で使用される1300kgの台車はもちろん、より重量の重いSUV車などによる側面衝突にも耐えられる強度としているのが優位点だ。

国産車で唯一の歩行者保護エアバッグ。歩行者との衝突時に歩行者の頭部の衝撃を緩和するエアバッグ

また、対歩行者衝突では、国産車で唯一の歩行者用エアバッグを標準装備しており、歩行者に対する障害を大幅に低減していることも得点で有利になっている。

このようにレヴォーグは、衝突安全性に関してもほとんどの試験項目で満点を獲得しており100点満点で96.91点を獲得。

さらにアイサイトによる予防安全性能では82点満点で82点、そして新たに追加された事故自動緊急通報装置を搭載しているため8点が加算されるなどにより、総合評価結果は190満点で186.91点を獲得。ファイブスター大賞を受賞している。

スバルは2030年までに自社製品による交通死亡事故ゼロを目指すことを中期経営計画に盛り込んでいる。したがってその他のモデルにも、この目標に向かって絶えず新たな安全技術を盛り込むことになっている。

現在では、ドライバーモニタリングシステム(DMS)の乗員認識性能向上、車両運動制御技術の向上、先進運転支援システムさらなる性能向上、衝突被害を軽減する各種機能の先進運転支援システムとの連携強化と交通弱者保護性能の向上、事故時の緊急自動通報システムの拡充やインフラ協調などの通信技術導入の分野で開発が続けられている。

そして事実、運転支援システムのアイサイトの登場以来、事故件数は低減しており、運転支援システムによる安全性向上の効果は十分に評価できることが判明している。

車両開発安全部の古川寿也部長

しかし、クルマの安全技術がどれだけ進化しても死亡交通事故ゼロを達成するためには大きな課題が残されていると、車両開発安全部の古川寿也部長は語っている。

それはシートベルト非装着時の乗員の問題だ。シートベルトをしないのは人間の問題でシステムや機能だけで対応することには大きな課題がある。

スバルが日本やアメリカでの交通死亡事故を調べたところ、後席はベルトの装着率が低く、事故死亡率が高いことが判明している。レヴォーグには警報音付きのベルトリマインダーが初代から装備されている。

リヤシートのベルトリマインダーは、スバルが実施したユーザーアンケートでは、インジケーター点灯のみの警告より警報音によるリマインダーが後席ベルトの装着に効果が高いことが確認されている。インジケータのみでは25%しかベルトを装着しなかったものが、警報音を伴うと70%にまでベルト装着率が高まったとしている。

しかし、それでもリヤシートの乗員がシートベルトを装着しない例は後をたず、警察庁の2020年に実施した全国シートベルト着用状況調査では、高速道路では運転席の着用率が99.7%、助手席が98.5%であるのに対して、後席は75.8%。一般道路では運転席で99.0%、助手席で96.5%に対し、リヤシート乗員は40.3%と低いのが実情となっている。

そのため、改めてリヤシートベルト非装着の危険性を古川部長は喚起しているのだ。

今回のオンライン形式のテックツアーでは、64km/hでのオフセット衝突の衝突記録映像により、リヤシートベルト非装着の危険性をアピールした。

64km/hオフセット衝突時、シートベルトを装着していない乗員とシートベルトを装着した乗員(ダミー)の違い

映像では、リヤシートに2名の乗員(ダミー)が乗り、右側はシートベルト装着、左側、つまり助手席後方の乗員はシートベルト非装着の状態でオフセット衝突を実施。衝突の瞬間にリヤ左側のダミーは前席のシートバックを破壊しながら前方に投げ出され、センターコンソールのナビ画面付近に頭から衝突。さらに足や体の一部がルーフに激突し、ルーフを変形させている。

別の角度から見たリヤ席でシートベルトを装着していなかった乗員の姿勢。助手席を飛び越え、頭部がインスツルメントパネルに衝突している

つまり64km/hオフセット衝突では、リヤの乗員がシートベルト非装着の場合は高い確率で死亡に至ることが映像から見ることができる。

2030年交通死亡事故ゼロを実現するためには、今後も衝突安全性能や予防安全システムの進化が続くと考えられているが、その前提としてきわめて基本的な乗員拘束装置であるシートベルトの装着、特にリヤシートベルトの装着100%化が必須となっていることはもっと周知されるべきであろう。

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