ユニークなドライブモード
「プロジェクト ブラックS」は、総合ドライブbyワイヤーを採用しており、ドライブbyワイヤーによりアクセル、ギヤシフトが行なわれ、ステアbyワイヤーによりステアリング(現行のスカイラインGTで世界初採用)はアダプティブ電子制御となっている。さらにブレーキには新開発されたブレーキbyワイヤーを採用している。
もちろんこのブレーキbyワイヤーは減速回生システムと油圧ブレーキを完全に協調させるためで、F1では2014年から日産と共同開発したブレーキbyワイヤーが使用されているが、それを市販モデル用にチューニングし、最適なペダルフィーリングとしならが、回生状態に関わらず安定したブレーキ性能が得られるようになっている。
なお、MGU-H、MGU-Kユニットを採用するにあたり、パワートレーンの冷却が必要で、フロントバンパーには、より面積の広い冷却ダクトが設けられ、ボンネットにはターボチャージャーとMGU-Hユニット部からの熱を放出するエアアウトレットが設置されている。また、リヤアクスルの後側にあるMGU-Kの冷却には床下を通過する空気流が使用されている。
「プロジェクト ブラックS」は車体の軽量化が行なわれ、ボンネット、フェンダー、ルーフはカーボン製となっている。こうした軽量化により、デュアル・ハイブリッド・システムを搭載しているにもかかわらず車両重量は1775kgとなっている。そのためパワーウエイトレシオは3.13kg/psとなっている。
ドライブモードは、ロード、ハイパワー、レースの3モードを備えている。ロードモードは扱いやすく、燃費を重視したモード、ハイパワーモードはアクセルを踏み込んだ時に最大限に加速が得られるモードで、回生エネルギーも最大限に引き出すようになっている。
レースモードは、ラップタイムを最大限に追求する一方で、エネルギーの使用を最適化したモードで、これはルノーF1カーに使用されているモードとほとんど同じとなっている。
開発課題
「プロジェクト ブラックS」の開発の課題は、高性能と高効率の両立だ。デュアル・ハイブリッドはブレーキと加速の両方でエネルギーを回収できるため、エネルギーの使用とバッテリーへの貯蔵のバランスを最適化することが必要となる。
ルノー・スポールF1チームによるテストの結果では、全長4.655kmのカタルーニャ・サーキットでの走行をシミュレーションするデジタルテストでは、従来のインフィニティQ50ハイブリッド(スカイラインGTセダン)より、はるかに高効率な走行ができることが確認されたという。
またこれら3種類のドライブモードでドライバーはABS、トラクションコントロールを任意に調整することも可能になっている。
このプロトタイプはこれまでのデジタルテストとダイナモの台上テストから、次のステージに移行する。2019年内をめどに、実走行でのパフォーマンステストと検証を行なうことになっているのだ。こうした実走行テストを経て、いよいよ次期型GT-Rの実像が具体的になってくるはずである。