夜は気温6度まで冷え込む低温の気候にもかかわらず、週末のアイフェルの森には23万5000人もの観客が集まった。5月19日午後3時(現地時間)にニュルブルクリンク24時間耐久レースのスタートが切られた。予選で明らかになったようにトップ20台ほどのGT3マシン、つまりワークス系のチームと有力プライベーターはラップタイム差もごくわずかで各車の実力は拮抗しており、24時間にわたって超ハイペースの激しい生き残り競争が繰り広げられることになった。
実際、その後の展開は、給油のためのピットインごとに、BMW Z4 GT3、メルセデスSLS AMG GT3、アウディR8 LMS ultraなどが入れ替わりで首位に立つ。トップ5台ほどは夜半まで同ラップでの戦いを展開し、レースを通じて30回もトップの座は入れ替わったのだ。最終的にはアウディワークスのフェニックスチームのR8 LMS ultra(車番3)が、アウディにとって初のニュルブルクリンク24時間制覇となる価値ある勝利をもたらした。2番手にもアウディR8(車番26)が食い込んだ。
優勝した車番3のドライバー、ウィンケルホックは「この優勝は言葉では現せないほどうれしい。2010年は3位、昨年は4位で、ようやく優勝することができた。今回も本当に厳しいレースだった。しかし、このレースに勝つことは本当に格別です」と語っている。
また3位に食い込んだメルセデス(車番66)も大いに喜ぶべき好成績といえた。なぜならこの3位はメルセデスにとってニュル24時間レースで最高の結果となったからだ。しかしゴール直前までの30分間、このメルセデスはポルシェワークスドライバーが駆るマンタイ・ポルシェ(車番11)と死闘ともいうべき3位争いを繰り広げた。最終的にポルシェがメルセデスを抑え込んでゴールかと思われたが、ドラマはまだあった。最終ラップのホームストレートで、マンタイ・ポルシェの燃料が尽きたのだ。これはニュル24時間レース史上で最も劇的な展開となり、今後も語り継がれることになるだろう。
レース序盤から夜半までトップグループに付けていたワークスチームのBMW Z4 GT3は、高い戦闘力を発揮したものの、チームの2台ともメカトラブルが発生し、後退している。このようにトップグループの実力が接近した史上空前の展開は、主催者の「性能均衡策」が完璧であったことを物語っている。ちなみに決勝レースを完走したのは111台であった。
日本勢では、SP8クラスのGAZOO LFAが総合15位、クラス1位となった。LFAはこれまでレースでのトラブルが多く、クラス優勝はともかく、総合で20位以内は初めての快挙で、ノートラブルであったことがこの好成績につながった。SP8Tクラスの日産GT-Rは、もし完璧であればLFAと同等かそれ以上の総合成績を残すと予想されたが、開発チームの23番は序盤に他車と接触事故を起こし、大きく遅れて総合99位、クラス2位と期待はずれに終わった。その一方でGTアカデミーチームGT-R(123番)は総合30位、クラス1位となっている。
スバルSTIチームのWRX-STIは予選から好調で、決勝レースでは先行したシロッコGT24が大きく後退した4時間後からクラストップに立ち、2番手にも大差を付けた。総合順位も時間を追うごとに上げて行き、17時間目で総合29位に。しかし、これまでノートラブルであったマシンにエンジンオイル漏れが発生。40分間を費やし、オイル漏れの修理とリヤのドライブシャフト交換を行った。
クラス2位には80分のリードを持っていたためクラス1位の座を守ったままレースに復帰。最終的には総合28位、クラス1位でゴールを迎え、2年連続クラス優勝を果たした。しかし、ノートラブルだった昨年と比べ、予期しないトラブルが発生し、肝を冷やしたレースとなった。
もしノートラブルであったなら、総合25位あたりにつけることができただろう。辰己監督が言う「かっこ悪い勝ち方」というのはこの点も含んでいる。今年はSP3Tクラスで強力なワークスチームが不在だったとはいえ、2連覇は偉業といえよう。
SP3クラスのGAZOO 86は、車番166が総合46位、クラス優勝、車番165が総合65位、クラス6位となり、激戦区でのクラス優勝を獲得した。クラス2位は同周回数のルノー・クリオ、クラス3位はクラシックなオペル・マンタ、クラス4位、5位はルノー・クリオなどとの接戦の末の結果である。またノーマル状態のトヨタ・スイスチームの86は、V3クラスで1位(総合78位)、もう1台はリタイヤとなっている。