【2011ニュル】 VOL.5 第39回ニュルブルクリンク24時間 レースレポート

森の中の地獄と呼ばれるニュルブルクリンクの北コースと、F1も開催されるグランプリコースを接続した25.378kmのタフで長いコースで戦われる耐久レースに、2011年は25の自動車メーカー、210台の車両、およそ800名のドライバーが参戦した。その国籍はドイツ500人、イギリス40人、スイス36人、イタリア23人など33カ国にわたる。

参加車両のクラス分けは22クラスに達する。しかし総合優勝を争うのはSP9-GT3、SP7?9クラス、E1-XP2/E1-XPハイブリッドなど67台に絞られる。

24時間TV中継には52台のカメラ、16台の車載カメラ、3チャンネル無線システム、ヘリコプター2機(カメラ機、放送機)、55kmに及ぶ放送用ケーブルを敷設し、230人のスタッフがTV放送に従事する。そしてこのレースを見守る観衆は22万人にのぼる。

見守る大観衆は22万人!

今年はポルシェ、アウディ、BMWに加え、AMGが開発したメルセデスSLS/AMG・GT3、VWゴルフGT24というドイツ5メーカーの激突に加え、例年通りの多数のアストンマーティン、プライベートチームながら高いレベルのフェラーリ458イタリア、トヨタのGazooレーシング、ランボルギーニ・ガヤルド(ドイツの英雄、H.ストック親子がドライブ)、ジネッタ、NテクノロジーP4/5(ミカ・サロがドライブ)など、エキゾチックカーやプロトタイプカーも参戦する大混戦模様だ。

予選では、なんとダークホース的なフェラーリが8分23秒764でポールポジションを獲得した。これにメルセデスSLSが続き、その後方にBMW M3・GT、ポルシェ、アウディR8 LMSが並んでいる。もちろんこれらのトップグループの実力は伯仲しており、決勝レースの展開はまったく予想できない状態だった。

予選から霧雨が断続するコンディションとなり、決勝のスタート時までこの天気は続いた。なお予選トップ30台には他車に速度差が大きいことを示す青色のストロボライトが装着される。

序盤はメルセデスが飛ばすも…

6月25日、午後4時に決勝レースが始まった。小雨のため、ほとんどのチームはオールウェザータイヤを装着。スタートが切られると、たちまちメルセデスSLSの一団がフェラーリを抜き去り、トップグループに。それをBMW、アウディ勢が追走する展開になった。

しかし雨は上がり、コースはドライに変化する。

メルセデスSLSが次第に脱落し、これに代わってBMW/M3・GTがトップに立ち、アウディ、ポルシェが接近して続く。しかし、昨年の優勝車、BMWは今年は他車との接触事故などにより遅れ、夜11時半頃にはマンタイ・ポルシェがトップに立った。アウディもまた些細なトラブルや接触事故などにより、トップに出ることはできない。

911・GT3/RSRとほぼ同じ速さを持つポルシェ・ハイブリッドは、デフギヤトラブルなどで遅れ、トップグループに躍り出ることはかなわなかった。

トップを走るマンタイレーシングの 911・GT3/RSRは、これ以後はアウディ、BMWのプレッシャーを受け続けたが、ノートラブルのまま最後まで走り切る。マンタイ・ポルシェは、ニュルブルクリンク24時間レースにおいて新記録となる156周、3958.968kmを走破した。これは今年のレースのペースがいかに速かったかの証明である。

注目のゴルフGT24は小雨が続けば4WDのメリットを生かせたかもしれないが、ドライ路面になるに従い精彩を欠き、さらに接触事故やギヤトラブルの発生などにより沈んでいく。VWモータースポーツチームはゴルフGT24の作り込みが不足していたと語っている。

アウディもマイナートラブルに見舞われ、総合優勝の道は立たれたがGT3クラスでメルセデスSLSを抑えてクラス優勝できたことで満足した。

アウディスポーツのW.ウルリヒ博士は、「予選の段階で、我々のR8 LMSが最速マシンではないことは明らかとなった。4台すべてのAudi R8 LMSは、技術的視点から見ればパーフェクトだったし、良いパフォーマンスも発揮した。しかし4台すべてのマシンが何かしらの事故に巻き込まれてしまった」と語っている。

インプレッサがクラス首位に

2Lターボクラスでも異変は起こった。アウディS3、TTS、オペル・アストラOPCなどのトップグループがトラブルや事故の結果、3時間目にインプレッサWRX-STIがクラストップに立ったのだ。

WRX-STIは高い信頼性を発揮し、ノートラブルで走行を続け、2005年の初挑戦以来6年目にしてクラス優勝を果たすことになる。

今回のWRX-STIは従来の限りなくノーマルスペックに近い車両から、カーボンパーツの採用による軽量化と、シャシーのピボット点を上げホイールストロークを確保しながら車高を下げるというシャシーの抜本的な対応を行うことで、昨年の仕様より30秒も速いペースでラップタイムを刻むパフォーマンスを見せたが予選は、本調子が出ない状態だった。

決勝レースでは、スタート時からしばらくウエット路面だったことが幸いし、WRX-STIのAWD性能を活かして、3時間目にはクラストップに躍り出た。その後もクラストップを守り続け、結果的にクラス2番手に2周の差をつけ、142周を走破した。総合でも21位でゴールを果たしている。

課題を残したLF-A勢

なおひとつ上のクラスでは、クワトロ社がサポートするアウディTT・RSが総合14位でゴールし、FF車トップのパフォーマンスを実証した。GAZOOレーシングのLF-Aは今年も大きな成果を挙げることはできなかった。1台はエンジン交換で10時間を費やし、もう1台はマイナートラブルや接触事故に遭遇して大きく遅れている。

もともと優勝争いには加わらず、チームとしてのスキルアップを目指すコンセプトとはいえ、不完全燃焼と言わざるを得ない。またメカトラブルの発生はやむを得ないとしても、その修復作業時間が他チームの数倍もかかるということは、チームの総合力としてハンディを負いすぎていると指摘せざるを得ない。

6月27日からは、すでに来年に向けての各メーカーのプロジェクトは動き始めている。スバルSTIの辰巳監督は、「次回に向けてさらなる改善の必要を感じている」と語っている。

それは他の自動車メーカーチームとて、同じ思いだろう。


第39回ニュルブルクリンク24時間レース 主要リザルト

順位 クラス 順位 車名(チーム名) 周回数

優勝 SP7 ポルシェ911 GT3RSR(Manthey Racing) 156周

2位 EX-XP2 BMW M3 GT(BMW Motorsport) 156周

3位 SP9G アウディR8(Audi Sport Team Phoenix) 155周

4位 SP9G アウディR8(Audi Sport Team Phoenix) 155周

5位 SP9G アウディR8(Audi Sport Team Phoenix) 154周

6位 SP9G メルセデス・ベンツSLS AMG GT3(Black Falcon) 153周

7位 SP9G メルセデス・ベンツSLS AMG GT3(Heico Motorsport)153周

8位 SP8 フェラーリF458イタリアGT(Hankook Team Farnbacher)152周

21位 SP3T スバル・インプレッサWRX STI(S.T.I.) 142周

36位 SP8T 日産GT-R(Schulz Motorsport) 134周

41位 SP8 レクサスLF-A#88(Gazoo Racing)133周

82位 SP8 日産370Z(RJN Motorsport) 122周

134位 SP8 レクサスLF-A#87(Gazoo Racing)83周


BMW motorsport

Audiフェニックス


エントリーリスト

VOL.4ニュル直前情報(続編)

VOL3ニュル直前情報

VOL2 VLN第4戦 ADACカップ4時間レース結果

VOL1ニュルブルクリンク24時間レース情報

ページのトップに戻る