5月14日、ドイツ、ニュルブルクリンクサーキットでVNL(ニュルブルクリンク耐久)シリーズ第3戦、アデナウカップ6時間レースが開催された。 このレースでは、メルセデスSLS AMG GT3が8分14秒961でポールポジションを獲得し、レースはハンコックチームのフェラーリF458が優勝した。
実は、この耐久レースは、6月23から26日に開催される伝統のニュルブルクリンク24時間レースの予行演習に相当するレースのため、各チームともレース結果よりレース車の熟成に重点がおかれている。そのためレースの主要参加チームから24時間レースの参戦チームが見えてくるのだ。
常連のポルシェ・セミワークスチーム、マンタイ・ポルシェGT3を筆頭として多くのポルシェGT3/カップカーが参加することはいうまでもない。またワークスチームのハイブリッドも参戦するだろう。BMWはワークスチームのM3 GTと、複数のサテライトチームからZ4 GT3が参戦する。
さらに、今年は多数のサテライト&ユーザーチームからメルセデスSLS AMG GT3が参戦。今回の6時間レースでポールポジションを獲得したことからも分かるように、ベンツ/AMG社が開発しただけあって、総合優勝を狙っていることは確実だ。
6.2LV8型エンジンを搭載し、0→100km/hは3.8秒。トランスミッションはシーケンシャル6速で、トランスアクスル配置だ。フレームはアルミスペースフレームで、メルセデス流の安全コンセプトで作り上げ、ガルウイングドアのボディを備えている。
今年のアウディは、ワークスチームの参戦ではなくユーザーチームのR8 LMSをサポートするという体制だ。ということは総合優勝狙いには加わらないと見てよいだろう。そのアウディに代わって、ダークホースに名乗りでたのがVWだ。ゴルフGTIの35周年、そして、おそらくVW/R社を新設した背景もあり、総合優勝狙ってくるのがゴルフ24GTでワークスチームとして参戦する。
ゴルフ24GTはゴルフのデザインをしているがV型5気筒2.5Lターボエンジン(440ps)とフルタイム4WDを組み合わせた本格的GTカーで、周到なテストも繰り返されているのだ。エンジンは市販版を使用しているもののドライサンプ化されるなど、レース用に熟成されている。規則によりリストリクターを装備しているのでパワーは抑え気味のはずだ。もちろんVWモータースポーツ社からは、これ以外にガス燃料のシロッコGT24-CNG、2.0TDIも参戦する。
これに、常連となっているダッジ・バイパー、アストンマーチン・バンテージN24も顔を揃えている。これら有力なチームが顔をそろえ、今年の総合優勝はポルシェ、メルセデス、BMW、VWという4メーカーによる死闘になるのではないかと予測する。
一方、日本車では、GAZOOチームからレクサスLF-A(木下隆之/脇坂寿一/飯田章)、レクサスCT(高木実/佐藤久実/影山正彦)の2台。佐藤久実選手は日本人ドライバーの中でも有数のニュル経験のある女性ドライバー。高木実はトヨタのテストドライバーという異色の組み合わせで、CT200hの参戦は実験的な意味が大きいことをうかがわせる。
STIからはインプレッサWRX/STI(佐々木孝太/吉田寿博/バンダム/エンゲルス)が出場する。また、日産GT-R(シュルツ/マルティン/山本泰吉)もニスモ・サポートでデビューする。三菱ではドイツ人チームとして、ランサーエボX、多数のシビックR、S2000も例年通り参戦している。
なかでも注目は、レクサスCTだが、今後の高出力バージョン開発のための実証テストを兼ねての出場だろう。そしてもう一台の注目がインプレッサだ。当然、2010年仕様よりかなり戦闘力を高めているが、アウディTT RS、アウディA3、フォード・フォーカスRS、セアト・レオン、オペル・アストラOPCなど強敵は少なくない。
このような状況のなかで、STIが今回のVNL(ニュルブルクリンク耐久)シリーズ第3戦への参戦した理由は、ニュルブルクリンクをはじめて走る佐々木選手の慣熟走行とVNL出場回数のクリア、そしてマシンのセッティングのためだ。さらに、今回はなんと辰己監督も自らステアリングを握り、セッティングの方向性、車両チェックなどを行い、本番に向けての修正点を見つけたという。ファンとしてはこのSP3Tクラスの白熱した戦いから目が離せない。今年のニュル24時間レースは最高の盛り上がりになるだろう。
文:編集部 松本晴比古
VOL.2 VLN第4戦 ADACカップ4時間レース結果
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VOL.4 ニュル直前情報(続編)
VOL.5 ニュルブルクリンク24時間レースレポート
VOL.6 独占手記〜WRX・STItsなぜニュルで勝てたのか〜吉田寿博 参戦記