2018年5月23日〜25日、自動車技術会が主催する「人とくるまのテクノロジー展2018横浜」が神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された。最新自動車技術のショーケースであるこの展示会には過去最多となる国内外の597社が出展した。
「社会を、生活を変えてゆく、自動運転技術」をテーマに、運転の自動化に向けて進化する技術を中心とした展示・講演が行なわれ、3日間に渡るイベントの来場者は9万3458名、学術講演会の聴講者は6141名だった。
2018年の主催者企画は、「社会を、生活を変えてゆく、自動運転技術」と題し、展示・体験、講演会を実施。展示としては、展示会場1階に自動運転技術や自由な移動の進化と現状をテーマにコーナーを設け、2階コンコースでは、ラスト1マイルのパーソナル向けの自由な移動を体感できる新しいモビリティコーナを設け、1階ピロティでは自動駐車機能体験コーナも設けられていた。
それでは、出展された各社のブースの中から、主な展示をピックアップしてみよう。
■三菱電機
三菱電機の自動運転実証実験車のアウトランダーが展示された。自動運転実験車の多くは高価なLiDAR(レーザースキャナー)を採用しているが、三菱電機の自動運転システムは前方カメラ、周辺モニターカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー、V2X通信、高精度ロケーターで構成しているのがユニークだ。
高精度ロケーターはGPS信号(誤差25cm)、高精度地図情報などを組み合わせたもの。日本では高速道路の高精度地図情報、海外ではHERE社の高精度位置情報を組み合わせという。なお、この自動運転実験車は、山陽道などで実走行しているという。
■A&D
計測器メーカーとして知られるA&Dは、計測だけでなく、シミュレーションなどモデルベース開発の分野に幅を広げ、計測から開発までをサポートするシステムを展開している。
また新製品としては、タイヤのトレッド面の圧力(つまり接地性)をテストするタイヤ試験機を展示していた。ドラム式で、舗装路面を再現した表面とタイヤを接地させ、様々な速度で操舵したり、横力を発生した状態でのトレッド面の接地力を計測するシステムで、画期的な試験設備といえる。
■マツダ
マツダのブースには「スカイアクティブ-X」と、次期型アクセラを想定した次世代プラットフォームを展示し、大きな注目を集めた。スカイアクティブーXは、実機と解説バネル、次世代プラットフォームもボディ骨格が展示された。
次世代プラットフォームもボディ骨格は多方向・環状力骨構造を採用しているのが特長で、入力を分散させ、ボディ骨格全体で剛性の連続性を高めるようにしている。
スカイアクティブ-Xは、すでに概要は発表されているが、コモンレールによるガソリンの高圧噴射システム、吸排気カムの可変バルブタイミング、イートン製スーパーチャージャーとインタークーラー、大量EGRシステム、P0配置のマイルド・ハイブリッドなどからなる。
常用域の広い範囲で、リーンバーン(希薄混合気)+EGRを高圧縮比で圧縮し、点火プラグ付近に噴射した燃料により着火させるというシステムで、より負荷が大きくなると空燃比は理想空燃比〜出力空燃比になり、ミラーサイクルでの運転状態になる。
■日産
日産が既に北米市場に投入している可変圧縮比エンジン「VC-T」エンジンは、これまで日本では未公開だったが、ついに展示された。ただし小型の模型エンジンだが。
構造的には、通常のクランクに固定されるコネククティングロッドの大端部に「マルチリンク」と呼ばれるリンクが結合されている。このマルチリンクを位置決めするコントロールシャフトとアクチュエーターがあり、コントロールシャフトはハーモニックドライブ機構によりマルチリンクの位置を変化させ、つまりピストンの上死点を変化させる仕組みだ。
圧縮比は高負荷時の8.0から低負荷時の14.0まで連続的に変化する。負荷は、アクセル開度、アクセル踏みこみ速度、車速から判定している。ミラーサイクルは吸気量を変化させる構造で、吸気量を減らせば出力は低下するが、この可変圧縮比エンジンは吸気量は減らすことなく圧縮比を可変にすることで、パワーと燃費性能を両立できるのがメリットだ。
■デンソー
デンソーは、最新のトヨタ・セーフティセンスに採用されている最新のカメラ、ミリ波レーダーを展示した。トヨタはアルファード/ヴェルファイア以降はこの新センサーを採用し、夜間の歩行者や自転車も検知できるように性能の向上を果たしている。またこのカメラの画像センサーは4割小型化されている。
またミリ波レーダーは、わずかな速度差を精度よく検知できる送信方法を採用し、自車両前方の歩行者の検知性能を向上。さらに、従来品に比べミリ波レーダーのサイズは6割の小型化を行ない、搭載性を向上。
■アイシン
アイシンは「ゼロエミッション」、「自動運転」、「コネクティッド」の3つの重点開発領域のプロトタイプを出展した。「eAxle(イーアクスル)」は、リヤアクスルなどに採用できる電動モーター+減速機構をユニット化したものだ。
また「FF用1モーターハイブリッド・トランスミッション」も出展された。アイシンの横置き用8速ATユニットを使用し、トルコン部に高出力モーター、その前後にクラッチを搭載。モーター走行、モーターブーストによる走行、コースティングなどが可能な高性能ハイブリッド・トランスアクスルだ。同社によれば8速ATと高出力モーターの組み合わせのため、コスト的にはまだ高いというが、システムとしては今後有望といえる。
なお、「人とくるまのテクノロジー展2018」は、横浜での開催に続き、7月11日〜13日に名古屋でも開催される。会場はポートメッセ名古屋(名古屋市国際展示場)で開催される。
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