いよいよヨーロッパの最大規模のモーターショー「IAA(国際モーターショー。通称フランクフルト・モーターショー)」の話題で盛り上がる季節がやってきたが、2021年からそれが大変貌することになったのだ。
IAAを主催するドイツ自動車工業会(VDA)は、2021年3月に会場をミュンヘンに変更すると発表していた。フランクフルトモーターショーは大規模な会場で、ドイツの自動車メーカーが中心になって巨大なパビリオンを建設し、多くのニューモデルやコンセプトカーがずらりと並ぶ世界最大級のモーターショーとして知られてきた。
だが、新型コロナウイルスが蔓延する2年ほど前から、巨大規模のモーターショーにも関わらず入場者数は低減傾向になり始め、また出展コストも大きいことから、出展メーカーの中からフランス勢が抜けたり、日本の自動車メーカーも規模を縮小したりし始めていた。
そんなことも影響したのか、ドイツ自動車工業会はIAAをフランクフルト市以外で開催することを模索し、ドイツの他の主要都市を検討し、ミュンヘン市で開催することを決定していた。
もちろんドイツ自動車工業会は、開催場所を変更しただけではなく、開催内容も大幅な見直しを行なっている。
そして7月初旬に、ミュンヘンで新たに構想した「IAAモビリティ」として開催することを発表。IAAモビリティは未来のモビリティ社会に目を向けることに絞り、近未来のモビリティのショーケースになることを目指すことになった。
CO2削減からカーボンニュートラルの時代へ、そしてますます巨大化する都市に対応するべく、自動運転技術、電気駆動技術、AI技術、新世代の自転車、都市内を移動することを前提としたコネクテッド技術と超小型モビリティの融合などを紹介する予定だ。
CO2ニュートラルの実現に向けて、重要な役割を果たすエレクトロモビリティなど出展テーマを絞り、自動車メーカーやメガサプライヤーだけでなく、他分野の企業、スタートアップやベンチャーなどの参加を促している。
また、出展はミュンヘン・メッセ(見本市会場)のパビリオンだけでなく、市街地でも特別オープンゾーンを設置し、さまざまなイベントやディスカッション、展示などが行なわれる。同時に会場周辺の道路にブルーレーンという特別な試走コースを設け、EVや水素燃料電池車はもちろん電動スクーター、各種ハイブリッド車などに試乗できるようにしている。
自動車関連メーカーだけでなく他分野の企業やベンチャー企業の参加、オープンスペースでの多様な展示など、前回の東京モーターショーによく似た内容になっていることは興味深い。
出展企業はフォルクスワーゲン・グループ、BMW、メルセデス・ベンツ、フォードなどドイツメーカーに加え、ルノー・グループ、ヒュンダイ、ポールスター(ボルボ)、中国の長城汽車(ORA,WEY)、NIOなどが顔を揃え、一方で日本のメーカーは現時点ではエントリーしていない。
サプライヤーでは、ボッシュ、コンチネンタル、ZF、シェフラー、フォルシア、サムソン、ヴァレオ、ミシュラン、マグナなどの大手から、AI関連でIBM、インテル、モービルアイなどのIT企業も参加することになっている。
IAAモビリティはこのような内容で、9月7日から12日までミュンヘン・メッセで開催され、このイベントはドイツでは新型コロナ蔓延防止の封鎖規制の緩和後初の大規模な国際イベントとなる予定だ。
総出展社数は1000社以上で、出展車両だけではなく多数の講演者がモビリティの未来に向けたイノベーションとコンセプトを発表する予定だ。まさにカーボンニュートラルに向けて最先端のコンセプトのもとで、モビリティの主要企業とハイテクIT企業を結びつけるイベントと位置づけられるだろう。