【ABB FIA フォーミュラEシーズン11】第5戦アメリカ・マイアミ カオスなレースでローラ/ヤマハのディ・グラッシが2位初表彰台

フォーミュラEシーズン11第5戦マイアミでは、これまでの勢力図に少し変化が現れるレースとなった。

マイアミでの開催はシーズン1以来の2回目開催だが、会場は異なり、今回はホームステッドで開催。NASCARなどで有名なオーバルコースを持つ広大なパーネントコースで、フォーミュラEではインフィールドと一部オーバルのストレート部を使用したレイアウトになっている。

アメリカのサーキットの特徴とも言えるのは左回りのレイアウト。欧州は右回りがほとんどだが北米では逆回り。そしてコース幅が広いことも特徴と言える。さらに路面の舗装にコンクリートを使用していることも欧州とは異なる点だ。

第4戦終了時点で、好調なのはニッサン勢だ。ドライバーランキングトップはオリバー・ローランド(ニッサン)で、今季2勝を挙げており、存在感が増している。そしてチームランキングもニッサンとマクラーレンが好調で、マクラーレンもニッサンPTを使用しているチームなので、ニッサン一色だ。

一方で、ポルシェ、ジャガー勢に勢いがない。特にジャガーだ。シーズン10ではニック・キャシディ(ジャガー)が存在感を示し、ミッチ・エヴァンス(ジャガー)と共にチャンピオンシップを争う姿もあった。今季は予選でも苦しみ、さらにジャガーPTを使うエンヴィジョンも調子が上がらない。

そうした勢力図の中で、マイアミの予選ではまたも異変が起きている。グループ予選A組でデュエルスに進出したのは、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルシェ)、ストフェル・ヴァンドーン(マセラティ・DS)、ジェイク・デニス(アンドレッティ/ポルシェ)、デビッド・ベックマン(クプラキロ/ポルシェ)。3台がポルシェPTを使用し、うちクプラキロロのベックマンがデュエルス初進出だ。ここにきてポルシェが勢いを取り戻し攻勢をかけてきた。

そしてグループ予選B組ではロビン・フラインス(エンビジョン /ジャガー)、ルーカス・ディ・グラッシ(ローラ/ヤマハ)、ノーマン・ナトー(ニッサン)、ニック・デ・フリース(マヒンドラ)という顔ぶれになった。エンヴィジョンのフラインスはようやく速さを取り戻した印象で、ディ・グラッシはローラ・ヤマハが初進出を達成した。ナトーはチームメイトのローランドとは裏腹に、ここまでノーポイントだったが、見事デュエルスに進出し、そしてマヒンドラのデ・フリースも戻ってきた印象の顔ぶれが揃ったのだ。

グループ予選トップ8名で競うデュエルスでは、ナトーが初ポールポジションを獲得し、ローランドの不調の穴を埋める良いチームワークとなりニッサン勢に勢いをつけた。ちなみにローランドはグループ予選A組8位と振るわなかったのだ。またジャガー勢ではフラインスが調子を上げたものの、キャシディB組7位、エヴァンスA組7位、ブエミA組6位と3台とも調子はいまひとつというのは気になる。

またシーズン8のシリーズチャンピオン、デ・フリースも速さを見せ、チームメイトのエドアルド・モルタラ(マヒンドラ)もA組5位と僅差でデュエルスを逃しており、マヒンドラもアップデートが成功しているようだ。

気になる脅威の新人テイラー・バーナード(マクラーレン/ニッサン)20歳は、今季がフル参戦初年度にも関わらず、4戦終了時点でランキング4位。これまで3位2回、2位1回で、4戦中3戦で表彰台に登る大活躍をしている。しかし、マイアミではB組6位でデュエルスには進出できなかった。

【予選結果】
1:ノーマン・ナトー(ニッサン・ニッサン)
2:ジェイク・デニス(アンドレッティ・ポルシェ)
3:アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルシェ・ポルシェ)
4:ロビン・フラインス(エンビジョン・ジャガー)
5:ニック・デ・フリース(マヒンドラ・マヒンドラ)
6:ストフェル・ヴァンドーン(マセラティ・DS)
7:ルーカス・ディ・グラッシ(ローラ・ヤマハ)
8:デビッド・ベックマン(クプラキロ・ポルシェ)

【決勝】
決勝レースはコース幅が広いこともあり、クリーンにスタートしトレインの展開。26周で競う序盤はエネルギーマネージメントのため予選より10秒遅いタイムで周回をしている。この抑えた展開をしているのは、フォーミュラEレースの課題のひとつだろう。全周で競い合いが面白さに繋がるが、フォーミュラEの序盤は様子を伺う順争いという見え方は今後の課題だ。ちなみに今回はピットブーストは実施されない。Wヘッダーレースの1日だけピットブーストが行なわれる。

さて12周を過ぎて中盤に入るとペースが上がり、エネルギーマネージメントをしつつポジション争いが激しくなっていく。また、ライバルチームのバッテリー残量もわかるため、ピットでの駆け引きがキーになっている。このあたりは見る側にどう伝えていくのか、これも課題のひとつだ。

そしてアタックモードを使い始めると目まぐるしく順位は変わるものの、全体のラップタイムは上がっていない。つまり、余力を残した状態で周回しているため、ポジション争いもあまり意味を持たないことになる。

残り6周を切り終盤に入るとアタックモードを使い、激しいポジション争いに変わる。しかしギュンター、ヒューズ、エバンスの3台が絡むアクシデントで赤旗中断になった。そのためレース再開後は4周のスプリントレースの様相となる。一方でアタックモードが消化できていないドライバーも多数いた。

6分を残していたのが、フラインス、ナトー、ローランド、バーナード、バードで、4分残りがヴェアライン、キャシディ、ミュラー、デニス、ディ・グラッシ、ティクタム、マローニ、デ・フリースだった。果たして残りの周回数で使い切れるのかギャンブルになった。

その結果、チェッカーはナトー、ヴェアライン、フラインス、ローランド、バード、ディ・グラッシ、ダ・コスタ、バーナードの順だったが、アタックモードを消化しきれていないナトー、フラインス、バード、ローランドには10秒のペナルティが課せられたため、優勝はヴェアライン、2位にディ・グラッシ、3位ダ・コスタとなるカオスなレースとなった。

【決勝結果】
1:パスカル・ヴェアライン(ポルシェ・ポルシェ)
2:ルーカス・ディ・グラッシ(ローラ・ヤマハ)
3:アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルシェ・ポルシェ)
4:ニコ・ミュラー(アンドレッティ・ポルシェ)
5:エドアルド・モルタラ(マヒンドラ・マヒンドラ)
6:ノーマン・ナトー(ニッサン・ニッサン)
7:ダン・ティクタム(クプラキロ・ポルシェ)
8:ロビン・フラインス(エンヴィジョン・ジャガー)

【シリーズランキング】

順位ドライバーチームポイント
1位オリバー・ローランドニッサン69
2位アントニオ・フェリックス・ダ・コスタポルシェ54
3位パスカル・ヴェアラインポルシェ51
4位テイラー・バーナードマクラーレン51
5位マキシミリアン・ギュンターDSペンスキー37
6位ジェイク・ヒューズマセラティ27

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■【シーズン11】レースレポート

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★第2戦 メキシコシティ
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★第4戦 ジェッダ

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