【ABB FIA フォーミュラEシーズン11】第3戦サウジアラビア・ジェッダ 史上初 ピットで急速充電するレースはDSペンスキーのギュンターが勝利


ABB FIA フォーミュラEシーズン11第3戦は、サウジアラビアのJeddahジェッダで行なわれた。フォーミュラEは2018年からサウジアラビア・デルイーヤで開幕戦を迎えていたが、シーズン11ではブラジル、メキシコと南米から始まり、サウジアラビアは第3戦に組み込まれている。

そしてサーキットもサウジアラビア第2の都市Jeddahに変わった。ここはF1が行なわれているコースで、当然、路面状況などの環境はF1品質であり、路面は綺麗で、かつコース幅も広い。そのコースをフォーミュラE向けにシケインを4箇所設置し、距離も3.001kmに短縮して開催した。

注目はこのレースからレース中に急速充電を行なう「ピットブースト」が導入されることだ。そして今後は、Wヘッダー開催の時は1レースのみピットブーストが導入され、もう1レースは通常通り行なうという運用になった。

そのピットブーストでは、ピットインができるタイミングは、バッテリー残量が60%以下から40%以上の間の時のみ可能となる。但し書きには「Jeddahの場合」とあるので、コースによってその運用は変化する可能性があるようだ。そして、作業時間は最低停止時間は34秒と決まっている。停止してから2秒後に給電可能となり、給電完了2秒後に動き出せる。30秒間が給電時間というわけだ。

電力量は600kWで30秒。使用電力量の10%となる3.85kWhをチャージすることになる。そして1チーム2台を走らせているが、2台同時のピットインはNGで、1台ずつのルールになる。気になるポイントとしてSCやFYCのタイミングでもピットクローズとせず、チャージは可能ということだ。

このあたりは実際のレースで、どのタイミングでピットインをするのか未知数であり、また10%エネルギーが回復するため、レースペースがどうなるのか予測は難しく、このレースの見どころとのひとつになった。

そのほかのルールは従来どおりで、アタックモードは8分間で2回に分けて消化する義務があり、グループ予選は300kW、デュエルスと決勝レースのスタート時(150km/hに達するまで)、そしてアタックモード時が350kWの出力でAWD走行になる。

予選

ジェッダの予選は昼間に行なわれ、決勝レースはナイトレースのワンデーだ。そしてこのピットブーストが適用されたのが第3戦ということになる。

予選での注目は、開幕戦、第2戦と連続してポールポジションを獲得したポルシェのパスカル・ヴェアラインだ。この第3戦でもポールを獲得するのか注目される。そしてマクラーレンの弱冠20歳のテイラー・バーナードだ。開幕戦では、なんと3位入賞をしており、本格デビューイヤーの開幕戦で表彰台という芸当を見せている。実力なのか、運がよかったのか、注目だ。

シーズン10ではローランドと並んで注目されたジャガーのニック・キャシディがシーズン11では絶不調。上位で戦えていないことも気になる。もう一台のミッチ・エバンスは開幕戦で最下位からのスタートで優勝という、離れ業をやっているだけにキャシディの不調は気になる。

そうした中始まったグループ予選では、なんとバーナードがグループAでトップに立ったのだ。300kWの状態で競うグループ予選は決勝レースと同じ条件だけに、その速さにますます期待が膨らんだ。一方のグループBではNISSANのオリバー・ローランドがトップタイムを出している。グループAでは上位4台が0.1秒以内の僅差だったのに対し、ローランドは2位に0.3秒の差をつけており、別次元の走りをしていることがわかる。

そしてデュエルスでは350kWに出力がアップしAWDでの1ラップ勝負になる。そこでもバーナードはエバンスを破る速さを見せ周囲を驚かせている。セミ・ファイナルでDSのギュンターに敗れてしまったが、速さは本物であり決勝での活躍にも注目だ。

デュエルス決勝ではギュンターとヴェアラインの勝負となった。セミファイナルでヴェアラインはローランドに勝ち、決勝進出を決めている。開幕戦からの3連続ポールを獲得するかが見どころだ。そして今季DSに移籍したギュンターが好調で、ヴェアラインとの勝負に臨んだ。そして、最速ラップを計測したのはギュンターで、ヴェアラインを破りポールポジションを獲得した。

決勝

さぁ、決勝レースでは話題のピットブーストがどうなるのか?が注目される。オープニングラップでは、接触が多く、コース幅が広いにも関わらず、エバンス、ヴェアライン、サム・バード、ニコ・ミュラー、ダ・コスタらが接触し、マシンを破損させピットインを余儀なくしている。

ホールショットはギュンターが決め、追うローランド、バーナード、そしてマヒンドラのニック・デ・フリースが4番手、5位にマセラティのジェイク・ヒューズというシーズン10とは顔ぶれの異なるメンバーでトップ争いとなった。

11周目にローランドがギュンターを交わしてレースをリードする。この時レースラップは1分19秒台でギュンターがリードしていた時より2秒近くラップタイムが上がった。この違いはどこに影響するのか。

15周目いよいよピットブーストが開始された。3位と4位を走るヒューズとバーナードが最初にピットインをしてチャージを受ける。もちろん34秒の停止時間は共通なので、順位の入れ替わりはない。入ってきた順番どおりに各マシンはピットアウトしていく。

意外にも何事も起こらず、ピットブーストは20周目に全車が終了し、順位に変動もなく終了した。初回としては良しとするだろうが、今後はさまざまなケースも予測されているので、しばらくは眼が離せない新ルールと言えそうだ。

そして決勝レースで大きく変わったのは、アタックモードだ。350kWに出力アップするのはシーズン10と変わらないがAWDとなることで、コーナリング速度が上がり、順位の入れ替えが明らかに異なる展開となったことだ。2回目のアタックモードの時、12位にいたポールポジションからスタートしたギュンターは、3位にまで順位を挽回できていたが、2位に4秒のリードをつけていたローランドとは、まだかなりの差が開いていた。

しかしながら、ギュンターのアタックモード中にファステストラップも刻み、予選と同等の1分17秒179をマークしている。そして残り2周となった時点でローランドのリードはなくなり、ギュンターとのテールツーノーズになった。さらに驚くのはバーナードも3位に浮上しており、電費が苦しそうなローランドに迫っているのだ。

最終ラップ。あと3つのコーナーを抜ければローランドが優勝という場面で、ギュンターに交わされ、今季初優勝を飾った。2位にローランド、3位バーナードというレースだった。

関連記事:【ABB FIA フォーミュラEシーズン11】ついにピットで充電する「Pit Boost」を次戦のサウジアラビアで導入決定!(2025.02.16)

■【シーズン11】レースリポート

★第1戦 サンパウロ
★第2戦 メキシコシティ
★第3戦 ジェッダ

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