ABB FIA フォーミュラEシーズン11で、ついにピットでの充電システムを次戦のサウジアラビア2025年2月14~15日から導入されることになった。シーズン当初から導入という情報もあったが、やや遅れての導入となった。
さて、ピットでの給油の代わりに充電するこのレース、どんなフォーマットへと展開するのだろうか。まずはその概要からお伝えしよう。
PIT BOOSTとは?
・600kWで34秒間のピットストップを行い、30秒間のチャージで10%のエネルギー(+3.85kWh)を追加する。
・指定されたレースでは全ドライバーに義務付けられる。
・既存のATTACK MODEルールとは別に存在し、チームに2つの戦略的要素を提供することになる。
・PIT BOOST中、ピットクルーは2名までとし、ピットクルー1名はマシンの停止と解放を担当する。
・PIT BOOSTを実施できるのは、1チームにつき1台のみ(同時には実施できない)。
といった概要で運用されるのだ。このPIT BOOSTは、現在の民生用スーパーチャージャーよりもはるかに大きな電力を供給するもので、レース中に新たな戦略的要素が追加され、レースの結果や戦術を劇的に変化させる可能性を秘めているものだ。
戦略的レースのインパクト
つまり、PIT BOOSTは、フォーミュラEのレース戦略を再定義することとなり、ドライバーとチームは、ピットストップ中にコースポジションを失うリスクと、エネルギーブーストのメリットを比較検討しなければならない。PIT BOOSTの最適なタイミングを選ぶことは極めて重要であり、新たなドラマをもたらすことになる、というわけだ。
フォーミュラEの共同設立者兼チーフ・チャンピオンシップ・オフィサーであるアルベルト・ロンゴは、次のように述べている。
「広範なテストとシミュレーションのプロセスを経て、ついにこの画期的なテクノロジーを世界に発表できることをうれしく思う。これは、我々のシリーズだけでなく、現代のモータースポーツにとって最も野心的でインパクトのある追加技術のひとつです」
「PIT BOOSTは、激しいプレッシャーの中で、チームもドライバーも同じように大きな決断を迫られることになる。劇的なオーバーテイク、予想外の展開、人間の創意工夫の可能性は、ファンの興奮を高め、フォーミュラEとFIAの革新への絶え間ないコミットメントを示すだろう。サーキットから公道への技術移転を強化するために誕生したシリーズとして、このレースは消費者向け車両とEV性能の将来的な可能性に一歩の変化をもたらすものだ」