【フォーミュラEシーズン11】第1戦 ブラジル サンパウロ AWDになったGEN3マシンの影響とドライバーラインアップを考察

ABB FIA フォーミュラEシーズン11の開幕戦は年跨ぎで2024年12月8日ブラジル・サンパウロで開幕した。シーズン11の注目はマシンがAWDになったこととヤマハの参戦などチームの動きも気になるポイントだ。

まず、AWDの仕組みについて。じつは以前からフロントにモーターを搭載しており、そのモーターは回生ブレーキにのみ使われていたが、今季から駆動してもOKとなりAWDとなったわけだ。ただし、AWDで走行できるのは予選のデュエルスと決勝ではアタックモードの時だけに限られている。その結果、開幕戦では興味深いことが出てきたのだ。

グループ予選は従来通りに300kWで行なわれているが、デュエルスでは350kWに出力アップされ、そしてAWDになる。すると予選の300kWのタイムを上回るドライバーが少ない現象が起きていたのだ。これは以前から似た現象があり、決勝レースは300kWで行なわれるため、セットアップは300kWがメイン。短い時間内にセットアップを変更するリスクを取らず、そのままの状態で350kWに出力アップして走行しているためと想像できる。したがって、タイムは逆に伸びないということが起きていた。

それと同様に今季はさらにAWDになっているため、マシンの挙動変化も当然起こるし、アクセルの開閉タイミングは微妙に異なると想像できる。したがって、ドライバーは探っている状況でのデュエルスになるのだろう。予選タイムを超えたドライバーが少ないのはそうしたリスクによる影響と思われたのだ。果たして決勝でのAWDの影響はどうなるのか。ちなみに0-100km/h加速は1.8秒で、F1より速く、トップスピードも320km/h程度まで出るように変わっている。

またマシンのデザインも変更されている。目立った違いはフロントウイング形状で、立体的な一体整形のデザインになっている。前年までは接触した際、フロントウイングが破損脱落というのが頻繁に起こっていたための対策と思われる。

さらにタイヤも変更されている。メーカーはHankokで変更はないものの、コンパウンドをはじめアップデートが行なわれており、特徴的だったスキール音は消え、レーシングタイヤと似たようなグリップしながら旋回するタイヤ音に変わっている。

こうした変更はマシンの挙動に大きな変化が起きるわけで、オフシーズンにどこまでテストできているのか、また練習走行ができているのか気になるところだ。

チームの動きも大きくあった。シーズン10のチャンピオンヴェアラインはポルシェに残留、もう一台もダ・コスタで変更なし。マニファクチャラータイトルを取ったジャガーチームもキャシディ、エバンスで変更なしだ。

ポルシェPUを使用するアンドレッティにはニコ・ミュラーが加わりデニスとチームメイトになった。ミュラーはアプトからの移籍だ。またアンドレッティで走っていたナトーは日産へ移籍した。そしてマクラーレンのジェイク・ヒューズはマセラティMSGに移籍。ポルシェPUからDSパワーユニットでの参戦になる。またチームメイトにヴァンドーンを迎えており、ヴァンドーンはワークスDSペンスキーからの移籍となった。そのDSペンスキーには逆にマセラティからギュンターが入りヴェルニューとチームメイトになった。

新人と新チームではまずヤマハだ。ここは「ローラヤマハアプト」のチーム名でベテランのディ・グラッシを獲得し、チームメイトは新人のザネ・マローニが参戦。マローニはF2で宮田莉朋のチームメイトだったドライバーでステークF1のリザーブドライバーになっている。

またマクラーレンでは、シーズン10でバードの怪我のときに代役で出場したテイラー・バーナードがレギュラードライバーになり、バードと組む。

そしてもう1チームは「クプラキロレース」だ。シーズン10をERTで参戦したチームの代わりに参戦、クプラはフォルクスワーゲングループのセアトが生産する量産ブランドで、欧州の大衆モデルブランドになる。ただし、クプラは技術協力ではなくスポンサーであり、チーム国籍はKiro race coがある米国になっている。ドライバーはERTのダン・ティクタムをスライドし、チームメイトは新人のデビッド・ベックマンが参戦している。

このような11チーム22台で始まったシーズン11はブラジル・サンパウロで開幕し、グループ予選を見るとポルシェ、DS、そしてNISSANが好調だった。NISSANはローランドが23号車となり、ナトーともどもデュエルスに進出。ローランドは決勝まで勝ち上がっている。またDSペンスキーもマセラティでは苦労したが、いきなりデュエルス進出という結果を初戦から出している。

さて、決勝レースを見てわかったことは。アタックモードが本来の狙いどおりに機能したことだ。シーズン10までは、消化モード的な役割でポジション争いに影響しなかったが、シーズン11では目まぐるしく順位が入れ替わる。

その結果、最下位22位からスタートしたミッチ・エバンスが優勝するという波乱も起こり、今季は予選の意味がないレースになりそうだ。予選は予選として一発の速さを競い合うレースという位置付けに変わりそうだ。

レース自体は2回の赤旗中断があり、大荒れのレースになり、またオーバーパワーというペナルティを受けるチームも多かった。これは制御の課題なので、エンタメとして見ている側はシラけてしまう。

制御といえば、今季のNISSANチームの制御プログラムは日本人の西川直志氏が担当している。シーズン10ではサポート的な位置だったそうだが、シーズン途中、あるプログラムを組み込んだところ、ローランドの一皮剥けた大活躍に繋がったことが評価され、今季のメインエンジニアになっているのだ。

また、シーズン10のレース序盤から中盤はポジション争いは関係なく、ラスト10周程度で決まる展開だったが、今季はレースペースが速くなり、通常のレースのようにみることができるという変化が起きている。

いずれにしても、シーズン11はマシンの変更などにより、大幅な変化が起きており見応えがでてきたのは間違いない。

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