2023年は、史上最速・最軽量・最強・高効率の電気レーシングカーであるGEN3が登場し、従来の記録を次々に塗り替えた。
昨年のシーズン9では、11チーム、22台が参加し16戦で、7人の優勝者と11人の表彰台ドライバーが誕生し、19人のドライバーが少なくとも1周はレースをリードという毎レースが混戦だった。
そして、チームのエンジニアたちはオフシーズンをGEN3レーシングカーからコンマ1秒を引き出すために費やし、その結果、グリッドの半数以上のドライバーが、シーズン10の世界タイトルを狙えると確信して開幕戦のハンコック・メキシコシティE-Prixに臨むことになる。特にシーズン9のチャンピオン、ジェイク・デニスに注目だ。
🔳ジャガーvsポルシェ、エンヴィジョンvsアンドレッティ……決着の行方は
チーム世界選手権とドライバーズ世界選手権の両方で、シーズン9のタイトル争いは最終戦までもつれ込み、最終的にジェイク・デニス(アンドレッティ)とエンビジョン・レーシングがロンドンで優勝した。彼らの優勝がユニークなのは、両タイトルともパワートレインが異なるだけでなく、それぞれポルシェとジャガーのファクトリーではなく、サテライトチームよって獲得されたことだ。
アンドレッティはGEN3のためにポルシェのパワーユニットを搭載。彼らの99Xエレクトリックがシーズン9でジェイク・デニスを2勝、11回の表彰台に導いた。
ファクトリーチームであるタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームは、パスカル・ヴェアラインの好スタートにより、最終的にドライバーズランキングとチームランキングの両方で4位に入った。
同様に、エンヴィジョンもジャガーのサテライトチームである。ジャガーのパワーユニットを搭載した両チームはシーズン9でそれぞれ4勝を挙げたが、トップに立ったのはエンヴィジョンだった。ドライバーズレースではニック・キャシディが接戦を演じ、チームのタイトル獲得に大きく貢献した。
キャシディはシーズン10からジャガーTCSレーシングのファクトリーチームに移籍し、友人であり、長年のライバルであり、キウイの同胞でもあるミッチ・エバンスとともにレースを戦う。これはフォーミュラE史上最も注目されるドライバーラインアップのひとつであり、イギリスチームは今年をトップで終えようと必死だろう。エバンスとキャシディはバレンシアのシーズン前公式テストでも1位と2位を獲得している。
🔳シーズン10ドライバーラインアップ
メキシコ・シティでの初レースを前に、ドライバーの顔ぶれが総入れ替えとなった。11チーム中、シーズン9と同じコンビを組むのはパスカル・ヴェアラインとシーズン6チャンピオンのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタを擁するタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム。
ストフェル・ヴァンドールとジャン-エリック・ベルニュ(2人の間に3つのフォーミュラEタイトルあり)を擁するDS PENSKE、そしてダン・ティクタムとセルジオ・セッテ・カマラが復帰したERTフォーミュラEチーム(旧NIO 333レーシング)の3チームだけだ。
ニック・キャシディはジャガーTCSレーシングにうまく馴染んだようで、バレンシアのテストでは新しいチームメイトのミッチ・エバンスに次ぐ2番手タイムを記録した。
キャシディの後任としてエンビジョン・レーシングに移籍したロビン・フラインスはフォーミュラEで2勝を挙げており、7位でセバスチャン・ブエミと並ぶ。
メキシコ・シティに向けた最大の話題のひとつは、ニュク・デ・フリースが戻ってくることだ。シーズン8のチャンピオンはF1に参戦するために選手権を去ったが、現在は長らくホームとしていたシリーズに復帰した。
シーズン9ではGEN3への適応に苦戦したマセラティMSGレーシングから英国・インドチームに移籍したエドアルド・モルタラとともに戦うことになる。モルタラはテストで6位に入っている。
マセラティは再びマキシミリアン・ギュンターを起用する。シーズン9の後半、チームはギュンターの手によって調子を取り戻し、ジャカルタでは優勝、ローマでは表彰台に上った。ギュンターのチームメイトにはインド人ルーキーのジェハン・ダルバラが加わった。
ノーマン・ナトはアンドレッティ・フォーミュラEでの初出場となったバレンシア・テストでシーズン9チャンピオンのジェイク・デニスを上回るタイムを記録し、オリバー・ローランドもサシャ・フェネストラズとともに日産フォーミュラEチームへの復帰を果たした。
NEOMマクラーレン・フォーミュラEチームでのサム・バードの活躍にも注目が集まる。同じイギリス人のジェイク・ヒューズはデビューした直後にで2回のポールポジションを獲得している。
ルーカス・ディ・グラッシは、シーズン3のタイトルを獲得したチームへの感動的な復帰を果たし、ABTクプラ・フォーミュラEチームのニコ・ミュラーと合流した。ディ・グラッシはメキシコの地でフォーミュラEで最も成功を収めたドライバーである。
🔳アウトドローモ・ヘルマノス・ロドリゲス サーキット
2024年1月14日(日本時間)、フォーミュラEはシーズン2以来、メキシコシティのアウトドローモ・ヘルマノス・ロドリゲスはシーズン7のプエブラを除いて8回目の訪問となる。19ターン、2.630kmのこのサーキットは、長くて速いストレートと、何万人ものファンを収容する伝説的なフォロ・ソル・スタジアムを通過するテクニカルなインフィールド・セクションが絶妙にミックスされているコースだ。
2024年はバックストレートにシケインが新設され、アタックモード・ゾーンはスタジアム・セクションの出口にあるターン15のアウト側に設置された。
こうして2024年シーズン10は全16レースが始まり、東京・お台場では第5戦3月30日に初開催される。日本からは唯一NISSANが参戦しており、活躍が注目される。いよいよ始まるフォーミュラEシーズン10、今季もどんな荒れたレースになるのか注目だ。
Team | Power Unit | Car No. | Driver | 日本語表記 |
ABT CUPRA FORMULA E TEAM | Mahindra M9Electro | 11 | LUCAS DI GRASSI | ルーカス・ディ・グラッシ |
51 | NICO MÜLLER | ニコ・ミュラー | ||
ANDRETTI FORMULA E | Porsche 99X Electric Gen3 | 1 | JAKE DENNIS | ジェイク・デニス |
17 | NORMAN NATO | ノーマン・ナトー | ||
DS PENSKE | DS E-TENSE FE23 | 25 | JEAN-ÉRIC VERGNE | ジャン・エリック・ヴェルニュー |
2 | STOFFEL VANDOORNE | ストフェル・ヴァンドーン | ||
ENVISION RACING | Jaguar I-Type 6 | 4 | ROBIN FRIJNS | ロビン・フラインス |
16 | SÉBASTIEN BUEMI | セバスチャン・ブエミ | ||
ERT FORMULA E TEAM(旧NIO333) | ERT X24 | 33 | DAN TICKTUM | ダン・ティクタム |
3 | SÉRGIO SETTE CÂMARA | セルジオ・セッテ・カマラ | ||
JAGUAR TCS RACING | Jaguar I-Type 6 | 9 | MITCH EVANS | ミッチ・エバンス |
37 | NICK CASSIDY | ニック・キャシディ | ||
MAHINDRA RACING | Mahindra M9Electro | 48 | EDOARDO MORTARA | エドアルド・モルタラ |
21 | NYCK DE VRIES | ニック・デ・フリース | ||
MASERATI MSG RACING | Maserati Tipo Folgore | 18 | JEHAN DARUVALA | ジャン・ダルバラ |
7 | MAXIMILIAN GÜNTHER | マキシミリアン・ギュンター | ||
NEOM MCLAREN FORMULA E TEAM | Nissan e-4ORCE 04 | 5 | JAKE HUGHES | ジェイク・ヒューズ |
8 | SAM BIRD | サム・バード | ||
NISSAN FORMULA E TEAM | Nissan e-4ORCE 04 | 22 | OLIVER ROWLAND | オリーバー・ローランド |
23 | SACHA FENESTRAZ | サッシャ・フェネストラズ | ||
TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM | Porsche 99X Electric Gen3 | 94 | PASCAL WEHRLEIN | パスカル・ヴェアライン |
13 | ANTÓNIO FÉLIX DA COSTA | アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ |