ABB FIA フォーミュラEシーズ9の第12戦は、アメリカ・オレゴン州ポートランドで初開催された。これまでニューヨークで行なわれていたが、パーマネントサーキットでのレースとなった。
コースはインディカーも走るコースで、コース幅が広く、ハイスピードなレイアウト。1周3.221kmを28周で争う。
第11戦終了時点でのチャンピオンシップは、リーダーにパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)134点、1点差でジェイク・デニス(アンドレッティ・ポルシェ)、3位がニック・キャシディ(エンビジョン・ジャガー)の128点で、わずか6ポイント差の混戦だ。
さらに4位にミッチ・エバンス(ジャガー)109点、ジャン・エリック・ヴェルニュー(ペンスキー・DS)が97点で、この辺りまでがチャンピオンに絡んできそうだ。特にヴェルニューは2度の世界チャンピオンを経験しているだけに、残りのレースが注目される。また日産のサッシャ・フェネストラズは13位で、後半になって速さがでてきているので期待される。
さて、グループ予選A組では、そのサッシャがトップ通過で、続いてヴェルニュー、ノーマン・ナトー(日産)、マキシミリアン・ギュンター(マセラティ・ZF)がデュエルスに進出。なんとチャンピオン争いをするヴェアラインとキャシディがグループ予選敗退という波乱があった。
グループ予選B組ではレネ・ラスト(マクラーレン・日産)がトップ通過で、デニス、ジェイク・ヒューズ(マクラーレン・日産)、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルシェ)がデュエルスに進出した。
この結果、日産のパワートレインを使用する4台2チーム全車が、デュエルスに進出したのだ。そして最初のQFレースではナトーとサッシャが勝ち上がりSFレースで日産同志のガチンコ対決になった。また、デニスとラストが勝ち上がり、日産PTは3台がSFレースに進出した。
そのデュエルスSFレースではサッシャがナトーを下し、デニスとラストではデニスが勝ち上がった。デュエルス・ファイナルではサッシャ VS デニスで、日産対ポルシェで争われ、デニスが勝ち、デュエルス決勝3戦連続、3度目の正直でポールポジションを獲得した。
この時点でポールポジションポイント3点を獲得したデニスが136点になり、ヴェアラインを抜いてチャンピオンシップのリーダーになった。そのヴェアラインは18番手スタートなので、決勝でどんな追い上げを見せるのか楽しみだ。
ファイナルレース
決勝レースでは、ハイスピードコースであり、コース幅も広いことから回生エネルギーの確保が厳しいことが予想された。したがって、トレインでの展開で、回生チャージによるコントロールレースになる懸念もあった。
レースがスタートすると、まずはポジション争いになるが、コース幅が広いことから3ワイドが至る所で発生し、見応えはある。だが、1周のラップタイムが遅く、1分20秒から25秒もかかっているのだ。予選タイムは1分8秒台、9秒台の争いなのだから、相当なマネージメントを覚悟をした展開ということができる。
またアタックモードは従来どおり8分を2回にわけて、消化義務があるのは変わらないが、抜くためのモードのはずが、バッテリー残量を減らすことになるので、エネルギー消費しないようにアタックモードを使う。つまり、消化タスクの狙いが変わってしまっているのだ。
スタートして3周目、一斉にアクティーベートゾーンへとマシンを導くも、激しいポジション争いには使っていない。とはいえ、上位での展開を望むドライバーが多いので、なんと、5周目までに12台を抜いたダ・コスタ、10台を抜いたキャシディが上位に進出している。
だから、3ワイドどころか5ワイドで1コーナー争いという、これまでカーレースでは見たことのないポジション争いを見ることができ、見応えはある。
レースは、途中クラッシュするマシンもあり、SCが2回入る場面があった。そのためアディショナルラップが加算されることは確実であり、残りの周回数が不明な状況でトップ争いを繰り広げる。が、それは、ポジションを譲らないもののラップタイムは上げないという、ひたすら後続を抑えるというマネージメントレースが展開される。
したがって、後続はどんどん団子状態になり、21番手スタート、最後尾スタートのヴェルニューが5番手まで浮上する珍事も起こるのだ。したがって予選の持つ意味も変わり、予選というレースと決勝というレースの2タイプのレースになっているように見えるのだ。
さて、22周目7番手スタートのダ・コスタがトップに立つとややペースは上がり、1分12秒台になる。そのレベルのタイムになるといわゆるレーシングラップになるので、順位争いは居場所探しからポジション争いへと変化し始める。
26周を終えてアディショナルラップがプラス4周と伝えられ、ピットではマネージメントが忙しく計算され、ドライバーに伝えられる。
するとトップ争いが熾烈になってくる。キャシディ、ダ・コスタ、デニス、エバンスといったメンバーが気づけばレースをリードし、その後ろにもヴェルニュー、ブエミが顔をだしている。そしてラストラップでも順位争いを激しくやり合い、10番手スタートのキャシディが今季3勝目を上げた。
続いてチャンピオンシップをリードするデニスが2位に入り、7番手スタートのダ・コスタが3位に入った。キャシディは今季のレースで初開催されるレースでは、すべて表彰台に入るという適応能力の高さをみせる結果になった。
これでチャンピオンシップは1位がデニスで154点、2位キャシディ153点とわずか1点差。そして3位がヴェアラインで今回9位フィニッシュだった。得点は136点で少し差がついた。続いてエバンスが122点という順だ。
こうしてレースを振り返ると、予選では日産パワートレインが速く、決勝のエネルギーマネージメントではジャガーとポルシェの効率が良さそうな結果になった。
次の第13戦はイタリア・ローマの開催で、7月15日(土)に第13戦、16日(日)に第14戦のWヘッダーが行われる。残り4戦で1ポイント差のチャンピオンシップに注目だ。