2023年6月5日、ABB FIAフォーミュラEシーズン9の第11戦がジャカルタで行なわれた。
ジャカルタは2年連続の開催で、第10戦、11戦とダブルヘッターで行なわれた。ジャカルタはフォーミュラEのために作られたサーキットで、コース幅も広く、予選順位が重要になるトラックコンディション。そうした中、グループ予選では同チーム同士が競う組み合わせとなり、チームポイントで高得点が取りにくい環境で始まった。
グループA予選で勝ち上がったのはジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・ポルシェ)、サッシャ・フェネストラズ(日産)、ミッチ・エバンス(ジャガー)、そしてジェイク・ヒューズ(マクラーレン・日産)の4台。
グループB予選ではトップでマキシミリアン・ギュンター(マセラティ・ZF)、エドアルド・モルタラ(マセラティ・ZF)、パスカル・ヴェアライン(ポルシェ)、そしてストフェル・ヴァンドーン(DS)がデュエルスに勝ち上がった。ここではマセラティの速さが際立っていた。
デュエルスでは、デニスとエバンスの準決勝対決で、1/1000秒差の僅差でデニスが勝ち上がる接戦。またモルタラとギュンターのマセラティ同士はセミ・ファイナル対決となり、ギュンターが決勝に進出した。
ポールポジションを決めるデュエルス決勝は、デニスとギュンターの組み合わせで、前日の第10戦と同じ顔合わせだ。そして2レース続けてギュンターがポールポジションを獲得した。
決勝
迎えた決勝は前日の36周からプラス2周の38周で競われる。プラス5kmとなるが、エネルギーマネージメントを変更しなければならず、さらに第9戦のモナコまではバッテリー容量が38.5kWhだったが、この第10戦、11戦は36kWhに減らされているため、制御変更によるレース展開の変更も予想された。
またアタックモードの使い方も変更され、従来は4分間を2回に分けて使う必要があったが、第10戦からは8分間になり、2回にわける使い方は2分+6分、4分+4分、あるいは6分+2分のパターンに変更されている。
このあたりの変更により、決勝レース展開がどのように変わるのか注目だ。ランキング1位のキャシディは10番手から。追い上げるヴェアラインが6番手、そしてデニスがフロントローからのスタートで始まった。
スタートはクリーンに始まりギュンターがトップをキープ。日産のサッシャがスタートダッシュを決め4番手に浮上。逆にヴェアラインは失敗し7番手にひとつ順位を下げている。
4周を終えたところからアタックモードを使い始め、順位が入れ替わる。トップ集団は2分のアタックモードを選択し、2回目は6分という選択をしていた。
レース展開ではギュンターがレースを引っ張り、タイムも前日より速い展開。そのためオーバーテイクが難しくトレインを形成している。序盤の順位争いはギュンター、デニス、エバンス、モルタラ、ヴァンドーンで展開する。
中盤に入ってもトレインのままだが、デニスがトップに立つとペースダウンし、全体が密集し始める。ギュンターは1分10〜11秒台の周回だったがデニスは12秒台までタイムを落とし、エネルギーマネージメントをしている。
デニスは走行ラインをブロックし順位はキープするものの、後続は激しい接近戦になっていく。15周目付近で上位4台デニス、ギュンター、エバンス、モルタラがリードを広げ、後続をやや引き離す展開になっていくが、2回目のアタックモードを使い始めるタイミングとなり、再び順位が動き、リードも消えていく。
しかしながらトラック上でのオーバテイクは難しく、アタックモードに入るためにラインを外したタイミングでの順位入れ替えという展開だ。簡単には抜けないコースというわけだ。
チャンピオンシップをリードするキャシディがなんと19周目にランキングを争うヴェアラインと接触し、敢えなくリタイヤとなる不運があった。
20周を超えたあたりは再びエネルギーコントールの様相になり、ペースダウンするがギュンターが再びトップに立つとペースが上がった。
23周目、残り15周の時点でギュンターは9秒台でのラップを刻み始める。予選タイムなみの速さで、これに2番手のデニスが付き合う形で追走するも3番手以下はペースを上げられない。おそらくギュンターのエネルギー切れを予想しているのだろう、ギュンターとデニスの2台だけが大きなリードを築いた。
レース終盤、36周目にアディショナルラップがないことが宣言され、残り2周の勝負。しかし、すでにこの時点でギュンターとデニスは単独で走るほど後続を引き離す展開になっている。エネルギー残量も十分あり、後続マシンはついていけない展開になっていた。
最後は3位争いでエバンスとサッシャ、5位争いでナトーとヴェアラインが激しい接近戦を展開したが、順位は変わらず、優勝はマセラティのギュンターでマセラティの初勝利をもぎ取った。ギュンターはBMW以来の通算4勝目を飾った。
2位は前日に続いてデニスが入り、3位にエバンスという順だった。日産のサッシャは4位入賞で5位にナトーも入り日産勢は大きくポイントを稼ぐことができた。またヴェアラインは6位に入り、シリーズランキングでトップに立った。
首位はパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)で134点、2位ジェイク・デニス(アンドレッティ・ポルシェ)の133点と1点差。そして3位は今回ノーポイントとなったニック・キャシディ(エンビジョン・ジャガー)で128点という結果になった。以下4位ミッチ・エバンス(ジャガー)109点、5位じゃん・リュック・ヴェルニュー(DS)97点でこの辺りまでがチャンピオン候補となりそうだ。日産のサッシャは31点で13位、ナトーが21点の15位だった。
次戦はアメリカラウンドで6月24日にポートランドで開催される。