ABB FIA フォーミュラEシーズン9の第7戦ドイツ・ベルリンが例年どおり、テンペロフォフ飛行場跡で開催された。
第6戦までの順位はトップがポルシェのパスカル・ヴェアラインで86点。同じポルシェパワートレインを使うアンドレッティのジェイク・デニスが62点。3位に日本でも活躍したニック・キャシディ(エンビジョン・ジャガーPT)が61点で追い上げてきた。
ポルシェやZFの地元ドイツではやはりポルシェ勢に期待がかかるベルリン大会だが、予選では波乱の展開となった。なんとドイツのパワートレインチームがこぞって失速し、かろうじてデニスが唯一グループ予選を通過したに過ぎなかった。
グループA予選通過は昨シーズンのチャンピオン、DSペンスキーのストフェル・ヴァンドーン、エンビジョンのセバスチャン・ブエミ、同じくエンビジョンのニック・キャシディ、そしてNIOのセッテ・カマラが通過した。
グループB予選通過は、ジャガーのサム・バード、マセラティのマキシミリアン・ギュンター、そしてこちらでもNIOのティクタムが通過している。そしてアンドレッティのデニスというメンバーだ。
デュエルスではQF(準々決勝)通過はブエミ、ヴァンドーン、ティクタム、バードでSF(準決勝)はブエミとバードが勝ち上がった。そしてデュエルス決勝ではジャガーパワートレイン対決となるエンビジョンのブエミとジャガーのバードとの対決になった。
ポールポジションはブエミが獲得。ブエミは16回目の史上最多ポール獲得で、今季は第2戦のディルイーヤぶり、今季2回目のポール獲得となった。そしてなんとブラジル戦の時に右手首を骨折しているということで、テーピングで参戦し、見事ポールを獲得したのだ。
決勝ではランキングトップのヴェアラインが13位から、ランキング2位のデニスは5位からのスタート。そしてヴァンドーンも3番手スタートという順だ。また、今季好調な場面を何回も見せてきたNIOが決勝でどのようなエネルギーマネージメントでレースに生き残るかにも注目だ。
ここまでポルシェ、ジャガーが予選、決勝で速く、ライバルに差をつけているが、DSペンスキーも盛り返し、マクラーレン日産も侮れない。
そして舗装状態がコンクリートでかなりバンピーであるということもあり、1周2.355kmを40周するレースにどのような影響を及ぼすかにも注目だ。ポールシッターのブエミはバンピーな路面からのキックバックで、骨折した右手首に痛みがあると話しているように、ドライビングに影響がでそうだ。
決勝レースでは、なんとNIOのティクタムがジャンプアップでトップを奪い、レースがスタートした。上位を見ると、ティクタム、ブエミ、バード、ヴァンドーン、デニス、キャシディ、セッテ・カマラ。
アタックモードは4分間を2回使い、350kWの出力で走行できる。当初はそのタイミングで上位進出を競う展開だったが、周回数が決まっている今季は350kWになるのはエネルギー消耗と捉えるように変わった様子。
そのため、序盤から中盤にかけての順位争いは激しく順位を入れ替えているものの、純粋な順位争いというよりエネルギーマネージメントによる順位変動のようだ。だからトップの入れ替えも激しく、このレースではトップが8人のドライバーに入れ替わる展開となった。
従って、上位10位付近まで順位を上げておく必要はあるものの、中盤までは順位争いというより、バッテリー残量を残す方向の走行になっていた。そのためレース速度も遅いため全体に渋滞気味の展開で、遅いがために追突してしまう接触が頻繁に起きていた。
そしてSCが入り、アディショナルラップ3周が宣言されたが、32周を超えるとアディショナルラップの変更がないため、そこからスピードによる順位争いのレースが始まった。
チームは32周目までにアタックモードを消化しておき、ポジションはトップを狙える位置まで上げてくという展開だ。
順位を見てみると、バード、ブエミ、エバンス、ギュンター、ヴェアライン、ロッテラー、モルタラ、ヴェルニューで、上位3台はジャガーパワートレインを搭載するマシンだ。
そしてブエミ、バード、エバンスの3台による激しいトップ争いが展開され始めたのは最後の10周だ。そこからは強烈なスプリントレースが展開し、エバンスがトップ、2位ブエミ、バード、ギュンターと続き、少し離れてロッテラーという順。
そして最終ラップ。トップはエバンスでバードがブエミに仕掛け2位に浮上。そしてブエミはギュンターにもかわされてしまい、4位フィニッシュとなった。ブエミは右手首の影響があったのかもしれない。
エバンスは通算8勝目で、ジャガーのワンツーフィニッシュになり、マセラティも初表彰台となった。
以下4位ブエミ、キャシディ、ヴェアライン、ヴェルニュー、ロッテラー、モルタラ、ローランドという順。
レースを振り返ると周回数が決まっているため、アディショナルラップ数が最終決定される周回数まではエネルギー消費を抑えるレースだった。そのため、予選順位の重要性が下がってしまう現象が起きている。
またアタックモードもエネルギー消費のタスクと捉えるチームが多く、どのタイミングで使うのかは、これまでとは違った意味で難しくなった。
この第7戦を終えて、ダブルヘッダーとなる明日開催の第8戦ではどんな戦略で競うのか、チームの作戦に注目して見てみたい。