ABB FIA フォーミュラE選手権 シーズン9の第5戦は南アフリカ・ケープタウンの市街地コースで開催され、通算8回目となるアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤーポルシェ)が優勝した。
フォーミュラE初開催となる南アフリカ大会はケープタウンの市街地、1周2.92kmのコースで行なわれ、30周のレースが開催された。これまで予選ではジャガーのパワートレインを使うエンビジョン、TCSジャガー、そしてニッサンのパワートレインを使うマクラーレンが速く、決勝ではポルシェのエネルギーマネージメントが一歩リードをし結果を出すという展開だ。そしてベテランのヴェルニューも速さを取り戻し、DSパワートレインを使うマセラティ、DSペンスキーも注目だ。
第5戦はストップ&ゴーのレイアウトで長いストレートがあるハイスピードコース。アタックモードを使うアクティベートゾーンもハイスピードエリアにレイアウトしている。長いストレートはバッテリー消費が多く、エネルギーマネージメントが難しくなることから、ポルシェ勢が有利になると事前予測はあった。
そして、残念ながらZFパワートレインを使うマヒンドラとアプトは出走しなかった。リヤサスペンション系のトラブルということで、安全が保証できないという理由で4台の欠場が決まった。
予選
グループ予選ではA組トップにニッサンのサッシャが入り、続いて、キャシディ、ヴェアライン、ヴェルニューと続いた。グループBからはラスト、エバンス、ブエミ、ギュンターの4台がデュエルスに進出。A組、B組ともにニッサン・パワートレインというのも注目だ。
デュエルスではQF準決勝でヴェアライン(ポルシェ)VSキャシディ(エンビジョン・ジャガー)はキャシディが勝ち上がり、ヴェルニュー(DS)VSサッシャ(ニッサン)ではサッシャが勝利。そしてブエミ(エンビジョン・ジャガー)VSエバンス(TCSジャガー)はエバンスが勝利し、ギュンター(マセラティ・DS)VSラスト(マクラーレン・ニッサン)ではギュンターが勝ち上がった。
そしてSF準決勝は日本で馴染み深いキャシディとサッシャが競い、シャッシャが決勝へ。もうひと枠はエバンスとギュンターでギュンターが勝ち上がった。
デュエルスの決勝ではサッシャ・フェネストラズ(ニッサン)が参戦6戦目にして初のポールポジションを獲得した。ニッサン・パワートレインはサテライトのマクラーレンは速いものの、ニッサンワークスがいまひとつという状況だったが、ここに来てワークスのサッシャがポールを獲得したことで、今後の活躍に期待が広がる。
決勝
迎えた決勝はポールのサッシャがホールショットを決めたが、キャシディとギュンターの2位争いはサイドバイサイドとなり見応えがあった。またオープニングラップでは6番手スタートのヴェアラインが止まりきれずに前を走る7番手スタートのブエミに追突。チャンピオンシップをリードするヴェアラインはフロント周りを壊してリタイヤとなった。一方の追突されたブエミは最後尾に下がるものの、レースに復帰している。
そして予選で大きなクラッシュをし、決勝はピットスタートとなったマセラティのモルタラもコース途中でストップしリタイヤしている。
この混乱からFCYが指示され、その後SCとなって4周をSCで消化している。6周目にレースは再開し、このときトップのサッシャはギュンターに抜かれて2位となっていた。これはFCYのカウントダウン中の追い抜きなのか、その後審議となったが、ギュンターは21周目に単独でウオールにヒットしリタイヤしている。
レース再開時の順位は、トップにギュンター、サッシャ、キャシディ、エバンス、ラスト、ヴェルニューという順。9番手スタートだったニッサンのナトーは12位まで順位を下げていた。その後、エバンスにオーバーパワー違反でドライブスルーのペナルティが出て脱落。
10周目にアタックモードのタイミングでサッシャは3番手に順位を落とす。キャシディ、ギュンター、サッシャ、ラスト、ヴァンドーンとなる。
18周目に久しぶりのベテラン、ダ・コスタが4位争いをヴェルニューと繰り広げる。シーズン8はDSテチータで同チームにいた二人が競い合った。22周目に再びFCYがでるが、その直前にキャシディとサッシャがアタックモードに入ったため、ダ・コスタがサッシャを交わして3位に浮上する。サッシャは4番手とアンラッキーな展開。
その後トップをいくキャシディはマネージメントのためかラップタイムを落としてトップを死守する。が、エネマネに有利なポルシェのダ・コスタがあっさりキャシディを交わし、さらに差を猛烈に広げていく速さを見せる。
それでもペースの上がらないキャシディを今度はヴェルニューが捉え、トップはダ・コスタとヴェルニューの旧チームメイト同士の争いに変わった。30周目ペースを落としているキャシディをサッシャも交わし、3位に浮上。残り2周となり初表彰台が見えた。
しかしながらSC周回分のアディショナルラップ2周のラストラップ、32周目になんとサッシャがウオールにヒット! 惜しくも表彰台を掴み損ねてしまった。一方のトップ争いはダ・コスタとヴェルニューが激しく競い、エネルギーに余裕があるのか、ダ・コスタが振り切り通算8勝目、今季初勝利を勝ち取った。
優勝のダ・コスタは11番手からの勝利で、2位のヴェルニューは5番手からのスタートだった。そしてなんとか3位を死守したキャシディが2戦連続の表彰台となった。
4位以下はレネ・ラスト(マクラーレン・ニッサン)、5位セバスチャン・ブエミ(エンビジョン・ジャガー)だ。ブエミはオープニングラップで追突されてコースアウトし最後尾まで沈んだものの、終わってみれば5位フィニッシュをしている。
そして6位にNIOのダン・ティクタムが入り、今季のNIOは間違いなく速くなっている。7位ストフェル・ヴァンドーン(DSペンスキー)、8位ノーマン・ナトー(ニッサン)、9位アンドレ・ロッテラー(アバランチ・アンドレッティ・ポルシェ)、10位ジェイク・ヒューズ(マクラーレン・ニッサン)という結果になった。
これでチャンピオンシップは、パスカル・ヴェアラインのトップは変わらず80点でキープ。2位にジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・ポルシェ)が62点、3位ジャン・エリック・ヴェルニュー(DSペンスキー)が50点。4位アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグホイヤー・ポルシェ)46点、5位ニック・キャシディ(エンビジョン・ジャガー)43点、6位にセバスチャン・ブエミ(エンビジョン・ジャガー)41点と続いた。
ニッサンのサッシャ・フェネストラズは7点で18位、ノーマン・ナトーは11点で14位とまだ低迷している。一方でニッサンパワートレインを使うネオムマクラーレンのレネ・ラストが38点で7位、ジェイク・ヒューズは28点で9位という順だ。
次戦は1ヶ月後の3月25日ブラジル・サンパウロで開催される。ポルシェ、ジャガーの2強にDS勢が加わり、ニッサンにもチャンスが広がってきておりフォーミュラEらしく混戦になってきた。次戦は言うまでもなくZFパワートレイン勢が復帰し、激しいレースが見られるのは間違いない。