フォーミュラEシーズン7 第10戦 第11戦ニューヨーク もつれるチャンピオン争い

フォーミュラEシーズン7の第10戦、11戦がアメリカ・ニューヨークで7月10日(土)、11日(日)に行なわれ、第10戦をBMW iアンドレッティ モータースポーツのマキシミリアン・ギュンターが、そして第11戦をジャガー レーシングのサム・バードが優勝。11戦中10人の優勝ドライバーが出る大混戦となっている。

レース終了直前に3位からトップへジャンプアップし優勝を勝ち取ったBMWチーム

ニューヨークはマンハッタン島の向かい側にある倉庫街で行なわれ、普段はトレーラーが多く行き交うコンテナヤード。それだけに路面コンディションは悪く、バンピーが場所もある。そうした場所に全長2.4kmの特設コースを設置し、2年ぶりの開催をした。

予選アタックでは、前日の雨がまだ水たまりでところどころ残るようなコンディション。当然最初に走るグループ1のドライバーには不利な状況だ。だが、そのグループ1シリーズポイントの上位6台が走るため、結果的にはいつものようにリバースグリッドに似た結果になり、それがフォーミュラEの面白さを演出する結果にもなっている。

第9戦終了時点でポイントリーダーのモルタラ(ロキット ヴェンチューリ:メルセデスのPU)は、予選で250kWの出力で走るところ、マシントラブルから200kWしか出ず、最下位に沈んだ。注目される日産勢だが、これまでのところあまり好成績を出せていない。とくにエースのセバスチャン・ブエミが不調で、逆にオリバーローランドのほうがポイント上位にいる。

だが、今回はブエミが実力を発揮しグループ予選トップタイムを叩き出した。また、今季からFEに参戦する日本でも馴染み深いニック・キャシディ(エンビジョン ヴァージン・レーシング:アウディのPU)も速さが光っている。

グループ予選の結果は1位がブエミで、以下、ジャン・エリック・ヴェルニュー(DSテチータ)、パスカル・ヴェアライン(タグホイヤー ポルシェフォーミュラ)、キャシディ、ギュンター、アレックス・リン(マヒンドラレーシング:ZFのPU)という順。

このメンバーでスーパーポールを争い、ポールポジションはなんと1分09秒338を叩き出したキャシディが獲得した。2番手にヴェルニュー、以下リン、ギュンター、ブエミ、ヴェアラインという順になった。

今季から参戦したニック・キャシディがスーパーポールを獲得。台風の目だ

ちなみに前戦までのドライバーズランキングを見るとトップのモルタラは最下位24番手からのスタート。2位のロビン・フラインス(エンビジョン ヴァージン・レーシング)は11番手、3位のアントニオ・ダ・コスタ(DSテチータ)は13番手、4位レネ・ラスト(アウディスポーツ アプトシェフラー)が23番手、5位ミッチ・エバンス(ジャガー・レーシング)16番手、6位ニック・デ・フリース(メルセデスEQフォーミュラチーム)は18番手スタートで、いずれも下位からのスタートになった。

決勝はドライで気温も高くバッテリーとタイヤマネージメントが重要となるレースで始まった。スタートはポールからのキャシディがホールショットを決め、リンが仕掛けるも1コーナーでオーバーランをし5番手まで下がる。デ・フリースは接触がありフェンダーを脱落しての走行、日産のローランドは9番手に付けてオープニングラップを終了した。

このレースではアタックモードを早めに使うドライバーが多く、スタートから8分を経過した時点から続々とアクティベートゾーンへとマシンを飛び込ませる。順位も激しく入れ替わり、上位7以下は混戦模様になる。

そして上位陣もアタックモードを使いはじめ、キャシディは2番手ヴェルニューから1周遅れでアクティベートゾーンへ入り首位を守った。この混乱の中、ローランドは5位まで順位をあげ、またディ・グラッシも4位に、20番手スタートのバードも10位に浮上するなど有力ドライバーが徐々に上位へ浮上をしている。

アクティベートゾーンに入ると順位が確実に下る。またスピンしてしまうマシンもある混戦

後半になるとブエミの調子が落ちどんどん後退し6位まで下がる。トップはキャシディ、ヴェルニュー、ギュンター、ディ・グラッシが団子状態で展開。その下の集団にフラインス、ローランド、ブエミ、ロッテラーがいる。

残り7分付近で2位のベルニュ−がトップのキャシディに襲いかかる。インを開けたキャシディはヴェルニューに刺されるも無理なブレーキングから立ち上がりが遅れ、3番手だったギュンターがトップを奪うことになった。

決勝の結果はギュンターが優勝し、2位ベルニュ−、3位ディ・グラッシ、以下キャシディ、フラインス、ブエミ、ローランド、ロッテラー、バード、ラストという順位になった。11戦消化して10人目の優勝者となったレースだった。

第10戦を制したのはマキシミリアン・ギュンター(BMW i アンドレッティモータースポーツ)

【第11戦】
第11戦は翌日に同じ場所同じコースで開催。路面状況は前日のレースでラバーが載った状態になり、第10戦よりはコンディションは良くなっている。

予選では2年連続でチャンピオンを獲得してるヴェルニューがマシントラブルで出走できないアクシデントがありノータイム最下位スタートが決定している。そしてグループ2では雨が振り出し大幅にタイムが落ちている。だが、グループ3、4が走行するときはドライに戻るという気まぐれな天候でもあった。

グループ予選では1位バード、2位ヴェアライン、3位エバンス、以下キャシディ、ロッテラー、セッテ・カマラという順で前日とは大幅なメンバーチェンジで、キャシディだけが常上位にいるだけだ。

そしてスーパーポールの結果はバード、エバンス、キャシディ、ヴェアライン、セッテ・カマラ(ドラゴン ペスキーオートスポーツ:米国のベンチャー)、アンドレ・ロッテラー(タグホイヤー ポルシェフォーミュラ)というジャガー・レーシングの2台がフロントローを抑えるという順になった。

ジャガーの2台がフロントローを抑えた

決勝もこの2台がチームプレイの如くバードが逃げる展開。エバンスが後続を抑え気味にし、バードはリードを広げ、アタックモードを使っても順位変動が起きないレベルにまでのセーフティリードを築き上げている。

好調のキャシディは2番手浮上を目指すもエバンスに抑えられる。一方中団から下位グループはいつものように混戦模様になる。そうした中、モルタラがデニスに押し出される不運がありクラッシュしてしまう。ブエミもディ・グラッシにプッシュされスピンといった展開。

上位はバード、エバンス、キャシディ、ダ・コスタ、ヴェアライン、ロッテラーが盤石。ジャガー2台、ポルシェ2台の間にエンビジョンとDSテチータが入るという展開だ。

残り1分あたりで突如エバンスが順位を落としていく。左リヤタイヤのアライメントが狂っており、どこかで接触かウオールにヒットした様子。ジャガーにとってワンツーフィニッシュという絶好のチャンスが逃げていった。が、バードのリードは大きく、フォーミュラEではめったに見ることができない、ポールtoフィニッシュを見事に遂げた。そして今季初めて2勝目をあげるドライバーとなったバードはポイントリーダーへ浮上する。

今季2勝目を上げたサム・バード。今季ジャガー・レーシングも好調

第11戦の結果は、バード、キャシディ、ダ・コスタ、ヴェアライン、ロッテラー、シムス、ディ・グラッシという順で、シリーズポイントでは、トップにバード81点、2位ダ・コスタ76点、同じく76点で3位フラインス、4位モルタラ72点、5位キャシディ70点、6位ヴェルニュー68点、7位ラスト61点、8位エバンス60点、9位も60点でならんでヴェアライン、10位デ・フリース59点という接近したポイントで争っている。

日産はブエミが20点で20位、ローランドは59点で11位という結果だ。一方チームランキングではなんとエンビジョン ヴァージン・レーシングがトップ。アウディのPUを使うサテライトチームで本家アウディを押しのけての首位。もちろんキャシディの活躍が光る。ポイントは146点だ。2番手に2ポイント差の144点で2年連続チャンピオンを獲得してるDSテチータがきちんと追いかけている。そして3位がジャガー・レーシングという順。

開幕直後はメルセデスが好調で、またポルシェのワークス参戦から「いつくるんだ?」という圧力を感じながらのシーズンだが、後半戦に入るとこれまでの経験豊富なチームが自然と上位にいる結果担っている。そして日産は最下位から脱出はしたものの10チーム中9位に低迷している。

次戦は欧州に戻り英国ロンドンで7月24日、25日に第12戦、第13戦が行なわれる。混戦するシリーズチャンピオンはますます接近戦になり、誰もがシリーズチャンピオンになれるチャンスがあると言えるほど予測が難しいシーズン7を楽しみに待ちたい。

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