フォーミュラEシーズン7の第9戦は、前日の第8戦に続いてメキシコ・プエブラで開催された。シーズン折返しとなる第9戦だが、上位12位までのドライバーがシリーズランキングトップになる可能性があるほど、拮抗した争いが続いている。
予選はいつもどおり6台づつの4グループに分かれてタイムアタックを行なうが、グループの振り分けは、その時点でのシリーズランキング順。つまり第1グループがランキングトップ6のドライバーとなる。だが、市街地で開催されることが多いフォーミュラEだと路面のダストやラバーが載っていないことなどから、グループ1でいいタイムを出すことが難しい。そのため、必ずしもトップグループが有利ということもなく、多くの場合、リバースグリッドのようなスターティンググリッドになることもある。
今回のプエブラはパーマネントサーキットのため、そうした先行グループの有利・不利がないのかと思いきや、路面コンディションは悪く、市街地と同様にグループ1はコースのクリーンアップ係の様相を呈していた。
その予選結果は前日トップチェッカーを受けながら技術規定違反で失格となったパスカル・ヴェアライン(タグホイヤーポルシェ フォーミュラ)が5番手のタイムを叩きだし、スーパーポールへ進出。そして、2番手には日産e.DAMSのオリバー・ローランドが入った。だが、ローランドも前日の決勝ではマシントラブルに泣かされ、しかも規定違反があったという踏んだり蹴ったりの第8戦だった。
スーパーポール進出は、好調のジェイク・デニス(BMW i アンドレッティモータースポーツ)が予選トップを奪うものの、ブレーキングでミスをし6番手に後退。変わって、日産のローランドが前日の鬱憤を晴らすかのようにポールポジションを獲得した。ローランドは通算4度目で、シーズン6のベルリン以来の今季初ポールを獲得した。第6戦から新パワーユニットを搭載する日産には期待がかかる。一方、日産のエース、セバスチャン・ブエミは不調続きで、この第9戦も精彩を欠き7番手止まりだった。
その結果、スーパーポールはローランド、パスカル・ヴェアライン、アレックス・リン、エドアルド・モルタラ、ジャン・エリック・ヴェルニュー、ジェイク・デニスという順で、マシンは日産、DSテチータ、マヒンドラ(ZF)、ヴェンチューリ(メルセデス)、DSテチータ、BMWという結果。前日ワンツーフィニッシュを決めたアウディは、13位にディ・グラッシ、そしてノータイムとなったレネ・ラストは最下位24番手スタートとなった。
【決勝】
前日の予選から見ていると、コース特性なのだろう、タイヤがロックして白煙を上げるシーンをよく見かける。タイヤの接地荷重が抜けやすい場所があるようで、路面の傾斜が複雑で難しいサーキットなのがよくわかる。
そうしたコースでの2日目、第9戦のホールショットはポールポジションのローランドが飛び込む。2番手にはモルタラが上がり、予選2位のヴェアラインがやや遅れて3番手で1コーナーをクリアしてく。シリーズポイントリーダーのロビン・フラインス(エンビジョン・ヴァージン・レーシング/アウディのPU)は、22番手で1周目を終えた。
下位グループでは、順位争いが激しく行なわれているものの、いつものレースよりは大人しい展開でガチャガチャしたレースではなく、落ち着いた展開で序盤を経過。しかし、この先、アタックモードを使い始める展開となるので、ふたたび混戦となるのは必至。多少の接触、パーツが吹き飛んでも問題なく走行ができるというのもフォーミュラEの特徴でもある。
早速、トップを走るローランドがアクティベートゾーンへ飛び込み、アタックモードを使う。4番手でコースに復帰し、ストレートでデニスを交わして3位に浮上。5位以下はヴェルニュー、リン、ブエミ、キャシディ、ロッテラーという順。
続いて、モルタラがアタックモードに入り、3番手でコースに戻るとその翌周にローランドとヴェアラインが同時にアタックモードに。ローランドは、2回続けてアタックモードを使う戦略を使ってきた。これがレースにどう左右するのか興味深い。
2回のアタックモード消化が義務付けられているため、各マシンがアクティベートゾーンへ飛び込むたびに順位は激しく入れ替わる。そしてストレートで追い抜くシーンが繰り返され、その間、スピンや接触があちこちで起きている。期待されるブエミもその犠牲者の一人で、サム・バード(ジャガー・レーシング)から、後頭部を殴られたような大打撃となる接触を受け、大きく順位を落とし、7位付近から18番手まで順位を下げていた。
上位マシンが2回のアタックモードを消化した順位は、モルタラ、ローランド、ヴェアライン、キャシディ、ヴェルニューという順。だが、ローランドは単独でサイドウォールに軽く接触し、3位に順位を落としてしまう。
一方、ポイントリーダーのフラインスは21番グリッドからのスタートで、オープニングラップではひとつ順位を落としていたが、残り18分の時点で得点圏内の10位まで順位を挽回している。
だが、荒れたコース路面はタイヤにも大きな負担をかけていたようだ。ベテランドライバーたちですら、単独のミスがあちこちで起きていた。残り10分を切る頃になるとダ・コスタが単独のスピンからのクラッシュをしリタイヤをしている。また2年連続シリーズチャンピオンのヴェルニューまでもが単独のブレーキミスを犯しスピン。トップを追い詰めるヴェアラインですらミスをして追い詰めた獲物を取り逃がしていた。
そして残り1分プラス1周になるとローランドが軽くイン側のフェンスに接触し失速。その隙きにキャシディが3位に浮上した。ファイナルラップはモルタラ、ヴェアライン、キャシディ、ローランドの順でチェッカーを受けた。
だが、ここでヴェアラインはパワーオーバーユースの審議があり、ファン・ブーストを正しく使わなかったという裁定で、5秒プラスされ、結果ポジションを2つ下げ4位となった。そのため、キャシディは2位へ繰り上がり、ローランドが3位となった。
これでチャンピオンシップはエドアルド・モルタラ(ロキットヴェンチューリ/MBのPU)がトップになった。インタビューでは嬉しさが込み上げ涙を浮かべるモルタラがとても印象に残った。
ドライバーシリーズランキング
1位:72点エドアルド・モルタラ(ロキットヴェンチューリ/MBのPU)
2位:62点ロビン・フラインス(エンビジョンヴァージン・レーシング/アウディのPU)
3位:60点アントニオ・ダ・コスタ(DSテチータ)
4位:60点レネ:ラスト(アウディスポーツアプトシェフラー)
5位:60点ミッチ・エバンス(ジャガー・レーシング)
6位:59点ニック・デ・フリース(メルセデスEQフォーミュラチーム)
チームシリーズランキング
1位:113点メルセデスEQフォーミュラチーム
2位:110点DSテチータ
3位:109点ジャガー・レーシング
シリーズランキングでは、注目される日産のオリバー・ローランドは9位に浮上、セバスチャン・ブエミは22位に低迷している。またチームランキングでも10チーム中、日産は10位と最下位だ。
シーズン後半に突入したばかりのフォーミュラEシーズン7、次戦は7月10日、11日にアメリカ・ニューヨーク近郊で開催される。ますます混戦する格闘技レース、フォーミュラEを楽しみにしたい。