フォーミュラEシーズン7  第7戦 モナコ F1コースで開催し最終ラップの劇的ドラマ

フォーミュラEシーズン7の第7戦はモナコの市街地F1コースで開催された。歴史あるF1コースでの開催だけに見慣れている人も多いことだろう。そのコースでは、ヌーベルシケインの形状のみ異なっているが、他は聞き慣れたミラボー・コーナー、カジノ・コーナー、タバコ・コーナーなどのコースが使われた。

優勝したアントニオ・ダ・コスタ。シリーズランキングは4位、チームランキング3位となった

1周3.318kmを45分プラス1周で争われるが、市街地とはいえF1が走行するだけあって、綺麗な路面コンディション。そのほとんどを市街地でレースするフォーミュラEにとってはパーマネントサーキット向けのセットアップに近いかもしれない。

それを証明するかのように、予選では後からアタックするドライバーが有利になる、いつものフォーミュラEとは異なり、グループ1で走行したフラインス、エバンスがそのまま予選1位、2位を獲得している。以下、4グループからギュンター、3グループからダ・コスタ、5位、6位は2グループからのヴェルニューとローランドという順で、このメンバーでスーパーポールが競われた。

そして注目は日産がこのレースからハード、ソフトともに改良した、新世代パワートレーンを投入したことだ。ローランドは見事にスーパーポールに進出したがブエミは13番手に沈んだ。そのブエミは、予選アタック中に前走しているセッテカマラがスピンをし、ブエミはアタックを中断するという不運があった。そのため予選アタックのやり直しとなったが、ブレーキやタイヤに熱を入れた状態を再度やり直すには、難しさもあったのだろう、13位という順位になった。

またローランドにも不運があった。この予選のやり直しがブエミとブロンクイストと2台あり、スケジュール全体がディレイしていた。そのため、予選終了の1分後にスーパーポールが宣言され、最初のスタートになるのが日産・ローランドである。がローランドはマシンから降りていたため、あわててマシンに乗り込みコースインをしたが、ピットクローズに間に合わず、スーパーポールで出したタイムがキャンセルされる不運があった。その結果、6位が確定してしまった。

日産のオリバー・ローランド。このレースから新パワートレーンを投入し6位入賞

スーパーポールではダ・コスタ(DSテチータ)、フラインス(エンビジョン・ヴァージン)、エバンス(ジャガー)、ヴェルニュー(DSテチータ)、ギュンター(BMW)という順で、DSテチータの2台が好調。シリーズをリードするメルセデスEQチームは今回不調で、ヴァンドーンが15位、デ・フリースは23番手に沈んでいる。もっともデ・フリースは予選アタックを失敗するミスを犯していたが、いずれにしても上位には食い込めない状態のようだった。

またフリープラクティスではジャガーレーシングが好調で、前回のバレンシアの不調を取り戻している。バレンシアはパーマネントサーキットでの開催であり、セットアップが決まらないまま決勝を迎え、逆にメルセデスはピタリとハマったという流れがある。

今回のモナコでは真逆のことが起こり、ジャガーがうまくいき、メルセデスが決まらない、という状況で予選を終えた。

F1と同じコースで開催されたフォーミュラEは見応えたっぷりの決勝となった
ヘアピンでシムスがガードレールにヒットし、マシンを乗り越えるアクシデントも

決勝では、アタックモードを使うと2秒程度ロスするコース設定ということで、使い方が明暗を分けそうなレース展開が予想された。そしてオープニングラップのグランドホテル前・ヘアピンでは、中団以降のマシンが密集し、マヒンドラのシムスが行き場を失いガードレールに接触、その上をマシンが乗り越えるとったアクシデントがあったが、大きな混乱とはならずレースは続行した。

モナコはコース幅も狭くポールtoウインとなるレースが多いため、予選順位が重要と言われているが、レース序盤、フラインスがトップのダ・コスタを1コーナーで抜き去りトップに浮上。フォーミュラEは常に、コース幅の狭いコースでレースが開催されているため、抜きどころが少しでもあればズバッと決める潔さも見応えになる。

また、アタックモードもキーになりそうな予感を各ドライバーが予想してなのか、序盤からアクティベートゾーンを通過し、2回のアタックモードを使い切るシーンが多く見られた。

実際、アタックモードになると順位を1〜3番手は降格するが、15分を過ぎたあたりで使っているため、結局リードが広がらない中でのアタックなので、順位は元に戻る、といった展開になった。

コース幅が狭いモナコのコースもフォーミュラEのドライバーには広い?順位の入れ替えは激しい

レース開始20分での順位はフラインス(エンビジョン・ヴァージン)、ダ・コスタ(DSテチータ)、エバンス(ジャガー)、ギュンター(BMW)、ヴェルニュー(DSテチータ)、ローランド(日産)という順で、エバンス以外は2回のアタックモードを消化していた。

一方、ダ・コスタはファンブーストも持っていたため、トンネル内でフラインスを捉えてトップに返り咲く。残り14分、エバンスも2回目のアタックモードをここで使い、フラインスを捉え2位に浮上した。

途中、レネ・ラスト(アウディ)がウォールにヒットし回収に時間がかかっている間、順位はエバンス、ダ・コスタ、フラインス、ギュンター、ローランド、そしてキャッシディ(エンビジョン・ヴァージン)が7位に浮上している。残り6分の段階でアタックモードを残しているのがヴェルニューとジェイク・デニス(BMW)。

ヴェルニューは上手にアタックモードを使い、4位に浮上した。そしてファイナルラップ、エバンスのバッテリー残量が2%でライバルが3%という状況。トンネルを通過するとエバンスのマシンは1%を切る状況で、ダ・コスタがエバンスに襲いかかる。ヌーベルシケインへの飛び込みを限界まで遅らせたダ・コスタは、見事にエバンスを交わしてトップを奪い返した。さらに3位フラインスもエバンスを交わし、順位は入れ替わった。エバンスはバッテリー容量を超えてのオーバーパワー走行は失格となるため、抑えて走行するしかなく3位に甘んじるしかなかった。

最終ラップは激しい闘いになったが、結局ポールポジションだったダ・コスタが優勝し、フラインス、エバンスが表彰台で、以下ヴェルニュー、ギュンター、ローランドというスーパーポールの順位と同じ順位でのゴールになった。しかし、ゴールまでのストーリーは激しく、リザルトからは見えてこない激しい順位争いを繰り広げた見応えたっぷりの戦いだった。

次戦は南米メキシコ・プエブラでの第8戦、9戦が6月19日20日に行なわれる。

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