フォーミュラEのシーズン6が2019年11月から開幕し、現在第5戦までを消化している。全14戦のスケジュールで始まったシーズン6だが、2020年3月21日開催予定の第6戦中国・三亜が新型コロナウイルスの影響で中止となり、パンデミックとなった現在、第7戦のローマから、8戦のパリ、9戦のソウル、10戦のジャカルタまでが延期となった。したがって6月6日のジャカルタまでの約2ヶ月間レースが開催されないことが発表されている。
今回はここで、これまでのレースをダイジェストで振り返ってみよう。
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開幕の第2戦まではすでにお伝えしているので、第3戦チリ・サンチアゴのレースからお伝えすると、シーズン6の開幕から好調なのがBMW勢で、シーズン5の最終戦から数えて、3戦連続ポールポジションのシムスが好調で第2戦はそのシムスが優勝をしている。さらに、第3戦もBMWのマキシミリアン・ギュンターが初優勝を飾った。
日産は今季からシングルモーターの新ユニットとなったためか、やや精彩を欠いているように見える。また今季から参戦のメルセデスEQチームは、驚異の新人ニック・デ・フリースとストフェル・ヴァンドーンとともに速さを見せている。あとはレースでの結果が求められている状況だ。一方の初参戦ポルシェも苦労している。開幕戦でいきなりロッテラーが2位に入ったものの、その後調子は上がらない。もうひとりのニール・ジャニは5戦終了時点でポイント0となっている。
第3戦チリ・サンチアゴの結果は、優勝M・ギュンター/BMW、2位A・ダ・コスタ/DS、3位M・エバンス/ジャガーで、シーズン5とは流れが変わったのか、顔ぶれも変わっている。
第4戦メキシコシティ
第4戦はメキシコシティで開催された。シーズン6の3戦を終えての結果では、シーズン5のチャンピオンJ・ヴェルニューがわずか4ポイント、シリーズ2位のS・ブエミは0ポイントという状況。やはり顔ぶれが入れ替わったのだろうか。また、このメキシコシティのレースは珍しくパーマネントサーキットでのレースだった。そして、このレースではアタックモードを3回使用する義務に変更されている。
通常200kWでのレースがアタックモードで235kWの出力になり、2回までレース中に消化しなければならないルールだが第4戦は3回が使用義務になった。いつもの市街地レースと比較するとコース幅も広いため、よりレースの混戦を演出する狙いがあるのかもしれない。
レースは主催者の狙いどおりなのか、24台出走して完走が16台というサバイバルレースになった。序盤苦戦していたポルシェが実力を出し始め、ロッテラーが2回目のポールポジションを獲得、ポルシェとしては初のポールポジションだ。そして、3位にメルセデスの新人デ・フリースが入る。5位にはようやく日産ブエミが入り、エンビジョンのS・バード、フラインスと続いた。
レースはスタート直後の1コーナーでポールのロッテラーと2位のエバンスが絡み、ロッテラーが押し出されて4位に後退。エバンスはトップを奪取し、そのままゴールした。フォーミュラEのレースでこれほどトップが入れ替わらず、2位に3秒以上の差をつけてのフィニッシュは珍しく、パナソニックジャガーレーシングのエバンスによるワンサイドレースだった。
一方2位以下は混戦で、接触も多くリタイヤも大量に出た。2位以下はエンビジョン、DS、日産、メルセデスが混戦で争い、デ・フリースはブレーキングミスでコースアウトしセーフティバリアに接触してリタイヤ。サム・バードも安定の2位を走行していたが、アタックモードを使用中に、ドライブエラーでクラッシュしリタイヤした。DSはダ・コスタ、ヴェルニューともに速く、予選下位から上位に進出できた。前年度のチャンピオンチームの実力といったところだ。
日産のブエミがバードの脱落で2位を走行するも、マシンの速さが足りないように見えた。アタックモードを使い235kWまで出力が上がっているにもかかわらず、200kWで走行するDSのダ・コスタを引き離すことができず、結果、ダ・コスタに抜かれ3位となった。ローランドも上位に進出することなく、日産のニューマシンに不安が残るレースだった。
レース後のインタビューでブエミは、ダ・コスタを抑え込むためにエネルギーを使ってしまい、上位を狙えなかったとコメントしており、エネルギーマネージメントに少し課題があるのかもしれない。
アタックモードで出力が上がるとブレーキポイントも変わり、マシン特性が変化するという。そうした変化がバードのミスやデ・フリースのドライブミスを誘発しており、ブエミも思い切った走行ができないということにも繋がっているのだろう。
第5戦モロッコ
続く第5戦はモロッコのマラケシュ。ここではコースの一部分がパーマネントのサーキットを利用する変則的なコース。そして、なんと予選では前戦の第4戦でブッチギリの優勝をしたパナソニック ジャガーレーシングのミッチ・エバンスがタイムアタックに間に合わないというピットミスにより「ノータイム」。決勝は最下位スタートという前代未聞のチョンボがあった。
ポールポジションはDSのダ・コスタ、2位に好調BMWのギュンター。このギュンターは22歳で最年少ドライバー。第3戦で初優勝をしている。3位はポルシェのロッテラーで、ようやくポルシェが速さを見せ始めた。4位が驚異の新人メルセデスEQのデ・フリース、5位が同じメルセデスのパワーユニットを使うヴェンチューリのモルタラ、そして6位に日産ブエミという順だった。
決勝では、好調のギュンターとポルシェのロッテラーがどこまで速いかに注目が集まるが、ロッテラーは精細を欠き徐々に後退してしまう。トップ争いはポールのダ・コスタとギュンターが争いレースをリード。
いつも大荒れになり、接触もおおいフォーミュラEだが、今回のレースはクリーンに展開している。とはいえ、毎周どこかで誰かとの順位入れ替えはあり、また上位でも激しい接戦は繰り広げられているので、見ていて楽しい。
また、今回のレース中にベルセデスのデ・フリースが3位を走行しているにもかかわらず、ドライブスルーペナルティを受ける場面があった。その理由だが、レースコントロールから、デ・フリースのマシンはエネルギー回生量が多すぎる違反があるという理由でペナルティになっている。
こうしたシーンにより、レースコントロールはテレメトリーで全てを監視し、コントロール下においてレースをマネージメントしていることがわかった。
レースの結果は、DSのダ・コスタが優勝し、2位BMWギュンター、3位DSのヴェルニューが入った。ここにきてようやくシーズン5のチャンピオンとチームが調子を上げてきているようだ。そして4位に日産ブエミが入った。また最下位スタートのミッチ・エバンスがなんと6位に入賞している。
こうしてみると、シーズン6のパナソニック ジャガー レーシングのマシンは好調で、DS テチータも好調になってきた。また、BMWの躍進も注目される。
第5戦を終えドライバーズランキングを確認すると、ポイントリーダーはDSのダ・コスタが67点、2位にジャガーのエバンス56点、3位、BMWシムス48点、4位BMWギュンター44、5位アウディのディ・グラッシ、6位メルセデス・ヴァンドーンという順。日産勢ではローランドが30点で9位、ブエミは27点で11位といったところだ。
一方のチームランキングで1位は、シーズン5チャンピオンチームのDS テチータが気づけば98点で首位にいる。2位BMWアンドレッティ モータースポーツ90点、3位パナソニック ジャガー レーシング66点、4位日産e.Dams57点、5位メルセデス-ベンツEQ56点、6位アウディ スポーツ アプト シェフラー46点、7位エンビジョン ヴァージン レーシング39点、8位ロキット ヴェンチューリ レーシング34点、9位TAGホイヤーポルシェ25点、10位マヒンドラ レーシング17点、11位GEOX ドラゴン2点、そして最下位は中国のNIO333の0点となっている。
第6戦以降がCOVID-19の感染拡大の影響があり、再開時期は不安定なままだが、好、不調のチームがある中、この期間で修正してくることが予想できる。とくに、日産は、速さが今一つであり、エネルギーマネージメントでも問題を抱えているようなので、後半の巻き返しに期待したい。