【興奮】フォーミュラEシーズン6  今、最も激しい自動車レース

2019年11月に開幕したフォーミュラEのシーズン6。開幕戦はサウジアラビアのディルイーヤで2連戦が行なわれ、今季も激しいレースがスタートした。そして今週2020年1月18日は場所を南米チリに移して第3戦が行なわれる。

シーズン6はさらに激しい順位争いが繰り広げられ、今最も興奮する自動車レースだ

興奮の仕掛け

まずは、自動車メーカーが直接参戦していることから、世界中が注目しているレースだということがある。ドイツはほぼ全社で、今季からポルシェとメルセデス・ベンツが加わった。そしてアウディ、BMWが参戦しており、他にジャガー、日産、マヒンドラ(インド)、ニオ(中国)で、ドライバーも世界のトップドライバーが顔を揃えているのだ。

そしてレギュレーションの変更などで、エンターテイメントを重視したレースになっているということも大きい。レースは市街地で行なわれ予選、決勝が1Dayで終わるスピード。また開発の競争領域が限定されているため接近戦が多いといったことが挙げられる。

そのルール変更についてだが、今季も混戦に一役買った変更がある。それは、これまでにも使われていたアタックモードが今季から225kWから235kWまで出力アップするように変更され、4分間パワーアップした状態で走行できるようになった。これが絶妙な効果を生み出し、レースの混戦を引き出す引き金になっていて面白い。

パワーアップできる権利は、決められたアクティベートゾーンを通過しないとパワーアップしないが、そのゾーンがレーシング走行ラインから外れた場所に設置される。そのため、接近戦の状態でパワーを取得しに向かうと必ず順位を下げてしまうが、新しいアタックモードは低速からの立ち上がりやストレートで抜き返すことも可能になった。

そのため、開幕2連戦を見る限りレース中盤から最終ラップまで、全車が入り乱れて順位を入れ替えるシーンが随所で見られるようになった。見るものを楽しませるエンターテイメント性の熟成に力を入れているのがわかる。

開幕からの2連戦はサウジアラビアで行なわれた。今週は南米チリに舞台を移す

予選方式

予選はこれまで同様250kWが最大出力で、レースは200kWで戦う。その新アタックモードはレース中2回を消化する義務がある。つまり235kWで走れるチャンスは2回、4分×2の間だけ235kWになる。そして決勝レースは、45分プラス1周で争われる。

レースが距離ではなく時間としているのは、エネルギーマネージメントがポイントになるレースであり、バッテリーをどう使っていくのかというエンジニアレースの側面もあるからだ。だから、距離が決まってしまうとバッテリーの使い方の解が計算されてしまい、全チーム同じバッテリーを使っているため、レースは成立しなくなる。

そのためレースは時間制にし、常にトップを競わせバッテリーの消耗具合を見ながらのレースをさせる。チェッカーの時にバッテリー残量ゼロが理想というわけだ。ちなみに、開幕戦で優勝したサム・バードのマシンは残量0.8%で、完璧なマネージメントだった。

さらにファン投票により得られる「ファンブースト」は人気上位5人のドライバーが得られる権利で、250kWが5秒間だけ使えるブーストだ。

また予選は前レースの順位の上位から4グループに分けて6台ずつで予選を走る。そしてグループトップになると新たにポイント1が今季から付与されることになった。

さらにレースは市街地であることから、コースコンディションがダスティなケースが多く、前回優勝したドライバーがタイムを伸ばせないという現象が毎レース起こっている。これは今季も変更なく従来と同様の仕組みで行なわれている。予選はグループ1から順番にグループ4まで行なわれるが最初に走るトップグループが最もタイムを出しにくい条件で予選を走る。

だから開幕戦でもグループ1(前年最終戦の上位6台)のドライバーの多くが予選下位に沈み、決勝はリバースグリッド的な要素も含んでのレースになる。これにより一層順位変動も多く、またフルコンタクトがペナルティになるケースも少ないため、軽い接触も頻繁に起こしながらの順位争いを繰り広げている。

驚異の新人

今季から参戦したのが「メルセデス-ベンツEQ」と「タグホイヤー ポルシェ」がワークス参戦し、ドイツメーカーは全メーカー参戦と言っていいだろう。もちろんフォルクスワーゲンはアウディとポルシェがグループ企業なのは言うまでもない。さらにBMW、ジャガーがすでに参戦しており、中国からはニオ、インドからマヒンドラ 、そして日本から日産が参戦し、12チーム24台が12ヵ国14レースでチャンピオンシップを争う。

驚異の新人がメルセデスからデビュー。ニック・デ・フリースがサム・バードを抑えるシーンも

注目はメルセデスの新人ニック・デ・フリースだ。2019年は欧州F2シリーズに参戦し、2戦を残してシリーズチャンピオンを獲得し、ぶっちぎりの速さと安定性を見せた逸材。そしてF-1を選択せずFEを選択したオランダ人の24歳は、メルセデスのワークスとしてストフェル・ヴァンドーンとともに戦う。

Nyck de vriesニック デ フリーズ メルセデスベンツEQシルバーアローの新人
Stoffel Vandoorneストフェル ヴァンドーンは咋季は同じメルセデスだがHWAからのエントリー。今季はメルセデスベンツEQチーム

そのデ・フリースは、開幕戦の予選ではグループ予選を通過し、上位6人で争うスーパーポールへ進出。あわやデビューレースでポールポジションか?という驚異のスピードを見せた。FEマシンは通常のレースカーとかは異なる操作があるため、ドライビングも慣れが必要と言われている。だがその対応力の高さも見せていたのだ。ちなみに、デ・フリースは今季のトヨタ・ガズーレンシングが戦うWECで、TS050のテストに参加もしていた。

一方、日産はシーズン5で使用していたツインモーター式のパワートレーンがレギュレーションで禁止されたため、今季は新規のパワートレーンで戦うことになる。シーズン5のドライバーランキングを2位で終えたブエミは開幕戦、マシントラブルでリタイヤしている。そしてオリバー・ローランドは4位に入る活躍を見せ、日産のシリーズチャンピオンには期待がかかる。

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