【じわり日産】第10戦フォーミュラE ドイツ・ベルリンから終盤を占う

フォーミュラEシーズン5 2018/19

2019年5月25日に行なわれた第10戦ドイツ・ベルリンではアウディスポーツ・アプトシェフラーのルーカス・ディ・グラッシ が優勝した。これまでにない広いコースレイアウトで、1930年代の空港跡地を利用したコースは、幅があるためラインどりが複数取れ、結果いつもどおりフルコンタクトの多い決勝だった。

第10戦ドイツ・ベルリンで、ルーカス・ディグラッシが今季2勝目
第10戦ドイツ・ベルリンで、ルーカス・ディ・グラッシが今季2勝目

復帰のアレックス・リンが活躍した予選

フォーミュラEの予選は、ポイントランキングの上位からグループ分けをし、全22台のマシンを4グループにする。グループ1はその時のランキング上位5台が最初のタイムアタックになるのだが、これがいろんな問題を引き起こしている。

フォーミュラEの特徴のひとつに「市街地」で行なうという要件があり、この市街地だとホコリやゴミが残りとてもダスティな状態でグループ1が走行しなけらばならない。そのため、予選上位6台による「スーパーポール」というポールポジションを決めるセッションに、グループ1のドライバーが進出しにくいということが毎度起きているのだ。つまり、予選は後で走るほうが、ゴミは綺麗になり、埃はなくなってグリップがあがるということになる。だから後半のグループほど有利ということが起きているのだ。このベルリンも例外ではなかった。

ドライバーからも不満は出てきているというが、観客としては、逆にリバースグリッドに似たような効果もあり、速いドライバーが後方から追い上げるというシーンも多く見られるというエンターテイメント性があるのも事実だ。

スーパーポールに進出した6名。左から)アレックス・リン、ゲイリー・パフェット、ストフェル・ヴァンドーン、セバスチャン・ブエミ、ルーカス・ディ・グラッシ、アレキサンダー・シムス
スーパーポールに進出した6名。左から)アレックス・リン、ゲイリー・パフェット、ストフェル・ヴァンドーン、セバスチャン・ブエミ、ルーカス・ディ・グラッシ、アレキサンダー・シムス

その予選では、アレックス・リンがいい仕事をして見せた。リンは英国人ドライバーの25歳で、これまでのネルソン・ピケJrに変わっての出場。パナソニック・ジャガーレーシングは、今季あまりいいレースができておらず、ミッチー・エバンスが第7戦で優勝するも、ピケJrは1ポイントしか稼げていなかった。そのためチームランキングもエバンス一人でポイントを稼ぐ状況だった。

そして今回のリンがスーパーポールへ進出という、エバンスを上回る速さを見せ、決勝へ期待がかかった。

Mr.フォーミュラEのセバスチャン・ブエミ

予選では度々速さを見せる日産が、このベルリンでも速く、ブエミがスーパーポールに進出し、見事今季初のポールポジションを獲得した。日産は今季4回目のポールポジションを獲得したことになる。

ブエミもようやく今季初表彰台
ブエミもようやく今季初表彰台

日産はシーズン当初から予選での速さを見せているものの、エネルギーマネージメントの失敗や、レーシングアクシデントなど不運もあり、まだ優勝はない。しかし、参戦初年度ということを考えれば好成績と言える。

終盤にきて日産がジワリと4位へ浮上してきた
終盤にきて日産がジワリと4位へ浮上してきた

その日産はやはり、前回お伝えしたように、デュアルモーターであることがわかった。欧州日産によれば、「開発をしていることは間違いないが、それ以上のことは言えない」という回答があり、どんなタイプの2モーターなのか不明だ。前後モーターはレギュレーションとしておそらくNGとなるだろうから、リヤの左右に搭載していると考えるのが妥当だ。左右の出力差によって旋回速度を上げるようなトライをしているのかもしれない。しかしながら、来季のシーズン6ではシングルモーターがレギュレーションの条件に加わる噂もあり、日産のデュアルモーターは今季限りとなってしまい残念だ。そのためにもぜひ、シリーズチャンピオンを取っておきたい。

決勝

決勝レースはこれまでの市街地とは異なり、いわゆるサーキットレースを見ている感じに似ている。クリーンなスタートが切られ、抜きつ抜かれつが繰り広げられるのはいつものフォーミュラEと同じだ。ただいつもより、大きなアクシデントはなくフルコーションイエローも1回だけという少なさだった。

レース前注目していたのは、シリーズランキングがそろそろ気になるタイミングで、これまでランキング2位のロッテラーと3位のフラインスが揃って最後尾の22番、23番グリッドからのスタートというレースだったことだ。結果的にロッテラーはバッテリートラブルで途中リタイヤしている。フラインスも13位ゴールはしているものの、ノーポイントとなってしまった。

ディ・グラッシが今季2勝目。シェフラーの地元で大歓声を浴びた
ディ・グラッシが今季2勝目。シェフラーの地元で大歓声を浴びた

レースはディ・グラッシが今季2勝目をあげ、ポールからのスタートだったブエミは2位、今季初表彰台だ。そして3位がヴェルニューで、奇しくもシーズン3のシリーズチャンピオンのディグラッシが優勝 、シーズン2のシリーズチャンピオンのブエミが2位、そしてシーズン4のシリーズチャンピオンのヴェルニューが3位に入るという全員がシリーズチャンピオンを獲得したドライバーによる表彰台独占という結果になった。

ドイツラウンドは、優勝がディ・グラッシ、2位ブエミ、3位ヴェルニュー
ドイツラウンドは、優勝がディ・グラッシ、2位ブエミ、3位ヴェルニュー

シーズンも終盤になると、やはりポイント獲得のうまい選手が表彰台を占める結果になった。残すところあと3戦。6月22日のスイス・ベルンを終えると、あとは最終戦2戦をニューヨークで2日間の連戦で決めるスケジュールだ。

現在のシリーズランキングは、1位は変わらずヴェルニューで102点、2位ディ・グラッシ96点、3位ロッテラー86点、4位ダ・コスタ82点、5位フラインス81点、6位エバンス69点となっている。日産のローランドは63点で9位、ブエミは61点で10位となっている。

そしてチームランキングでは、DSテチータが188点でトップ、2位アウディスポーツアプトシェフラーで163点、3位、エンヴィジョン ヴァージン レーシングで137点、そして4位に日産が124点で上がってきている。

まだまだ混戦は続くのは間違いなく、次のスイスでは、特にブエミとモルタラはスイス人で地元。調子の上がってきた日産がここにきて台風の目になりつつある。また、ヴェンチューリの開発をするZFはドイツ企業ではあるが、チューリッヒが目の前という立地条件の場所に本社があり、日産とヴェンチューリが強力な存在になりそうだ。次戦のスイス・ラウンドからも目が離せない。

フォーミュラEシーズン5 2018/19

COTY
ページのトップに戻る