いよいよ、大詰めになってきたフォーミュラEの2018/19シーズン5。チャンピオン争いは熾烈な争いが続いているが、マシンがジェネレーション2に変わった今季、各チームの力が拮抗している。
レースをエンターテイメントという観点からすれば、スーパーGTのように、1メーカー、あるいは1ドライバーが勝ち続けないように、上位入賞するとハンデを与え、意図的に力が拮抗するような仕組みを持たせ、毎レース混戦となるように「演出」していくのはある意味エンターテイメントには不可欠な要素だ。しかし、フォーミュラEではそうした演出は一切なく、ガチのレースを行なった結果、大混戦になっているというのだから面白い。
第6戦 中国・三亜
FEのシーズン5は全13戦で争われ、今週末に第10戦がドイツ・ベルリンで行なわれる。今季から自動車メーカーのワークス参戦が目立ち、次世代車両の開発現場として注目される一方、冒頭のようにエンターテイメントとしても激しさがあり魅力たっぷりのレースだ。
日本からは日産が参戦し、セバスチャン・ブエミとオリーバー・ローランドの2台で参戦。回生ブレーキとの協調制御やエネルギーマネージメントに苦労し、速さがあるものの結果に結びつかない。
第6戦の中国・三亜では、ローランドがついにポールポジションを獲得し、上位6台で争われるスーパーポールにブエミも参戦するなど、マシンの速さ、ドライバーのレベルの高さを見せている。
決勝レースでは、序盤、ローランドがレースをリードし、ブエミも途中ファステストラップを記録するなど順調なレース運びをした。
しかしアクシデントが多いのもフォーミュラEの特徴のひとつでフルコースイエロー(全車50km/h規制)や赤旗中断も珍しくない。この三亜でもこうしたアクシデントと、またアタックモード、ファンブーストといったマシンの性能がアップするスペシャルな要素もあり混戦を極めた。
結果、ローランドは2位表彰台を獲得し、ブエミは8位。優勝はDS テチータのヴェルニュー、3位BMW アンドレッティのダ・コスタが表彰台を獲得した。
ポイントランキング
1位:ダ・コスタ 62点
2位:ダンブロージオ 59点
3位:ヴェルニュー 54点
4位:サム・バード 54点
5位:モルタラ :53点
6位:ディ・グラッシ 52点
12位:ローランド 27点
13位:ブエミ 23点
チームポイント
1位:エンビジョン ヴァージンレーシング 97点
2位:アウディスポーツ アプトシェフラー 96点
3位:DS テチータ95点
4位:マヒンドラ 93点
5位:BMW i アンドレッティモータースポーツ 80点
6位:ヴェンチューリ フォーミュラEチーム 67点
7位:日産e・ダムス 50点
第7戦 イタリア・ローマ
ここまで6戦を消化し、すべて優勝者が異なるというシーズン1以来の混戦でシーズン5が行なわれている。
このローマ戦ではネルソン・ピケJrに変わってアレックス・リン(Alex Lynn 英)がドライバー登録され、またニオのナッセに変わりマキシミリアン・ギュンター(Maximilian Gunther 独)が出走した。
予選はシリーズランキング上位5台がグループ1で、ついでグループ2、そしてグループ3、4は6台ずつにわかれてタイムアタックを行ない、上位6台によるスーパーポールによってポールポジションを決める方式だ。しかし、コースコンディションは市街地コースであるため、常にグループ1の時はダスティでグリップが薄いという状況になっている。
そのため、スーパーポールへはランキング上位ドライバーが進出しにくいという誰もが予測しなかった事態があり、かえってレースの混戦を導き、盛り上がるという結果になっている。
このローマでは「希望」と漢字で書かれたヘルメットをかぶるアンドレ・ロッテラーが初のポールポジションを獲得。カーナンバーも日本で付けていた「36」でDSテチータからエントリーしている。
また日産勢ではローランドが予選11位、ブエミは6位でスーパーポールに進出するも、順位は変わらず6位からのスタートになった。ちなみに、勝者が毎回変わっていることと同様に、ポールポジションも全戦でちがっている。
決勝の天候は雨で、そのためワンスペックのタイヤで戦うフォーミュラEではどうしてもタイヤの内圧を下げて、少しでも接地面積を稼ぎグリップを稼ぐことをしたい、が、レギュレーションで最低内圧が決められており、レース後や予選のたびに確認される。
レース後レギュレーション違反により降格が頻繁に起こるのは、こうしたことが影響しているわけだ。ちなみに香港ラウンドを取材した際インタビューしたミシュランのサージュ・グリサン氏によると最低内圧は1.3ということだ。
また、このレースから赤旗中断の時はレース時間の45分プラス1周の時計を止めることになった。これまでは赤旗中も時計は動いていたため、実質のレース時間が45分取れないケースもあったという。そのための措置として、このレースから計時を止めることになったのだ。
また、このレースでは日産のマシンがデュアルモーターであることが伝えられた。フォーミュラEは共通部分が多く、オリジナルの部分は開発領域としてパワーコントロールユニット(インバーター)、モーター、減速機、サスペンションなどが自由設計になっているが、ツインモーターであることはレギュレーション違反ではないものの、シーズン6からは禁止されるようだ。
そうした情報から、エネルギーマネージメントの難しさや回生ブレーキの協調制御の難しさなど、シーズン当初の、速さはあるものの結果に結びつかないことへの合点がいく情報だ。
レースはロッテラー、エバンスが終始リードし、エバンスがフォーミュラE初優勝を飾った。3位にストフェル・ヴァンドーン、ブエミが5位フィニッシュ、ローランドが6位という結果だった。
ポイントランキング
1位:ダンブロージオ 65点
2位:ダ・コスタ 64点
3位:ロッテラー 62点
4位:エバンス 61点
5位:ディ・グラッシ 58点
6位:ヴェルニュー 55点
チームポイント
1位:DS テチータ 116点
2位:エンビジョン ヴァージンレーシング 109点
3位:マヒンドラ レーシング 102点
4位:アウディスポーツ アプトシェフラー 102点
5位:BMW i アンドレッティモータースポーツ 82点
6位:ヴェンチューリ フォーミュラEチーム 67点
7位:日産e・ダムス 65点
第8戦 フランス・パリ
日産チームはフランスに拠点を置くe・damsが運営母体なので、母国レースとも言えるレースだ。そのパリでローランドが予選トップを獲得し、ブエミも3番手に入った。そしてトップ6で争われるスーパーポールで、ヴェアラインがポールポジション、ローランド2位、ブエミ3位、4位フラインス、5位マッサ、6位ダンブロージオという結果になった。
ところが、予選後のチェックでヴェアラインのタイヤ内圧がレギュレーション違反となり、タイム抹消、最後尾スタートとなり、繰り上げでローランド、ブエミがフロントローを占める結果になったのだ。
しかし、相変わらず、接触は多くマシントラブルも頻繁に起こる。ブエミもマシントラブルが出て、一旦ピットインしている。またローランドはポジションを守れずコースバリヤにぶつかるクラッシュもしている。が、レースへは復帰しその後ファステストラップを刻むなど、相変わらず速さだけは健在だった。
途中ゲリラ豪雨があり、赤旗中断となり、またレース再開後もフルコースイエローになるアクシデントがありレースは大混乱する。最終的にレース残り13秒のタイミングで再びフルコースイエローとなり、トップを守ったオランダ人のフラインスが初優勝している。
この結果8戦終了して8人の勝者が出るという混戦は継続することになった。レースはフラインスが勝ち、2位にロッテラー、3位にダニエル・アプトという順。
ポイントランキング
1位:フラインス 81点
2位:ロッテラー 80点
3位:ダ・コスタ 70点
4位:ディ・グラッシ 70点
5位:ダンブロージオ 62点
6位:エバンス 61点
チームポイント
1位:DS テチータ 142点
2位:エンビジョン ヴァージンレーシング 135点
3位:アウディスポーツ アプトシェフラー 129点
4位:マヒンドラ レーシング 103点
5位:BMW i アンドレッティモータースポーツ 88点
6位:ヴェンチューリ フォーミュラEチーム 69点
7位:日産e・ダムス 68点
第9戦 モナコ
モナコはF-1の開催でも有名な場所で、フォーミュラEは今回で3回目の開催だ。レース会場はF-1で使用する公道と同じだが、距離はその半分程度の1.76kmショートバージョンで行なわれた。しかし、レースを開催することに慣れているせいか、路面コンディションは他のレースのようにダスティだったり、ギャップがあったりといったことはなく、ある意味サーキットレースと似たような状況でレースを迎えることができている。
そのためか、予選でも大きな波乱はなくヴェルニュー、ヴェアライン、マッサ、ブエミ、ローランド、エバンスという結果で、F-1のモナコGPでポールポジションを獲得した経験のあるフェリペ・マッサが上位に顔を出した。マッサはフォーミュラEには今季から出場しているが、これまでのこところ精彩を欠いている。だが、経験値を活かしたレースが期待される。
日産のブエミはフォーミュラEで過去2回ポールポジションを獲得しており、ポーツtoフィニッシュも経験している。そして成長著しいローランドにも期待がかかった。
スーパーポールの結果ではローランド、ヴェルニュー、エバンスまでが9/1000秒差にいる僅差でローランドがポール。しかし、前戦のパリでのペナルティがあり3グリッド降格とされ4番手スタートになった。しかし、9戦中3度のポールポジション、そして2戦連続ポールという成長の著しさがある。
決勝レースでは珍しく? オープニングラップでアクシデントがないクリーンなレースとなり、紙一重のタイム差でありながら、混乱もなく順調にレースが展開された。
モナコは抜きどころの難しい狭いコースではあるものの、他の市街地コースと比較すれば、コース幅も広くアクシデントの起こりにくいコースと言えるだろう。そのためか、残り18分まで一切のイエローコーションもなく、クリーンにレースが展開された。
言い換えると、抜きつ抜かれつが頻繁にあり、多少の接触も物ともせずに前に出るレースをするのがこれまでだっただけに、単調にも思えるレース展開だったのだ。とはいえ小波乱はやはりあったわけで、後半はトップ4台の争いになり、5位以下に8秒以上差を広げたレースもこれまでにはない。
レースは今季2勝目となるヴェルニューが勝ち、2位にローランド、3位マッサという結果だった。ちなみにブエミは5位フィニッシュしている。
ポイントランキング
1位:ヴェルニュー 87点
2位:ロッテラー 86点
3位:フラインス 81点
4位:ダ・コスタ 70点
5位:ディ・グラッシ 70点
6位:エバンス 69点
8位:ローランド 59点
13位:ブエミ 40点
チームポイント
1位:DS テチータ 173点
2位:エンビジョン ヴァージンレーシング 135点
3位:アウディスポーツ アプトシェフラー 129点
4位:マヒンドラ レーシング 116点
5位:日産e・ダムス 99点
6位:BMW i アンドレッティモータースポーツ 88点
レースは残り4戦。今週末のドイツ・ベルリン、6月のスイス・ベルン、そして7月アメリカ・ニューヨークで最終2連戦があり、チャンピオンが決まる。