日本の自動車販売市場は成熟し買い替え需要に依存している、という環境の中でグローバルな視点で見れば、まだまだ大きな市場だ。中国は2015年実績で2500万台という巨大市場で、もちろんナンバー1。次がアメリカで約1750万台という規模だ。日本は500万台規模で、3位となっている。
ただ、日本は景気の影響と消費税アップの影響を受けて、このところ漸減傾向が続いているのも事実だ。クルマは高額な商品のため、景気や税の影響を受けやすいことに加え、若い世代のクルマ離れ、さらに約10年という長期保有の傾向もすっかり定着しているのも低迷の原因になるだろう。
2012年以降で見ると、小型・普通乗用車は2013年から販売台数は縮小傾向に移り、拡大を続けてきた軽自動車も2014年以降は勢いが止まり、そして2015年4月には軽自動車税のアップがあり、そこからは減少に転じている。やはり消費税のアップはクルマの購買意欲に強いブレーキをかけたことは間違いない。
2015年は、小型・普通自動車と軽自動車を合わせた新車の販売は-6.8%となり、東日本大震災のあった2011年以来4年振りに500万台ぎりぎりとなっている。
■トップを快走する新型トヨタ・プリウス
それに対して2016年は8月現在までの販売推移を見る限り微増となっている。クルマ別ランキングで見ると新型プリウスが、これまで首位にいたアクアを抜き去りトップに。1月~6月のデータを見ると月間2万台を販売しており、2015年の月間1万台実績を倍増させている。つまりアクアとポジションを完全に入れ替えたわけだ。
ただ、新型プリウスの勢いもさすがに2016年8月からペースが落ちており、9月以降はどのように推移するか注目されている。
そして3位につけているのがトヨタ・シエンタだ。これも月間販売台数が1万台ペースで、前年比は何と8倍という売れ行きである。旧型モデルのシエンタは1500台/月といった販売ペースで、シエンタという車名も一般的にはなじみが薄いクルマだったが、新型は一転して驚異的な大ヒットとなっている。
ただし、プリウス、アクア、そして新型シエンタは、いずれもトヨタ4チャネル販売体制を採用している車種で、つまりトヨタの重点販売方針の下での販売力を結集した結果ということもできる。
4位につけているのがホンダ・フィット、5位が日産・ノートで、ホンダはヴェゼル(8位)、日産はセレナ(10位)とともに日本国内での重要車種という位置付けになっている。なお、ノートだけはハイブリッドではなく、直噴ミラーサイクル・エンジン+スーパーチャージャーというダウンサイジング・コンセプトのエンジンを搭載しているのが興味深い。というのも、日本市場の販売現場ではハイブリッドというブランド名が付かないと売れ筋にならないという常識が根強いからだ。
また、ヨーロッパ市場では量販車種の主役となるBセグメントのハッチバックは、日本ではアクア以外では4位のフィット、9位のヴィッツ、12位のデミオといったところ。同様に、グローバルで柱となるべきCセグメントのハッチバックはまったく販売上位に顔を出していない点も特異で、こうしたカテゴリー分けの常識は日本では通用していないのが現実だ。
この点、輸入車はゴルフやMINI、メルセデスAクラスなどが上位に入り、国産車とはまったく別の傾向を示しているのがおもしろい。
日本車は、年間5万台以上の販売台数でなければ採算は取れないとされている。つまり月間4000台以上の販売が必須だ。ところが現在は純粋に国内市場だけで成立しているのは、軽自動車、ミニバンなど限られており、その他のクルマは輸出、あるいは現地生産化されている。その意味で、日本市場にける販売ランキングだけではそのクルマの本当の商品力は分かりづらくなっていることも抑えておきたい。