実情を暴露!メディア向けニューモデル試乗会 第2弾

雑誌に載らない話vol244
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新型車の試乗は、かつては各メディごとに借り出して行なっていたが、自動車関連メディアの増大に対応して、1980年頃から自動車メーカーによる「新型車の試乗会」という形式に変化したことは、前回掲載している。一般的にはあまり知られていない自動車メーカー主催のニューモデル試乗会の実情第2弾だ。

■専門媒体中心の試乗会

日本の自動車メーカー、インポートカーの試乗会に招待される人たちとはどんな顔ぶれなのか。まずは自動車雑誌、自動車WEBといった自動車関連メディアだ。新型車の発表会には自動車関連メディだけではなく全国紙、経済誌、テレビ局、経済アナリスト、業界新聞なども招待され、実に多彩な顔ぶれが揃うが、試乗会の参加者はぐっと絞られ、新聞記者や経済誌の記者が加わるのは例外的なのだ。

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各メディア、ジャーナリストごとにテストカーの貸し出し時間枠に合わせて申し込む

では、試乗会に参加する自動車関連メディアとは、具体的に言うと編集部員、カメラマン、そして試乗レポートの執筆を担当するモータージャーナリストが1セットになっている。試乗レポートは、かつての自動車専門誌ではベテラン編集部員が担当することは珍しくなかったが、現在では編集部員に試乗レポートを書くスキルは求められず、そうした特殊な分野はフリーのモータージャーナリストが請け負うことがほとんどだ。

そのモータージャーナリスト達は、自動車メディアから原稿料、いわゆるギャラを得るわけだが、実は試乗会にはそうしたメディアの仕事を請け負う人だけではなく、その他のフリーのジャーナリストも多数参加する。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)のメンバーで、メディアからの試乗レポートなどの仕事の受託を受けていない人々も参加している。

一方で、自動車メーカーやインポーターが新型車の試乗会を開催する目的は、メディアにニューモデルをより多く露出させたい、その新型車の魅力や実力をより多くの人々に伝えて欲しいということだ。そういう意味で、自動車関連メディア、そうしたメディアに影響力のあるフリーのモータージャーナリストを試乗会に招待するわけだ。

よく巷のネットなどで、自動車メーカー、インポーターとモータージャーナリストとの間で、お金や接待にまつわる噂が定着しているが、その実態はどうか?

メディアから試乗レポートなどの仕事を受託したジャーナリストは当然メディアからギャラを受け取るが、残念ながら今ではフリーの状態で試乗会に参加するジャーナリストは、ノーギャラだ。バブル期までは、そうしたジャーナリストには「お車代」と称して交通費が支払われることがあったが、バルブの崩壊とともにこうした習慣は霧散している。

■特異なポジション

ただ、モータージャーナリストが他の分野のフリージャーナリストや評論家と、かなり違う部分はクルマを運転しなければ始まらないということだろう。その一方で、単に新型車を運転体験する、その運転した感想を書くだけなら、恐らくクルマを所有した経験のある人であれば誰でもモータージャーナリストになれるともいえる。

実際WEBの世界では、クルマ好きが新型車を見て、運転して、ブログに試乗レポートとしてアップロードしている例は多い。もちろんこの場合は、販売店での試乗で、ほとんどは販売店の周囲を試乗してのコンテンツだが、一般のユーザー視点の内容としてそれなりの人気を得ているようだ。

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試乗レポートは単なる感想記事でも成立しなくはないが、やはりプロのレベルに求められるのはそういうものではない。自動車メーカーの試乗会でも、試乗会を直接担当する広報・PR部はともかく、背後に控えている開発エンジニアはその新型車の評価を求めていることも少なくない。もちろん、そうしたことを全然求められないケースもあるのだが・・・。

自動車メーカーがクルマを開発する過程では社内の、またはアウトソーシングした社外のテストドライバーが、開発のステップに合わせて長時間のテスト走行を行ない、熟成を進めるが、このテストドライバーの役割は、その時点でのクルマの評価であり、最終的な仕上がり評価を行なうことだ。そのいわば社内の評価と、外部のモータージャーナリストの評価が整合するのかどうか、ということは自動車メーカーの開発担当エンジニアとっては気になる、というのはよく理解できる。

もちろん、テストドライバーとしてのトレーニング経験、評価の経験、熟練度は自動車メーカーに所属するテストドライバーの方がはるかに上であることは言うまでもない。個別ユニットの評価は若手が担当することもあるが、総合評価はS級(社内での運転技術ランク。通常はS、A、B、Cといったクラス分けや社内ライセンスが発行される)のベテラン・テストドライバーが担当している。

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彼らは開発過程で、操縦安定性の項目であれば0.1kg/mmのバネの違い、ダンパーが2~3mmストロークする時の違いを正確に指摘できるだけの訓練や経験を積んでいるのだ。だからモータージャーナリストに求められるのは、そういうことよりクルマとしての価値観や、同じクラスの中でのポジショニング、商品性、商品訴求力といった点での商品企画としての評価だ。

しかし、そうはいっても、その背景には、試乗中の冷静な観察力や、絶対的な評価基準、つまり、抽象的な概念ではなく、絶対的なモノサシのことで、例えば世の中のブレーキ性能の絶対性能での頂点はポルシェ911、フェラーリといったレベルを想定し、その頂点の性能に対して何%といった評価・判断を行なうことが必要で、交通環境の中での適合力が求められるから、相当なスキルや経験が必要であることは確かだ。

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そのためにはモータージャーナリストは、試乗経験はもちろん、クルマに関する様々な領域の情報や知識を常に探索すると同時に、絶対評価能力や、冷静な観察力を保っていなければならない。分かりやすくいえば、ある新型スポーツカーがデビューし、試乗したとして、興奮、感激していたのでは一般のドライバーと同じレベルであり、感激の感想試乗レポートは書けたとしても評価としてはほとんど価値はない。

もちろんモータージャーナリストには特別の資格があるわけではないので、すべての人がこうした能力、スキルを持っているわけではなく、むしろ少数というのが実情かも知れない。

だから、高いスキルや能力を持っていると認められたモータージャーナリストは、特別に秘密裏に招待されて開発中のクルマに試乗し、意見交換を行なうといった例は日本だけでなく、海外の自動車メーカーでも行なわれている。いうまでもなく、こういうケースではメーカー側からギャランティが支払われる。

自動車メーカーのテストコースでの試乗
自動車メーカーのテストコースでの試乗

■速ければいいってもんじゃない

こうしたケースでは、実はもう一つ別の能力も求められる。自動車メーカーの社内で行なわれるこの種の開発車の試乗では自動車メーカーの開発担当エンジニアが多数参加し、試乗後には意見交換が行なわれるので、エンジニアの言語が理解できるかどうかもポイントになる。

つまり用語や単語、意味することが理解できないと意見交換が成立しないわけだ。ジャーナリストがマニアックな感想を語るだけではダメなのである。

いずれにしても試乗会という限られた時間枠の中で、きっちりクルマを把握し、それなりの評価ができるかどうかがモータージャーナリストに問われており、運転さえできれば誰にでもできるというわけではないのである。

COTY
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