BYDは2025年1月24日、今後の事業計画を発表し、乗用車ではEVのSUVクーペ「シーライオン7」を4月に発売し、2025年内にはPHEVモデルも日本導入すると明らかにした。
今回の事業戦略発表は、BYDジャパンの社長兼BYDアジア太平洋地域の自動車販売責任者の劉学亮氏から、グローバルでのBYDの躍進、日本における事業の取り組み全般を紹介し、BYDジャパン・商用車部門担当の石井澄人副社長が、年内に新型EVバス「J7」の導入を発表した。
そして乗用車部門であるBYDオートの東福寺厚樹社長が新たに導入するEVモデルとPHEVの日本導入を説明した。
BYDのグローバルでの成長と日本市場
BYDグループは、ITエレクトロニクス、バッテリーなど新エネルギーの開発、製造、販売、EV/PHEVの開発、製造、販売、都市モビリティ事業などを展開しており、現在ではグループ全体で世界100万人を超える従業員を擁し、6大陸・100の国と地域で事業を展開するまでに成長している。
乗用車部門では2024年にEV/PHEVは427万台を販売し、前年比41.26%増加。EV/PHEVでは3年連続で世界一となっている。BYDは1995年にバッテリーメーカーとして創業し、2003年に自動車生産にも参入。自動車メーカーとしてはわずか22年の歴史しかないのだ。
また、BYDジャパンは20年前に民生用バッテリー販売事業を開始し、2025年に20周年を迎える。また、自動車事業では、最初にEVバスを日本に導入して10周年を迎えている。そして2022年にEV乗用車部門のBYDオート・ジャパンをスタートさせている。
これに伴い、現時点で全国59ヶ所の販売拠点を展開し、2025年内を目処に100拠点にまで販売網を拡充する計画としている。
そして、今後自動車部門ではEV乗用車のラインアップ拡充、EVバス販売に加え、EVトラックも2026年に導入するなど、着実に事業を拡大させていくとしている。
日本仕様EVバス「J7」とEVトラック導入
BYDの商用車部門ではEVバス、EVトラック、産業用特殊車両を製造、販売をしている。日本市場では2015年に大型EVバスの販売を開始し、すでに10年が経過。現在では、大型路線バス用の「K8」、小型路線バス用「J6」に続いて、日本専用設計の第2弾となる中型路線バス用の「J7」が2025年内に発売される。
この「J7」は、「K8」と同様に専用設計のインホイールモーター式のeアクスルを採用している。全長9000mm、全幅2300mm、全高3205mm、ホイールベース4400mmで、都市型の58名乗り。郊外型は54名乗りだ。駆動用バッテリーはもちろんリン酸鉄型リチウムイオンのブレードバッテリーで、ルーフ上とリヤにバッテリーパックを搭載する低床フルフラット・フロア式だ。
バッテリー容量は192.5kWhで、航続距離は200kmとなっている。またV2L(外部給電)機能も備えている。ちなみに災害時などにV2L機能を使用した場合、スマートフォンの平均的な電池容量の換算で約1万7000台分の充電がまかなえるという。価格は3650万円。
商用車でもEV化はグローバルで加速しており、日本市場のEVトラック部門にも参入することが決定している。
現時点では2026年から順次ラインアップを拡大する計画だ。中国仕様やヨーロッパ仕様は車体が大きいため、おそらくラインナップの中には日本専用設計のEVトラックも加わるはずだ。
そして今後は商用車部門はEVバスとEVトラックの両輪体制でEV化を推進していくことになっている。
PHEVモデル投入
乗用車部門のBYDオートは、「東京オートサロン 2025」で初公開したSUVクーペのEV「シーライオン7」を4月に発売することが決定。
現時点では型式認証を取得中で、今回展示されているのは右ハンドルのプロトタイプ車両である。
中国市場やヨーロッパ市場では「シーライオン7」は、バッテリー容量や装備などで多くのバリエーションが存在しているが、日本市場向けは、バッテリー容量は82.5kWhのみで、後輪駆動モデルとAWDをラインアップしている。
後輪駆動モデルでモーター出力は308ps/380Nm、AWDの場合は前後合計出力は523ps/690Nmで、フラッグシップに相応しいハイパフォーマンスだ。0-100km/h加速は後輪駆動モデルで6.7秒、AWDモデルでは4.5秒の動力性能を発揮する。WLTCモードでの航続距離は、後輪駆動モデルで590km、AWDモデルで540kmが想定されている。
そして、ついに日本市場にもPHEVモデルが導入されることが決定した。今後はEVとPHEVの2タイプを両輪にして販売を加速させることになる。
なお、BYDは世界で初めて量産PHEVを販売したメーカーであり、PHEV技術も毎年アップデートされ、現在では「DM-i」と呼ばれる最新世代になっている。
搭載されるバッテリー容量は17.6~30.7kWhで、PHEV専用の4気筒1.5Lエンジン、または1.5Lターボエンジンと組み合わされる。モーターは2個搭載し、基本はモーター駆動で、高速域のみエンジンが駆動を担当する。
また、PHEVとはいえ、バッテリー駆動システムはEV技術がそのまま採用され、システム効率や減速回生効率が高く、トータルでのエネルギー効率が高いことに加え、主として発電を担当する4気筒1.5Lエンジンの最高熱効率は40%~46%とされ、世界で最も高効率なエンジンが組み合わされているのだ。
つまり他社のPHEVは、エンジン車をベースにPHEVを展開するのに対して、BYDはEVの技術をベースとしているのが特長で、高効率エンジンを組み合わせることで、満タンでの航続距離は2000kmを超えている。様々な点でBYDのPHEVはライバルを凌駕する性能を備えており、大いに注目される。