2回に渡りZEEKRについてお伝えしてきた。2025年冬に国内上陸。EVのプレミアムブランドに位置付けられ、日本にはボルボと同じアーキテクチャーで作られたコンパクトSUV「ZEEKR X」とミニバン「ZEEKR 009」の2モデルが展開する予定。
そしてこれまでの販売台数や工場設備、生産規模などもお伝えし、中国で生産されているクルマだが、多国籍のエンジニアが存在し、ドイツ、日本、北米を超える最先端の技術が投入されており、しかも実現している現実があることをお伝えした。
今回はより具体的な投入技術についてお伝えしたい。
まずは近年注目されているギガキャストだ。アルミ鋳造技術のひとつで、より大型のスケールで鋳造されるため溶接部分など繋ぎ合わせる部分がなく、高い剛性と入力エネルギーのコントロールがしやすいメリットがある。テスラがこの工法で一躍注目されたが、ZEEKRでもすでにギガキャストを導入している。ちなみに日本メーカーでは未導入だ。
SAEプラットフォームと呼ぶ車台のリヤサブフレームがギガキャストで作られている。このSAEプラットフォームはAセグメントからEセグメントサイズまで対応できるEV専用プラットフ241221ォームになっている。このプラットフォームを採用しているモデルが、ZEEKR 001、007、009の3モデル。うち、009のみ国内に導入予定だ。またロータスやSmartにも展開している車台でもある。
このギガキャストは7200トン級で通常800箇所の溶接で作られるものが80箇所に削減できたと説明し、16%の変形剛性、11%の強度アップができたとしている。このSAEに3 in 1のe-Axelを搭載し、フロアにバッテリーを敷き詰めるというのが基本構造で、サイドシルはハニカムではないが、プレートで四角い仕切りを入れた構造としサイドインパクト時に段階的につぶれていく構造にしているという。この構造は世界初だと説明していた。
3 in 1のeAxelはPMモーターと減速機、インバーターで構成され、前後に搭載が可能。サスペンションはエアサスを基本とし、電子制御ダンパーと組み合わせるが、サスペンションシステムは中国のKH社とドイツのVibracousticの2社を採用。車型で使い分けているようだ。
搭載するバッテリーはCATL製を搭載し、800Vを基本とし600kgの重量がある。009の車両重量は2.8トンにもなっている。このバッテリーのほか自社でもバッテリーを生産しているが、いずれも30万台販売してこれまで発火事故は起きていないと安全性もアピールしていた。
ちなみにこのSAEで作られたシューティングブレークの001は、10-80%充電は10分30秒で、0-100km/h加速は4.5秒となっている。また4モーター仕様の「ZEEKR 001FR」Future Roadの0-100km/h加速は2.02秒で1300psのモンスターパワーを持っている。
バッテリーでは、吉利汽車の子会社になるがVReTM(ヴィレイ)社があり、ZEEKRのR&Dがある浙江省杭州寧波の杭州湾基地にある。生産されるバッテリーはLFPと3元系のNMCの両方を生産している。
その内訳として「BE-13型」のLFPはボルボとスマート、ZEEKRへ供給しシェアは42.62%。「BE-13B型」はNMCでボルボへ供給。こちらは13.15%の割合。そして「BP-13C」はPHEV用で吉利汽車グループのPHEVモデルに供給。シェアは3.9%。そして「BP-14型」はNMCの大容量で40.33%を供給しているが、供給先はマル秘となった。おそらくロータスではないだろうか。このVReTM社のバッテリーの特徴は熱の発散性が高く、電流が安定している。したがって寿命も長いとアピールし、もちろん発火事故ゼロも謳っている。これらは、中国以外のマレーシア、フィンランドへも供給しているという。
このVReTM社ではモーターも生産しており、EDAS-1は高出力対応で45万台/年生産し、EDS-2は効率の低い小型タイプでSmartに採用しているタイプ。これが8万台/年という規模感だ。
このVReTM工場も見ることができたが、なんと91%が自動化されており、モジュール生産ラインが確立され、23工程を9人で管理しているのだ。こうした自動化や管理など最先端の設備と言えるだろう。
ADAS系では中国でもレベル2の規制で運用されており、一部市街地でもレベル3のエリアがあるという。そのためZEEKRのモデルでレベル3に対応しているモデルもある。「ZEEKR 7X」と「ZEEKR 007」で、007はレベル4まで対応が可能だという。他のモデルはOTAでいずれもレベル3に対応できるという。
ちなみに7Xとは2024年9月に発表したSUVでボルボとメルセデスベンツのデザイン要素をいれてデザインされたCセグメント+サイズのモデルだ。また007とはソニーホンダがアピールしている「語りかけるクルマ」のグリル部分に文字やイラストが描けるスターゲイツグリルを装備しているBセグメントのハイエンドモデルだ。
これらのラインアップを寧波郊外にある吉利汽車が所有するサーキットで試乗している。中でも脅威的と感じたのが001FRだ。4モーターで1300ps、0-100km/h加速は2.02秒というスペックだけでその凄さを感じることができる。このモデルをサーキットで走らせてみると、もちろん爆発的な加速力はもちろんのことだが、意外にもしなやかで乗りやすいと感じる。
コーナリングもこれまであまり経験しない旋回性を見せ、ノーズはどんどんと入っていく。カーボンブレーキも違和感なく普通に扱うことができ高い制動力を発揮するので、1300psも恐れることなくアクセルを踏みつけることができたのだ。
4モーターはインホイールではなく3 in 1を基本としている。フロントは3 in 1のeAxleを前後にレイアウトし、後輪はパラレルにレイアウトしている。これはスペースの都合と考えられるが、ひとつは6 in 1だと説明している。その詳細は明かされなかったが、3つのモーターは通常の電気の流し方で、4つのモーター制御はその6 in 1に搭載するECUで制御していると想像する。
通常、4つの駆動モーターが完璧にシンクロしなければ、車両は不安定な動きをする。デフでは吸収しきれない動きが生まれ、簡単にスピンモードに入ることになる。だからこれまで日本車では4モーターの試作車はあるものの、断念している状況だ。いっときNSXが4モーターにトライしていたものの、結果的には3モーターに落ち着いている。
1/1000秒の誤差が破滅的な事故につながる可能性があるだけに、この制御技術レベルの高さには驚かされる。さらに、この001FRすでに市販済みであり、公道を諸外国でも走行しているというのだから、ZEEKR SPEEDには驚かされる。