2035年にエンジン車の新車販売禁止へ…欧州議会が承認

ベルギーのブリュッセルで開催されたヨーロッパ議会(EU)は2023年2月14日、ヨーロッパ域内でガソリン車などの内燃エンジンの乗用車、商用バンの新車販売を2035年から事実上禁止する法律を正式に承認した。これは議会での採決により決定されているが、法律として成立するには3月に開催予定の加盟国からなる理事会で合意する必要がある。

自動車の排出ガス・ゼロを目指す法案は2021年から提案されており、一部の自動車メーカーが100%禁止とするのではなく、90%とするようロビー活動を繰り広げていた。今回の議会での採決は賛成339、反対249、棄権24と賛成が上回った。中間目標も定め、乗用車について2030年までにCO2の排出を2021年比で55%減らすよう求めることも確認されている。また商用バンは、2021年年比で2030年までにCO2を50%低減させ、2035年までにゼロにする必要がある。

なお、トラックやバスなど大型車両のCO2排出量については、2030年以降に新たに販売される車両は2019年比で45%削減、2040年以降は90%削減する案で審議が進められている。

乗用車については、新車の生産台数が年間1000〜1万台、または商用車の生産台数が年間1000〜2万2000台の少量生産メーカーは、2035年末までは規制の適用を免除される可能性があり、年間1000台未満の少量生産メーカーは、その後も引き続き免除されることになる。
今回の採決に対して、ドイツ運輸省、イタリアなどが異議を唱えており、ドイツは再生可能燃料を使用する内燃エンジン車は認めるべきとし、イタリアは小型車は除外すべきと主張している。

そのため3月の理事会でどのような結論が出るかは不明だが、2035年からのヨーロッパ地域における内燃エンジンの禁止の方向性は決定的といえる。

排出ガス・ゼロとはつまり内燃エンジン車は禁止され、それと同時にハイブリッド、PHEVも禁止となり、電気自動車か燃料電池車(FCEV)しか許されないことを意味する。トヨタが提唱している水素を燃料とする内燃エンジン車はNOxを排出するため排気ガス・ゼロとは認められない。

現時点で燃料電池車(FCEV)の燃料電池スタック(水素を分解し発電する部分)の大量生産は難しいため、事実上は電気自動車の一択となる。

なおヨーロッパ議会は、自動車だけでなく排出量取引制度を国際航空部門に広げることや、森林のCO2吸収を促進させることなども可決している。

米・中の動向

一方、アメリカではカリフォルニア州が2022年8月に、2035年にガソリンのみで駆動する新車の販売を禁止する規制案を決定しており、州内の新車販売の10%程度を占めるハイブリッド車も2035年以降は販売禁止となる。このカリフォルニア州の法規は他の11州も連動して採用することになっており、アメリカにおいてもPHEV、EV以外は許されなくなる気配が濃厚だ。

また中国では排ガス規制などはヨーロッパと同等の基準を導入しており、現時点で施行が遅れている「国7(2025年に導入予定のユーロ7に相当)」もいずれ導入時期が決定される予定で、同時に新エネルギー車(NEV:EV、PHEV、FCEV))の販売は加速している。

特に新エネルギー車でEVの販売が増大しており、2022年のグローバルでのEV販売台数で見ると、1位がテスラ(131万4330台)、2位がBYD(91万3052台)、3位が上海汽車(67万1725台)、4位がフォルクスワーゲン(57万1067台)、5位は吉利(38万3936台)で、中国勢が急伸している。つまり中国市場でのEVは急激に販売を伸ばしており、中国市場を重視する自動車メーカーは中国にEVを投入せざるをえない状況になっている。

タイムリミットまで13年・・・自動車メーカーの中期戦略が問われている。

ヨーロッパ議会 公式サイト

COTY
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