新型コロナウイルスは自動車産業に史上最悪の状況をもたらした

トヨタは2020年5月12日に2020年3月期の決算を発表し、販売台数は895万8000台(前年同期比−12万7000台)、売上高は29兆9299億円(−2956億円:マイナス1%)、営業利益2兆4428億円(−246億円)、営業利益率8.2%であることを発表した。

新型コロナウイルスの決算への影響

トヨタの決算では、現在の新型コロナウイルスの影響として1月〜3月が影響を受けているが、1月〜2月はほぼ中国のみの影響、3月以降は中国以外でも影響が出始めた時期だが、決算内容からみてその影響は軽微だったといえる。

オンライン決算説明会に出席した豊田章男社長

同じ5月12日に決算を発表したホンダの売上高は25%減、マツダは81%減と大幅に減っている。ホンダは中国の主力工場の武漢工場が停止した影響が極めて大きく、マツダは新型コロナウイルスの影響よりも各地域での売上減少が大きく響いているのが原因だ。

オンライン決算説明会に出席したホンダの八郷隆弘社長

しかし新型コロナウイルスの影響を最も受けていないトヨタの2021年3月期の決算見通しは、営業利益80%減の5000億円。販売台数は22%減少すると見込んでいる。ただ、トヨタの2021年3月期の見通しは、新型コロナウイルスの影響は読み切れないものの、断固として5000億円程度の黒字は確保するという決意表明といえる。

ホンダやマツダは、現状では2021年3月通期の見通しは、前代未聞の状況のため予想出来ないとして発表を見送っている。

多くのメディアは、トヨタの通期見通しの「営業利益80%減」が大きく取り上げられているが、実際には4月以降の世界各国の工場の操業停止、主要都市のロックダウン(都市封鎖)による販売活動のストップにより、自動車メーカーが受けるダメージは測り知れず、より大きなダメージを受けると考えるのだ妥当だろう。

明確に言えることは、自動車産業にとって史上初の危機的な状況を迎えているという事実で、トヨタは最低でも5000億円の営業利益を確保する決意を示しているが、他の自動車メーカーの半数は赤字決算となる可能性が大きい。

そのため、主要な自動車メーカーはすでに銀行などに運転資金用の融資枠確保を依頼するなどの対策を実施している。

日本の販売状況

まず日本での新型コロナウイルスの影響を見てみよう。5月1日に発表された4月の新車販売(登録車、軽自動車、商用車含む)は合計27万台と前年同月比で28.6%減少した。4月は政府の緊急事態宣言、外出自粛などの影響が本格的に出始めたわけで、3月の販売実績(前年同月比9.3%減)よりも一段と落ち込んでいる。

ただ日本の場合、ディーラーは営業時間の短縮などで、海外のロックダウンされた都市のように完全な営業活動停止にまでは至っていない。

4月の販売実績は、登録車が17万2000台で25.5%減。軽自動車は一部メーカーで東南アジアからの部品調達などに支障が出て出荷が滞った影響加わっており、33.5%減の9万8000台と、登録車よりも減少幅が大きくなっている。

日本における新車販売の前年割れは7カ月連続となり、2019年秋の消費増税で需要が低迷していたところに、新型コロナウイルスの影響がさらに加わり、大きなダメージとなってきていることがわかる。

4月の販売でヤリスが初のトップに

ヤリスが販売台数トップ

4月の乗用車の車名別販売台数ランキングでは、トヨタ ヤリスが1万0119台を販売し、初のトップに立っている。2位は前月同様、ホンダ フィットで8977台(前年同月比32.5% 増)。3位は前月6位のトヨタ シエンタで6982台(同0.2% 減)となった。

なお各メーカーとも販売台数は減少しているが、ダイハツだけは前年同月比で+26%と伸びている点は注目してよいだろう。ダイハツはロッキー、トールというAセグメントの2車種が新たな需要を掘り起こしているのだ。

ちなみにトップ10の内、8台をトヨタ車が独占している。トヨタは全チャンネルで全車種を取り扱う体制が5月から正式にスタートするので、トヨタ1強状態は当分継続すると考えられる。

軽自動車の4月の販売は、9万8255台で前年同月比で−33.5%であった。車種別ではホンダ N-BOX、ダイハツ タント、ムーブ、スズキ スペーシアという順位で、ムーヴ以外はスーパーハイトワゴンが上位を独占している。ただし、各車種ともに25%〜30%の減少となっている。

またスーパーハイトワゴンでは最新モデルとなる日産ルークスは11位で、N-BOXの2割ほどというレベルで、デイズとルークスを完全に分離したブランドとした作戦は効果を発揮していない。

ただし、日本でのクルマの販売は完全にロックダウンした諸国に比べ、かなりましだったということができる。

2大市場、中国とアメリカの状況

海外諸国の自動車販売状況は、その国、都市などのロックダウンの状況などにより大きく異なっている。完全なロックダウンが行なわれている都市では、飲食店や公共施設はもちろん、自動車販売店も営業停止となり、クルマを1台も販売できない状態となる。また、ロックダウン以前に販売が成約したクルマも納車できない状態になっているのだ。

一方で、ロックダウンされた都市が多いヨーロッパの中で、スウェーデンは南米のブラジルのように国としてはロックダウンを行なわず、都市ごとに外出自粛などを設定している国もある。

また、中国は新型コロナウイルスの感染が拡大した時点で、いち早く1月に武漢市や湖北省をロックダウンして感染者数を抑え込み、ようやく4月8日に武漢市のロックダウンが解除され、一気に経済活動が開始されている。また中国は、湖北省やその他地域の大都市は経済活動が停止状態であった一方で、その他の地域では大なり小なり経済活動が継続していたという側面もあった。

テスラ上海ギガファクトリーでは生産が再開されたが、カリフォルニア本社の生産再開は未定

中国の3月は武漢市など自動車の一大産業都市でロックダウンが行なわれていた結果、生産台数は前年同月比44.5%減の142.2万台、販売台数は前年同月比43.3%減の143万台というレベルであった。

しかし、中国の4月の生産台数は前年同月比2.3%増の210.2万台となり、販売台数では前年同月比4.4%増の207万台と微増に転じている。このため、中国市場に大きく依存している自動車メーカーは、とりあえず中国ではリカバリーが進むことが予想される。

しかし、2020年通年の中国の新車販売台数は10%減少となることが想定されており、中国政府は自動車業界を支援するため、電気自動車を製造するメーカーに対して、税制優遇措置の2年延長を決めている。

一方、中国と並ぶ巨大市場のアメリカの新型コロナウイルスの影響は甚大だ。アメリカでは4月以降はGM、フォード、FCAは労働組合(全米自動車労組)との協議の結果、ほぼすべての工場での生産が停止し、5月中旬になってようやく、わずかながらの操業が開始されるという状態だ。

アメリカの3大メーカーがそのような状態のため、アメリカにある日本を始め他国の自動車メーカーの工場も、通常の操業に比べ大幅にペースダウンした操業を続けざるを得なくなっている。

アメリカ市場での4月の販売は、乗用車・小型トラックを含め、前年同月比46.6%減の71.1万台で、アメリカ全土の中で通所の営業も行なっている地域もかなりあることがわかる。

ただし、主要都市では感染者が増大しており、さらにレイオフや失業により多数の労働者の収入が減少しているためなど、状況は厳しい。このような状態のため、早くも中古車価格が下落し始めている。経済的に厳しい人々は、今後は中古車の購入に向かい、新型車の販売が上向くにはかなりの時間を要するのではと見られている。

他の諸国の惨状

ヨーロッパでは、新型頃内ウルスの感染が猛威をふるい、多数の死亡者が発生したイタリアは、4月の販売台数は前年同月比97.6%減の4279台であった。またイタリアと同様に感染が拡大したスペインも前年同月比96.5%減の4163台に過ぎなかった。

ロックダウンが行なわれたフランスは前年同月比88.8%減の2.1万台。同じくイギリスも前年同月比97.3%減の4321台となっている。

ドイツも大都市でロックダウンが行なわれたが、4月の販売台数は前年同月比61.1%減の12.1万台と、他の国に比べよく売れたという結果になっている。これは農村部などでの販売が行なわれたことを意味する。

また西ヨーロッパで唯一ロックダウンを行なわなかったスウェーデンの4月の販売は前年同月比37.5%減の1.9万台と他国より減少幅が少ない。

しかし、ヨーロッパの自動車メーカーの工場はスウェーデン以外では約1ヶ月間は完全停止状態となり、販売もかつてないレベルのダウンを記録している。

アジア地域では、インドネシアの4月の販売は前年同月比90.7%減の7871台、東南アジア最大の自動車生産工場があるタイは前年同月比65.0%減の3万台で、こうした市場に依存している三菱自動車などは深刻な影響を受けている。

またタイと同様に多くの自動車生産工場があるインドは、中国を除くアジア地区で最も厳しいロックダウンが3月25日から行なわれており、工場も販売店も全土で閉鎖されている。

そのため4月の販売台数でマルチ スズキ、トヨタはまさかの0台と発表されている。インドにあるその他の自動車メーカーもほぼ同様と考えられている。

このように見ると中国だけはいち早く回復状態にあるが、アメリカ、ヨーロッパ、アジアともに販売は史上空前の低いレベルにある。

アメリカでは、すでに失業者が200万人を超えており、たとえ新型コロナウイルスの感染が今後収束したとしても、購買力の低下により自動車販売には大きな影響が残ることは間違いなさそうだ。

アメリカでは、感染拡大前に生産されたクルマがメーカーや販売店のカープールにあふれており、アメリカの主要港では日本やヨーロッパからの自動車専用船に積載された輸入車の陸揚げが不可能になっている。

このような状況では、例え自動車生産工場の操業が再開されたとしても、在庫車が販売されるまで生産ペースの調整を続けざるをえないことになる。

そのため、今後新型コロナウイルスの感染が各地で収まってきても、生産がフルに行なわれる状態には程遠く、回復には半年を要するのか、あるいはもっと長引くのかはまだ予想することが難しい。


The Mortor Weekly

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