最新の輸入車販売の傾向を探る

日本自動車輸入組合(JAIA)が2019年11月5日に発表した11月の輸入車販売台数(日本メーカーの逆輸入車除く)は、前年同月比5.7%減の2万3753台となった。メルセデス・ベンツは消費税アップの逆風にもかかわらず、新型車の投入が続いたこともあって販売を伸ばした。一方、フォルクスワーゲンやBMWなどは主力モデルの不振、ニューモデルの不足、さらに消費税アップの影響も受けるなど、輸入車はブランドによって明暗が分かれている。

消費税アップの前後を比較する

2019年10月1日から消費税が8%から10%にアップしたが、基本的に高価格の輸入車はどのような影響を受けたのだろうか。

そのため、まず9月の販売をチェックしてみよう。9月の輸入車販売台数(日本メーカー除く)は前年同月比9.1%増の3万6080台であった。前年実績を上回るのは3カ月連続となっている。つまり7月から9月にかけては前年実績を上回っているので、これは明らかに消費税アップ前の、いわゆる駆け込み需要と考えてよいだろう。

ブランド別では、1位のメルセデス・ベンツが13.0%増の7928台。2位はフォルクスワーゲンで17.2%増の5941台。3位のBMWだけは7.8%減の5380台となっている。一方で、2019年度上半期(4月〜9月)の輸入車販売台数は、前年同期比1.8%増の15万2240台で、上半期としては5年連続のプラスとなっている。

メルセデス・ベンツ Aクラス
メルセデス・ベンツ Aクラス

消費税アップ後

そして消費税アップ後の10月はどうなったか。10月の輸入車販売台数は前年同月比21.8%減の1万6623台となった。前年実績を下回るのは4カ月ぶりとなっている。その原因は、消費税アップに加え、東日本各地に災害をもらたした台風19号など悪天候の影響も大きかった。いわばダブルパンチを受けたことになる。

ブランド別では、1位のメルセデス・ベンツが20.1%減の3704台だった。2位はBMWだが28.5%減の2719台。3位はフォルクスワーゲンで39.5%減の2255台となっており、いずれも大幅減となっている。

消費税アップ前の駆け込み需要の反動に加え、広い範囲での台風被害、天候不順の影響が重なって、地域によっては来店客数も大幅に落ち込んでいるという。

11月の結果は、輸入車新規登録台数は2万3753台となり、前年同月(2万5194台)と比べ5.7%の減少となった。また、1月からの累計は26万9388台で前年同期(27万4571台)と比べ1.9% の微減となっている。

メルセデス・ベンツ Bクラス
メルセデス・ベンツ Bクラス

ブランド別データ

ブランド別で1位だったのはメルセデス・ベンツで、前年同月比11%増の6051台となった。この結果メルセデス・ベンツは57カ月連続でトップの座を守っている。その背景にはコンパクト・モデルの「Aクラス」、新たに投入した「Bクラス」、SUVの「GLC」といった主力モデルが販売を牽引した。

2位はフォルクスワーゲンで14.1%減の3761台。前年同月はBセグメントのコンパクト・モデル「ポロ」の新車効果、生産終了前の「ビートル」の販売キャンペーンなども行なわれたが、現時点では基幹車種であるゴルフがモデル末期で、「ポロ」の新車高が薄れたこともあって苦戦状態となっている。

3位は独BMWで18.7%減の3459台だった。BMWは主力車種の新型「3シリーズ」を投入したにも関わらず思うように販売が伸ばせておらず、Cセグメントの「1シリーズ」の投入も遅れた結果だ。

2019年4月〜9月・上半期の販売トップ20。なおトヨタ、ホンダ、日産など国産メーカーの台数は逆輸入車を意味する。またボルボはトラックの台数も含む
2019年4月〜9月・上半期の販売トップ20。なおトヨタ、ホンダ、日産など国産メーカーの台数は逆輸入車を意味する。またボルボはトラックの台数も含む

輸入車販売の現状

トップをいわば独走するメルセデス・ベンツは、2019年の主力モデルだけで「A200d」、「E200/E300(BSGエンジン・モデル)」、「G35d」、「GLE」、「EQC」、「Bクラス」、「CLA」などを次々に導入し、特に「A」、「B」、「GLE」などが販売台数を稼いだ。この導入モデル数は、他の輸入車に比べ圧倒的だ。

フォルクスワーゲン ポロ
フォルクスワーゲン ポロ

逆に、フォルクスワーゲンはニューモデルがない状態で、今後は11月にデビューした「T-クロス」、2020年に登場する「T-ロック」、そして期待の新型「ゴルフ8」待ちの状態だ。

BMWは、2019年は新型「8シリーズ」、新型「Z4」、新型「3シリーズ」を投入しているが、主力の「3シリーズ」が思ったほど新車効果を発揮しておらず、Cセグメントの「1シリーズ」は9月に発表したものの、納車は11月以降となり、思うような結果とはなっていない。

BMW 3シリーズ
BMW 3シリーズ

一方、MINIの11月は販売台数が減少し、1月〜11月でも前年よりは販売台数減となっているものの、4位につけており、BMWとMINIブランドを合算すれば輸入車としてはトップとなる。やはり日本においては、MINIブランドは強固な存在だ。

MINI
MINI

また、1位のメルセデス・ベンツ以外に、ボルボ、ジープ、プジョー、フィアット、ランドローバー、シトロエンなど7ブランドが11月単月での過去最高を記録している。ボルボは4月〜11月でも微増傾向にある。

そしてジープは11月で1000台、1月〜11月でも前年比118%と輸入車の中でもトップレベルの伸びを示している。FCAグループの中にあってもジープ・ブランドの強さは格段で、さらに専売ディーラー網を着実に整備していることが結果につながっているといえる。

強いブランド力を持つジープ
強いブランド力を持つジープ

国内の輸入車シェアは約10%に

日本における登録車販売で、海外メーカー車が占める全体の割合は9.9%と過去2番目となった。この背景は輸入車が大幅に伸びたというより、日本車メーカーの販売が総じて低迷している結果であリ、相対的に輸入車のシェアが高まったといえる。

価格帯別で見ると、輸入車の高価格帯が好調だった。1000万円以上は10.7%増の2002台となっている。消費税アップなどの影響もないといわれている、特に2000万円以上の高価格車は好調で、マクラーレンは1月〜11月で64%アップ、アストンマーティンは16.2%アップ、ベントレーが22.9%アップ、フェラーリが11.5%アップという結果を残しており、不況知らずの世界があるのだ。

ベントレー コンチネンタルGT
ベントレー コンチネンタルGT

逆に車両価格が400万円以上で1000万円未満の、いわば輸入車のど真ん中の価格ゾーンのクルマは11月は11.6%減の1万1619台と、消費税の影響を受けている。

またクリーンディーゼル車の割合は30.7%で過去最高となり、輸入車のなんと1/3がディーゼル・モデルというのが現状だ。その一方で上級モデルに設定されているPHEVモデルは不振が続いている。

なお電気自動車専門メーカーのテスラは、ブランド別販売台数として登録されていないが、推測台数では毎月ほぼ40台前後であったレベルが、9月以降は200台レベルになっており、ニューモデルの「モデル3」がテスラの台数を持ち上げていることを読み取ることができる。

苦境を迎えるドイツ・メーカー

日本における輸入車販売はドイツメーカーが主力であることは言うまでもない。しかし、ここ最近になって、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどが軒並み大幅な従業員削減案を打ち出すなど、事業の陰りが見え始めている。

メルセデス・ベンツは1000億円といわれるディーゼル排ガス問題における罰金の支払い、企業平均CO2排出量がトップレベルで多いなど、急速に電気駆動化を推進する必要がある一方で、それが販売車種の柱になるとは確信できない状況にある。そのため2022年までに1万人レベルの従業員削減計画を発表した。

メルセデス・ベンツ EQCの生産ライン
メルセデス・ベンツ EQCの生産ライン

BMWもまた同様で、電気駆動化を本気で推進するためには内燃エンジンの開発体制を大幅に見直す必要に迫られ、6000人のリストラが噂されている。

フォルクスワーゲン・グループは、巨額のディーゼル排ガス問題での罰金の支払いに加え、電気自動車に転換するために巨額の投資を続けており、それが既存の内燃エンジン車の開発体制や開発コスト削減などにつながるなど苦境は続いている。アウディはEVの大幅導入に合わせ2025年までに9500人の従業員を削減するとしている。

一方で、特にヨーロッパにおいてはCO2削減に対する圧力が高まっており、電気駆動化への投資の増大は避けられない状況にある。そうした状況下で、労働組合の強いドイツで従業員削減をせざるを得ないという事実は、企業としての苦しさ、展望の見えない不安の現れといえよう。

従業員のリストラと合わせ、従来からのラインアップ・モデルの開発の遅れ、開発コストの削減などの影響を逃れることはできず、これが日本はもちろん、世界での販売にじわじわと悪影響を及ぼすことは避けられないと見られている。

COTY
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