この記事は2019年2月に有料配信したものを無料公開したものです。
2019年2月上旬に各自動車メーカーの第3四半期の決算が相次いで発表された。この第3四半期の決算内容は3月末の通期決算を予見できる重要なデータだ。日本の自動車メーカーは長らく円安為替、中国市場、アメリカ市場の好況などに支えられ、好調に推移してきたが、2018年後半から急激に変化する兆候が見え始めた。2019年はどのような展開となるのか見通しが難しい局面を迎えつつある。
不安材料の多い中国、アメリカ市場
日本の自動車メーカーにとっての不安材料は、米中の貿易を巡る戦いと、アメリカと日本との貿易協定を巡る摩擦の増大だ。日米関係では2018年秋以来、日本の円安誘導政策がアメリカの圧力により、緩やかに円高に振れつつあり、今後もアメリカ政府の動向により大きな影響を受ける懸念がある。
もちろんその背景にはトランプ大統領が日米の貿易不均衡を是正させるという目論見がある。結果的に2019年3月頃から日米物品貿易協定(TAG)に関する協議が開始され、トランプ政権は、自国の利益を追求するため、日本に対して農産品、金融サービスなどの早期の市場開放を強硬に迫ってくると予想されている。と同時に、日本からアメリカへの鉄鋼や自動車輸出を抑え込もうという方針だ。
日米物品貿易協定(TAG)の行方によっては、アメリカ側は日本製品に対する関税、もしくは自動車輸出に対する台数制限規制などが浮上することが懸念されている。これらの政策が決定すれば、日本の自動車メーカーは大きな打撃を受けることになる。
日米関係と同等以上に大きな問題は、アメリカと中国の貿易戦争で、これはすでに互いに輸入製品に関税をかけ合う形で進行している。結果的に、中国では2018年後半に自動車販売にブレーキが掛かり、2018年は世界最大の自動車市場である中国でついに販売台数は前年比マイナスとなった。これは、中国経済の停滞というより経済情勢に対する不安から自動車の買い控えが起きているのが原因とされている。
一方のアメリカの自動車市場は、緩すぎた自動車ローンの引き締めなどにより2017年が頂点で2018年には減少に転じると予想されていた。またフォードはセダンの開発停止とセダン市場からの撤退の発表もマイナスのインパクトを与えるに十分だった。実際に2018年8月〜10月は販売が落ち込んでいる。
しかし各自動車メーカーの販売奨励金の増加、企業向けフリート割引販売の増大、さらにガソリン価格の低下などの要因により1月〜12月の販売台数累計は2017年比で0.3%微増となっている。ただし、市場の実情は小型ピックアップトラックが8%増大したが、セダンは13%も低下しているのだ。
販売台数では小型ピックアップトラックが1179万台であるのに対し、セダン系は549万台で、他国の市場では考えられないような市場動向になっている。セダン系のクルマは2017年と比べて83万台も減少しているのだ。
そのため、アメリカの自動車メーカーも日本の自動車メーカーもこうした市場動向の激変に追従できるかどうかによって企業の行く末がかかっている。特に日本の自動車メーカーは、中国、アメリカという2大巨大市場の動きに適合できるかどうかで、業績が大きく左右されることになる。
では、各社の具体的な状況を見てみよう。
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