【FOMM】インホイールモーターを採用した4人乗り超小型EVモビリティ「FOMM コンセプト One」を発表

雑誌に載らない話vol85

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両側スライドドア、4名乗車のパッケージングを実現した「FOMM コンセプトOne」

2014年2月19日、EVのベンチャー企業「FOMM」は、大同工業、日本特殊陶業とともに共同開発してきた超小型電気自動車「FOMM コンセプトOne」を発表し、3月26日から開幕するバンコクモーターショーに出展する。なお「FOMM コンセプトOne」はタイで生産し、タイ、インドネシアなどで販売する計画だ。

この電気モーター駆動の超小型モビリティを企画・製作したのはEVベンチャー企業のFOMMで、FOMMとは「First One Mile Mobilty」、つまり近距離移動を意味し、超小型EVによるモビリティを追求することを理念としている。

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FOMMの代表取締役・鶴巻日出夫氏
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デザインを担当した江本聞夫氏(MINIMO)

 

 

代表取締役の鶴巻日出夫氏は、スズキ出身のエンジニアで、 アラコでは1人乗り電気自動車「コムス」、トヨタ車体の「コムス」の企画・開発に従事。 その後はSIM-DRIVEで超小型モビリティの研究を行なった後、独立して2013年2月にFOMMを設立している。

「FOMM コンセプトOne(フォム・コンセプト・ワン)」は「カプセルEV」をコンセプトに開発した世界最小クラスの4人乗り電気自動車で、各国の超小型モビリティの規格に準じている(ただし日本の規格では国交省のガイドラインに合わせ2人乗りに変更するという)。タイにおいて生産する段階ではヨーロッパのL7e規格にに合致させる予定だという。

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今回発表された「FOMM コンセプトOne」は、全長2495mm、全幅1295mm、全高1550mm、ホイールベース1760mm、車両重量460kgで4人乗りとし、両サイドにスライドドアを採用し、乗降時に余分なスペースを取らないよう設計されている。

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ハンドルはオートバイタイプ。加速、ブレーキはハンドル部で操作。中央の円筒が冷風アウトレット

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駆動方式はフロントホイールにインホイールモーターを配置したダイレクト駆動方式。FF(フロントモーター・フロント駆動)レイアウトのため回生エネルギーも回収しやすく、ガソリン換算燃費は96.7km/Lだという。もちろんインホイールモーターを採用することで、より多くの通常のエンジンコンパートメントのスペースがかなり自由になり、ステアリングや電装系部品を配置し、車両を小型化することができたという。なおインホイールモーターは1個当たり最大出力5kW/280Nm。

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バッテリーは現在は1パッケージ×2kWhのリチウムイオン電池を3パッケージ搭載。3パッケージにしているのはカセット方式のためで、1パッケージを使用し、2番目がスタンバイ電源とし、使用して放電したパッケージは家庭に持ち帰って充電できるようにしているのだ。3パッケージを搭載することで航続距離は約100km(市街地走行モード)。バッテリーは1パッケージずつ消費していくため、交換の手間が省け、家庭でも非常用電源として使用できる。もちろん一般的な電気自動車同様、家庭用コンセントからも充電することができる。なおリチウムイオン電池は現在は天津捷威(Tianjin EV Energies)製だという。

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「FOMM コンセプトOne」は、通常のステアリングホイールではなくバーハンドルを採用しているのがユニークだ。足は使用せず加速もブレーキも全てバイクのように手を使って操作する。バイクのハンドル式の操作系を採用しているためペダルがなく、ドライバー席を可能な限り前方へ移動させることができている。

「FOMM コンセプトOne」のユニークな特徴の一つとして、超小型モビリティでは異例のクーラーがオプション設定されていることも注目したい。タイ、インドネシアで販売することを考えると必要な設定といえる。蓄熱式のクーラーも設置し、充電電力で蓄熱魔法瓶内の冷媒を冷却し、走行時にその冷媒からの冷気をスポット的にドライバーへと当てる仕組みとしている。ダッシュボード上にある円筒形のものが送風アウトレットだ。

さらに東南アジアで多く発生する水害に巻き込まれても故障しにくい耐水機能を備えており、万が一水害で流されても、ホイールの回転によりスポーク部が発生する水流により水面を移動することができ、数時間の耐水性能を備えているという。これはフロアパン全体が樹脂製で、キャビンへの浸水を抑え浮力を確保するというアイデアによるもの。

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「FOMM コンセプトOne」のデザインはデザイン会社「ミニモ」の江本聞夫氏が担当している。電動超小型モビリティをデザインするにあたり、「カプセル」というデザインコンセプトを採用している。ミニマムな形状のカプセルに最大限の機能を詰め込み、形状としての強さ、凝縮感、安全感を狙っている。さらに耐水性能を高めるため、アウターボディの下が半分はボート形状の樹脂製としている。キャビン部の骨格はアルミパイプ製で、A~Cピラー部はある、アルミパイプを露出させることで機能美を訴求。なお今回はプロトタイプのため、アウターパネルはFRP製となっているが、量産段階では金型を使用したRIM成形(リアクションインジェクションモールディング)を採用するつもりだという。

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エクステリアは移動ツールとしての動感、軽快感を表現し、同時に4輪のダイナミズムと2輪バイクのエレメンタリズムを融合させている。またインテリア・デザインはスペースシップ(宇宙船)とし、凝縮感とスペース効率を両立した。

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この「FOMM コンセプトOne」は、今年9月頃にはタイでの委託生産に着手し、10月頃にはタイでの販売を開始する計画としている。当面は東南アジアでの販売を優先させ、その後は中国や日本での販売も考えるという。

 

FOMM公式サイト

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